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「ふぅっ。」
やっと今週が終わり。一週間長かったなぁ。
疲れきってて頭がぼーっとしてくる。宙を見るようにぽかんとしていた。

「..... ばぁっ☆」

気がついたら目の前に寄り目のかっしーの顔。ドアップだよ。
私は吹き出した。

「かっしー、急に何よ?」
「え?別に。元気無いなぁと思ったから。」

そう言ってニッコリ。かっしーはいつでもふわふわだねぇ。気楽そう。
さりげなく私たちを励まし続ける。意図してやってるのかさえわからないくらいに。

本心は分からないけど、きっと「樫野有香」はパーフェクトなスター。
だから辛さは表に出てこないし、みんなの前では笑顔を絶やさない。
「かしゆか」が半分お芝居なのはよく分かってる。
でもつかみどころのない気楽そうに映るそのスタイルもお芝居?
なんか心配になった。


「ねぇ、かっしー。」
「ん?」
「なんか悩みとかないの?」

そう言ったらかっしーはクスクスと笑った。

「ないよ。急にどーしたんよ?そんな深刻な顔してのっちらしくもない。」

あたしそんな顔してた?でも本気で心配なんだよ。
「や、最近なんか頼りっぱなしだなぁと思ってさ。」
ほんとは最近どころかもう8年近くなんだけどね。

かっしーは少しだけ表情を柔らかくした。さっきまでの作り笑いっぽい笑顔じゃない。
もっと人間らしいというか、素に戻った、優しくて、でも寂しそうで壊れそうな笑顔。

「いいんだよ。もっと頼ってくれてもいい。あたしは頼ってもらうしか脳がないから。
 人に頼ってもいいほど自分がやらにゃいけない事こなしきれてないんよ。」

一瞬真顔になったかっしーの表情も、言葉も、まだ離れない。

きっと私が手を伸ばしてももう届かない。それほどに遠い存在に感じた。

いつも笑ってて、いつも優しくて、いつも甘えさせてくれる。
すごく近くで守ってくれているようで、心は遠くにいるみたいな感覚。
私たちに頼らないで何でも一人でこなして、なのに私たちには頼ってもいいって言うの?

頭の中では、かっしーの気持ちが私の言葉なんかで揺らぐ事はないって思ってる。
それでも口をついて言葉が溢れてくる。

「かっしーはいつでも全力でやってるじゃん。やろうとしてるじゃん。
 いつも完璧で、余裕な顔して、でも裏では必死でさぁ、なんでそーなるんよ?
 私とあ~ちゃんにぐらい本音見せろよ!頼れよ!信じて無いん!?」

いきなりキレたみたいな口調になっちゃった私にかっしーはぽかんとしていた。
ただわずかに表情に変化が現れた。
うまく言えないけど、喜びと苦しみを一度に知ったような表情。
長い沈黙の後にかっしーはぽつりと言葉をつなぎ始めた。


「心配させてごめん..... でもね、やっぱりのっちとあ~ちゃんにしてあげれる事が無いんよ。
 だったらせめて迷惑はかけたくない。それだけ。本当に二人の事は信じてるよ?.....」

そこまで言ったところでかっしーは言葉に詰まった。目から一筋の涙があふれた。

何年ぶりだろ。「かしゆか」じゃなくて「樫野有香」が泣いてるの見たの。

「かしゆか」はしょっちゅうではないにしろライブで時々涙を見せる。
でも、「樫野有香」は違う。ステージ上のパーフェクトなスターなんかじゃない。
自分より友達優先で、ちょっとの事でもすごく心配してくれるお姉ちゃんみたいだ。
穏やかでこうして気持ちを吐き出す事なんて滅多にしない優しすぎる人。
やっとちょっとだけ本音見せてくれたね?

「かっしー、大丈夫だよ。いつも私たちはかっしーに助けられてる。
 たまにこんな感じで話してくれたらいいんよ。」

私はそっとかっしーのおでこを撫でて、優しく抱きしめた。かっしーは笑う。
だけどその笑顔はさっきまでの笑顔じゃない。子供みたいで、普段とは違う。
優しさとか穏やかさを取っ払った無邪気さがそこにはあった。

なんだ、こっちの方がかわいーじゃん。

かっしーの笑顔はその後も絶えることなくそこにあった。
あぁ、やっと手が届いたね。私の完璧なスターさん。







最終更新:2008年10月10日 17:50