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A-side



今夜はゆかちゃんがいない。また合コンに行ったみたい。ホント、今時の女子大生だよねぇ、おしゃれしてゆかちゃん得意の小悪魔でどれだけ男を落としてくるんだろ。


前に、ゆかちゃんの財布からコンドームが出てきた事があった。前に、とは言ってもそれは高3の時だけど。あの時は驚いた。だけど、それが普通な事なんだよね、保健の先生がいつ何が起こるか分からないから女子も常にコンドームを持っていろって言っていた。
だけどそれって、彼氏がいない人もそうなの?男友達もいるけど、絶対にそんなんならないよ?出会って一目惚れして即エッチ、なんてどこのチャラ男ですか。だとすれば一つ思い当たるとして、それは痴漢や強姦といった類いの犯罪な訳であって。女子であるからと言って犯罪に巻き込まれて一生トラウマを持って過ごすレベルの出来事が起こる可能性をちらつかせた先生は、一体何を考えていたんだろうと今さら不満。教育者としてはそれが正しいのかな。
それに、言って犯罪者がゴムなんか着けねぇよ、ってのっちもゆかちゃんも笑っていたけど、本当にその通りだと思う。だからあ〜ちゃんはそれを持ち歩いたりなんてしない。
だけどゆかちゃんは常に持ち歩いてるんだとしたら、それはあ〜ちゃん達の知らない彼氏か。考えたくもないけど体だけの関係みたいな男性がいるのか。ゆかちゃんに限ってそれはないよ、自分をちゃんと大切に出来る子だもん。考え過ぎて落ち込んできたので、あ〜ちゃんはお風呂に入る事にした。のっちが入った後は、絶対に床がびしょ濡れなんだ。


だけど、やっぱりゆかちゃんはたくさん経験があるんだろうとは安易に想像が付いた。前にのっちがラブホの割引券を貰ったとか言って興奮してたし。結局使わないまま期限は切れてしまったんだろうけど。
大人なんだな、ゆかちゃんは。だけど自分を安売りするくらいなら大人になんてなりたくない。のっちは早く…大人になりたいのかな?エッチって、そんなに良い物なのかな?うーん……、あ〜ちゃんには分からんわ。



「もう…、」


そして何度言ってものっちは使ったバスタオルを片付けない。洗濯機に放り込むくらい、簡単でしょうが全く…。


だけど、なんだかんだで愚痴をこぼしながらものっちの世話を焼く自分は嫌いじゃない。




N-side



お風呂から出てきたピンクパジャマのあ〜ちゃんに「バスタオル使ったら洗濯機入れてって何回言ったら分かるん?」てちょっと怒られて、これで何回目だろって真面目に思い出してみたら本当にかなりの回数で引いた。


「ごめんね」
「ん?」
「何回言われてもダメダメで」
「今度から気を付けんさいよ」


あ〜ちゃんは広い室内でのっちのすぐ隣に腰を下ろした。まるで端からそこにおさまる事が当たり前みたいに。床に座って、ソファに背中をもたれて。
あれ?これが噂のツンデレ?って何を今さら。あ〜ちゃんがツンデレなのは昔から知ってるっつーの。だけど、なんだこれ。


マジでなんだこれ。
心臓がぐわんぐわん鳴っている。


「あ、録画しといたドラマ、見る?」
「うん」


今さら肩が触れたくらいで。自分ってホント単純だよなぁ。本当は毎日抱き合いたいくせに、いざ甘えられると手も足も出ない。だって今も降参白旗で泣きだしたいくらいだし。
あ〜ちゃんの気持ち、のっちの気持ち、確かにあの時は何も白黒つかなかった。先延ばし先延ばしってかれこれ二年。早く、真っ直ぐ君を見れる様になりたいのに。
リモコンを操作してあ〜ちゃんの好きなドラマを見ても、なんだか空気が重い。考えすぎかな。
けどあ〜ちゃんの次の一言で、やっぱり考えすぎじゃなかったと気付く。


「二年前の今日、覚えてる?」
「…うん」


やっぱり変だと思ったら、その話をするのか。覚えてるよ、忘れる訳がない。のっち達、二年前の今日、恋人辞めたんだ。
恋人なんて言っても付き合ってたったの1ヶ月の短過ぎる期間、確かにのっちとあ〜ちゃんは付き合っていた。


「……」
「………」


恐る恐る、のっちはあ〜ちゃんの肩を抱き締めた。ダメだ、手が震える。


「は…ぁ、」


溜め息を吐いて、あ〜ちゃんはのっちの肩に頭を乗っけてきた。くそう、可愛いじゃないか。
のっちは天井を見上げた。恋人であった事、今はもう過去でしかないのに。あ〜ちゃんは段々可愛くなるし、のっちは情けなくなるし。変わりたいけど、変わりたくない。恋人同士に戻りたいのかは分からない。今は戻りたくない、のかもしれない。


「のっち…」


何度も聞いたその優しい声。やっぱり胸を締め付けるから、のっちは髪を撫でてゆっくり顔を近付けた。唇が触れるか触れないかって距離で、あ〜ちゃんは顔を背けた。とっさにのっちは顔を離す。やばい、違ったか。


「ご…ごめん」
「無理せんで良いよ」
「え、」


その時、玄関の扉が開く音がして「ただいまー」とあの声が響いた。慌ててのっち達は体を離した。何やってんだか。


「あれ?ただいま」
「「お、おかえり〜」」


きっとあ〜ちゃんものっちも顔が赤いだろう。ニヤリとあの悪い顔で笑ったゆかちゃんの顔が、その夜寝るまで頭から離れなかった。



◇5:終◇






最終更新:2009年05月25日 20:46