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1月12日・最終章~そして詰め将棋へ~ - (2010/08/13 (金) 22:12:42) のソース

 このシリーズもついに最終章を語るときが来た。 
 ついに、ついに―― 

 ――気がついたら、いつも、いつも彼女のこと思い。そして一緒に歩いていた。 
 ――いつ頃かな、この微妙な気持ちの変化に気がつき始めたのは…… 

 こなたとかがみ、今、互いに同じ事を思っている。感じている。 
 明かりが消え、真っ暗になった部屋。窓から入る雪明りだけが淡く世界の全てを映し出していた。 
 かがみに包まれるこなた、こなたを包み込むかがみ。蒼が下に、菫が上に。 
 触れ合うのは布越しの互いの体温。伝わってくるのはいつからか同期し始めた互いの心音。 

 ――ドクン、ドクン。 

 一回芯が鳴る度に、それに比例して、気持ちが大きくなる。そう、この 

 ――好き、なんだ。 

 という気持ち。数日間2人をヤキモキさせた気持ち。 
 親友として?悩んだこともあった。そう思い込もうとした。でも、いつもどこかで引っ掛っていた、違和感。 
 その正体が、今、具体的な形を持って、2人に入り込む。この気持ちは親友に対するそれと、もう一つ、恋である、と。 
 視線が交錯する。暗い中、見えるのは互いに上気した顔。聞こえるのは微かな息づかい。 
 何も考える必要なんて無い。ここまで来たらすることは一つ。 
 ふわ、と香る、先程お風呂で使った石鹸の香りが、心地良かった。 


 さてはて、ここまで来ておいてなんだが、一体何故、こういう状況になっているのか。それには少々時間を遡って描写せねばなるまい。 
 まずは、後編の後、お風呂のその後の出来事を書こうと思う。 
 お風呂でのぼせたこなたとかがみが復活した後、夕食と相成った。7人で泊まりこむ、しかも気心知れた仲、ということで、 
「鍋パーティなどいかがでしょう?」 
 と言ったのはみゆき。外は寒いし、手を込んだものを作るのは面倒くさい。故に反対するものは誰もおらず、ゆいが一人で買い出しに行っている間、食事用スペース作りから始まったのだが、 
「家族が少ないもので、そんなに大きなテーブルは……すみません」 
 頭を垂れるみなみ。昼食はそれぞれが弁当を持ち寄ったので問題はなかった。 
「み、みなみちゃんは悪くないよ。そうだ、私がみなみちゃんの家族になれば、人数が増えて、大きなテーブルも買えるね」 
 と言って必死にみなみを慰めているゆたか。その姿を尻目につかさが、 
「いくつかテーブルを繋げればいいんじゃないかな?」 
 と、珍しく妙案を提出した。 
「それもそうね。3つくらい繋げれば7人くらいは入るんじゃない」 
 かがみも首肯。 
「では、そうしましょうか。泉さんとかがみさんはあちらのテーブルを、私とつかささんでこちらのテーブルを持ってきますね」 
 みゆきの言葉で作業が始まった。
「ちょ、こなた、ちゃんと持ってよ!」 
 さて、身長差10センチ以上の人間2人がテーブルの端と端を持ったらどうなるか? 
「これでも限界だってば……ん~」 
 答えは、傾く。作業は遅々として進まない。 
「はぁ……しょうがないわね。みゆきかつかさに応援を頼みましょうか」 
 と言って、一旦は持ち上げたテーブルを下ろすかがみ。こなたもテーブルを持つ手を離すが、一緒にアホ毛まで萎れていく。 
「ゴメンね、かがみ。私の背が低いせいで……」 
 こなたらしくない殊勝な態度にかがみは戸惑った。お風呂でのことも影響しているのだろうか、何だか、互いに距離が近づいた気がする。 
「そんな……あんたのせいじゃないわよ。まあ、誰にでも出来る事と出来ない事はあるし、こなたはこなたなりに出来る事をやればいいでしょ。違う?」 
 慌てて手を振り、こなたを慰めるかがみ。その言葉に萎れたアホ毛がシャキンと立ち上がる。 
「うん、ありがとっ、かがみん♪」 
 そう、こなたに似合うのは笑顔。かがみもつられて笑みを作る。と、 
「仲が良さそうで何よりです」 
「お姉ちゃんたちは向こう行ってて、後は私たちがやるから」 
 みゆきとつかさがやって来た。本当は少し前から見てはいたのだが、みゆきがつかさを制止いていたのだ。 
「ねえ、ゆきちゃん。なんで行ったらダメだったの?」 
 つかさの疑問に、みゆきは形のいい唇に人差し指を当てると、 
「禁則事項です♪」 
とだけ答えた。 

 さて、鍋は皆で突付くもの。しかし、席位置によっては肉が取れずに野菜ばかりと言った悲惨な目に会う。 
 故に、 
「はい、くじびきです」 
 絶対運命決定力くじが発動された。異論?答えは聞いてない。結果、こなたとかがみはテーブルの角にそれぞれ、斜め45度の角度に配置された。 
 詳しくは省くが、人間、これが一番話しがしやすい角度位置になる。向かい合うと圧迫感が、隣だと威圧感があるためだ。この法則は全てに当てはまると言うわけではないが、詳しく知りたい人には心理学を学ぶ事を強くお勧めしたい。 
「でね、アレが臭くってさ~」 
「だね~、臭さにも色々あるけど、アレは最悪」 
  
