あなたに抱きしめられて毎日眠ることができたなら、きっと幸せだろうね。
強い視線が交差するベッドの上で、明日が来なければいいのにと必死で願った。
あなたの温もりに包まれていられるのなら他には何も望みはしないの。
あなたが愛おしくて、流れる涙を隠すことも忘れた私。
あなたが誰を想っていても、あなたの両腕が私を包んでいるこの現実がとてもとても幸せだった。
「ごめん」
静寂を取り戻した部屋にあなたの声が冷たく響く。
あなたに謝られたくなかった。
その言葉が意味することを知りたくなかったから…。
「謝らないで、あ〜ちゃんから誘ったんじゃけ」
「でも、あ〜ちゃんを傷つけた」
「傷ついてなんておらんよ。のっちに抱かれて幸せやったけ」
「ごめん…」
なんで謝るの?
悪いのは私でしょ?
あなたは悪くなんてないのに…。
どこまで優しいんよ。
「のっちは気にせんでええんよ。気にしたらいけんのよ!」
「あ〜ちゃん…」
「わかっとるから、のっちの気持ちちゃんとわかっとる」
「ごめん」
「だ〜か〜ら〜、謝らんでよ〜」
消えてしまいたい。
誰よりも繊細なあなたの心を私は傷つけた。
あなたの気持ちを知りながら近づいたのは私。
「のっち寝よ?ほらもうこんな時間じゃ」
「でも…」
「明日がきたらさ、ちゃんと元の2人に戻れるから」
「それって…何も無かった事にするってこと?」
「ううん。何も無かったことにはできんし、したくない。ただあ〜ちゃんがのっちの事諦めるだけじゃ」
「…」
「あ〜ちゃんね、のっちに抱かれてホンマ幸せやったんよ。抱かれてる間にちゃんとのっちの気持ちも感じる事ができたから…」
本当は違う。
あなたが私を抱いている時に、私に誰かを重ねていたよね。
あなたは正直だから、私の事を見る目がとても辛そうなのを気付かんわけないでしょ。
そんなん見たらさ、私じゃダメなんだってわかっちゃったんよ。
「のっちはどうしたらいい?のっちはあ〜ちゃんに何をしてあげられる?何をしたらいい?」
「のっちはな〜んもせんでええんよ」
「嫌だ!のっちだけ何もせんなんでできん。のっちはあ〜ちゃんに何かしてあげたい!!」
「…じゃぁ、1つだけワガママ言っていい?」
「ワガママ?うん、何?」
「明日、あ〜ちゃんがこの部屋を出るまでさ…あ〜ちゃんだけを想ってくれん?」
「あ〜ちゃんがいなくなるまで?」
「うん。その時まであ〜ちゃんののっちでいて欲しいんよ」
「…」
「ダメ?」
「ううん。…わかった。あ〜ちゃんとバイバイするまで、のっちは…あ〜ちゃんののっちになる」
「ふふ…ありがと」
あぁ、明日が来なければいいのに。
わたしのあなた。
この言葉が甘い毒の様に静かに心を暗くする。
私のズルイ心が、のっちの側に居続けたいって言ってる。
こんなズルイ私の本音をあなたに言えるはずもなくて、あなたに聞こえないように小さくため息を一つ吐いた。
恋愛が…こんなに苦しいなんて知りたくなかったな。
「あ〜ちゃん?のっちね、あ〜ちゃんとこうしていられて幸せだったよ」
耳元で優しく呟くあなたの暗闇に浮かぶ眼差しはとても優しい。
私を抱きしめてくれるその両腕に、力が込められたのを背中で感じた。
「のっち…?」
「のっちも後悔しとらん。あ〜ちゃんを抱いたこと後悔はしとらんよ」
「そんなん…、気を使わんでええんよ?」
「気を使ってるわけじゃない。これだけは信じて?後悔はしてないから」
なんでこのタイミングでそんなん言うんよ。
最初で最後なんよ?
あなたとこうやって過ごす事はできんって、諦めるってあ〜ちゃん心に誓ったんよ?
そんな事言われたら…嬉しくて、でも哀しくて泣きたくないのに泣けてくるんじゃけ。
「のっちのばか…」
「泣き虫あ〜ちゃん」
「優しくせんでよ」
「優しくするよ?だって、今日だけはあ〜ちゃんののっちじゃろ?」
あぁ、明日が来なければいいのに。
あなたの優しさに包まれてあなたの体温を感じて眠れるこの瞬間が、永遠に私の物になればと願ってしまう。
数時間後には訪れるあなたとの別れをちゃんと笑顔で迎えなきゃいけないのにね。
だからただ、今はあなたを想い続けるの。
この行動が過ちだと誰かに言われても、私にはこの方法しかなかったんだから。
この恋が、この気持ちが、私にとって無駄ではなかったと泣かないために…。
「おやすみ、のっち」
「おやすみ、あ〜ちゃん」
あぁ、明日が来る。
必死に願っても叶うことのないあなたへの想いを、朝日が奪い去ってくれればいいのに。
最終更新:2009年05月30日 22:43