 食事中の話題じゃない。まあ、それはいい。みゆきにとって重要なのは鍋の位置。 
 さり気なく、こなたの身長では届かない、でもかがみの身長なら届く位置に鍋を設置。ある意味鍋奉行。 
「はい、こなた。お肉」 
「お~、かがみ、サンキュー」 
 ニヤリ。歪んだ口元を隠す為、みゆきは眼鏡の位置を直す振りをして表情を隠した。 
「はい、ゆたか……熱いから、気をつけて」 
「ありがとうみなみちゃん。次は、私がみなみちゃんに白菜、取ってあげるね」 
 こちらの2人には届く位置なのだが、何故? 
「こら~!お姉さんにも肉をおくれよぉ!!」 
「あ、ごめんなさい。お肉は無くなっちゃいました」 
 ゆいとつかさの会話。 
 大いに盛り上がった。鍋パーティだった。

 さて、ここからが本題。忘れそうになるが、一応‘勉強合宿’なのだ。就寝前に少しでも進めておかなければならない。 
「つまり、216事件がノストラダムスの陰謀であり、454事件で重要なのは中央のお2人を祝福しているキューピッドたち。ある種、この2人もカップルと言えるでしょう。いえ、カップルなんです」 
「えと……成る程ぉ、さっすがゆきちゃん」 
「かがみん、ここ教えておくれ」 
「ダ~メ。少しは自分で考えなさい」 
 4人が一つの部屋に集まっての勉強。みゆきがいれば心強いと最後の追い上げに入ったのだ。 
 一時間、二時間と経過していく中、ふと窓の外を見れば、 
「わ~、雪だぁ!」 
 つかさが声を上げる。そう、微かにではあるが雪が舞い始めていた。 
「蛍雪の功、と言いますか。幻想的です」 
 このタイミングか。みゆきは後ろ手に隠した携帯電話のボタンを押す。ポチっとな。 
 その瞬間、明かりが消えた。 

「嘘、停電!?雪のせいかしら?」 
 かがみの声がする。立ち上がる気配。が、みゆきはそれを押しとどめ、 
「待ってください。単にブレーカーが落ちただけかもしれません。私とつかささんで見てきますから、泉さんとかがみさんはここに残ってください」 
 そう言って、みゆきはつかさの手を引いて部屋の外へ出た。後に残されたのはこなたとかがみの2人。 

「何だか、寒くなってきたね」 
 ボソッとこなたが呟く。 
 みゆき達が出て行って10分経過。未だ電気は復旧しない。 
 同時に暖房も落ちたのだろう。雪が降ってる気温だ、どんどん寒くなる。 
「あ、毛布取るわね。ちょっと待ってて」 
 立ち上がるかがみ。携帯電話を開き、それを明かりとしてベッドへ向かおうとする。その姿を目で追ったこなたが、あることに気がついた。 
「あれ?それ私じゃん」 
 かがみの携帯のディスプレイに表示された待ち受け画面。それはこなたの寝顔だった。 

 ギクゥッとしながら、 
「あ、いや、なんかさっきみゆきから送られてきてさ、この画像。せ、折角だし、待ち受けにしたのよ。深い意味は無いわ、うん」 
 必死に弁解を始めるかがみ。しかし、こなたは呆けたような表情で自分も携帯を開くと、 
「え、私……?」 
 こなたの待ち受けはかがみの寝顔。どちらも先程みゆきが、あやのに電話をかける前に撮って送ったものだ。 
 どちらからともなく顔を見合わせる2人。こなたが買った二つで一つのストラップが揺れる。 
 何故だろう、さっきまで寒かったのに、今は熱い。 
「も、毛布取るわね!」 
 いたたまれないのか、踵を返そうとしたかがみ、 
「待って」 
 追いすがるこなた。掴んだ掌、かがみがバランスを崩した。 
「きゃあっ!」 
「うわっ!」 
 かがみがこなたの上に倒れこんでくる。 

 こうして、冒頭の状況の出来上がりだ。

 さて、つかさをゆたか達の部屋へと送り、その様子をそっと見守っていたみゆき。 
 二人の唇が触れる寸前、そっと踵を返す。 
 暗い廊下に、微かに動く人の気配。 
 パチン、と電気が点く。 
「これで、よかったのかな?」 
「はい、大変素晴らしいタイミングでした」 
 明かりを消したのは、ゆい。みゆきの合図で、ブレーカーを落とした。これが本日最後のサプライズ。チェックへ至る一手。 
 みゆきはポケットからチェスの駒を取り出すと指先でくるくると弄んだ。 
「ン、何それ?」 
「チェスの駒です。黒のキング。一局どうです、成実さん?」 
「い、いやぁ、お姉さんチェスはちょっと……」 
「そうですか?今なら誰にでも勝てそうな気がしますのに。チェックメイト、この目に焼き付けましたからね」 
 その言葉に怪訝そうな顔をしたゆいが何かを言う前に、みゆきは一礼してその場を去っていった。 

 こうして、勉強合宿は終わり。次の日13日、帰りの車でのこなたとかがみはそれはとても仲睦まじく見えたそうな。 


 で、14日。自室で勉強していたみゆきの携帯に、着信。発信者、柊かがみ。 
 何だろう、と思い電話に出る。もしもし、と親友の声が通話口から漏れ出す。 
「あ、あのさ、みゆきに、相談したいことがあるんだけど」 
「はい、何でしょうか?」 
「じ、実はね……私、こなたのことが好き、みたいなの。親友としてじゃなくて、一人の女の子として」 
 ああ、その話しか。成る程、付き合い始めた事を律儀にも話してくれようと言うのか。かがみらしい。と、みゆきは頷き。 
「そうなんですか、おめでとうございます」 
「は?な、何でおめでとうなのよ!?変とか思わないの?」 
「いえ、以前にもお話した通り同性婚を認めてる国もありますから。特になんとも思いませんよ。お付き合いを始めたのですね?」 
 すると、かがみは驚いたように声を張った。 
「ち、違うの、まだ、告白とか出来てなくて……勢いで、キス、しちゃったけど、こなたは、どう思ってるか分からないし。私も、どうしたら……」 

 ……はい?とみゆきは首を傾げる。あれ、この前の合宿でチェックメイトはかけたはず? 
 その沈黙をどうとったか、かがみは聞く方も無理してると分かる声で、 
「あ~、ゴメン。こんなこと相談されても困るわよね。今のは忘れて」 
 電話が切れた。と、思ったらまた着信。発信者、泉こなた。 

 猛烈に嫌な予感がした。出るのを躊躇った、けど出る。 
「もしもし、みゆきさん?相談したいことがあるんだけど……私、かがみのことが好き、みたいなんだ。親友としてじゃなくて、一人の女の子として」 

 ああ、デ・ジャヴ。強烈な既視感。 
「でも、こんなことかがみに言えないし、どうしたらいいかって……あ~、ゴメン。こんなこと相談されても困るよね。今のは忘れて」 
  
 切れた。ツーツー……無機質な電子音を聞くみゆきの視界に、ふと、やりかけの詰め将棋問題集が入った。 
「今度は、これ、ですか……やれやれ、以心伝心、なのに肝心な所は伝わらない。困ったお二人です」 
 苦笑しながら、問題集を取り上げるみゆき。毒を喰らわば皿まで、乗りかかった船だ、とことん面倒を見ようじゃないか。 
「まったく……今度は私一人じゃ足りませんね」 
 そういったみゆきの苦笑はどこまでも深く、どこまでも慈愛に満ちていた。


 突然ですが「みっゆーき↑スペクタクル」 

「私が何とかしなければ、多分お2人は親友で終わってしまうでしょう。困ったものです。 
 彼女達は、お2人では気付いていませんが、両想いです。 
 これは、ちょっとした奇跡ですよ」  

 どこから 説明しましょうか? 
 変わりゆく関係の中で 

 お2人何も出来ないならば 
 私がしてあげましょうと 
 知識と眼鏡を持って シチュエーション作り 

 笑顔は癖のような感じですよ 
 Miyuki Spectacle! 
 出来る限りのお節介を焼いてもいいでしょう? 

 時に策を弄する私は過激でしょうか? 
 Miyuki Spectacle! 
 絶対にくっついてもらいたいのです 

 お2人見てると……心配なのです 
 困りものです

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- なんか、みゆきさん主役じゃね?  -- 名無しさん  (2010-08-13 22:12:42)
- みゆきさん…策士だな、しかしこの「みっゆーき↑スペクタクル」吹いた(爆)  -- 八トタ  (2010-03-30 21:11:05)
- みゆきさんwwwwwwww &br()みゆきさんは、みくる役より &br()古泉役があってるな  -- 名無しさん  (2010-03-01 17:34:34)
- みっゆーき↑スペクタクルCDにしてくんねーかなwGJ  -- 名無しさん  (2009-09-08 11:42:56)
- ≠アのシリーズ面白くていいよねw作者さんはうまいコメディを書きなさる  -- 名無しさん  (2009-02-01 11:41:20)
- みwikiGJ  -- 名無しさん  (2009-02-01 08:41:01)
-  壮大に噴いたwww「みっゆーき↑スペクタクル」  ニブイこなかがもいいもんだ。しかもさりげにつかゆきをアピールしてる策士みゆきさん萌えw  -- 名無しさん  (2008-12-11 23:38:23)
- こなかが以上に怪しいみなみとゆたかをスルーしちゃうみゆきさんに萌え &br()  -- 名無しさん  (2008-06-29 13:16:15)
- みゆきさん、なんと計算高いwwwとりあえず、こなかが初キスおめでとうwグッジョブなSSですた。  -- 名無しさん  (2008-06-08 01:46:54)
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