Side N
あたしは、高校を卒業してからこの図書館でバイトしている。
大学に通っていた3つ年上の従兄弟の紹介で、働かせてもらった。
結構仲も良かったから、遊んだりもしたし。
色々話もした。
バイトを始めてから、あの人とゆかちゃんが一緒にいるのを見つけて、まだ名前は知らなかったけど、そこにあ〜ちゃんもいた。
可愛い子だな〜と思った。特に笑った顔がなんとも言えない、こっちまで幸せになる。
会った時に、ゆかちゃんと知り合いなんだ?って話をしてたら、あ〜ちゃんの方の話になって
『初対面で、付き合って下さいって言ったら『バッカじゃないの?』て、心の
シャッターガラガラ閉められちゃって…。』
普通はそうでしょ。と思いながら、でも自分もしそう…気をつけよっと。
『だってさ、ちょっと前から気になってたから、彼女目の前にしたらなんか今言いたいって思ったんだよ。』
どうやら、一目惚れしてたらしい。結構惚れっぽいんだよね。この人。って自分もか。
ホント、この人とは似てる部分が多い。
考え方とか、感じ方とか好みも似ている。
親戚の人にもよく言われるんだよね。
『でも、オレ好きになって貰うまで待とうかと思ってw』
『それ、ウザね?』
『え?でも、一緒にいても嫌がらないし。それって、可能性ゼロじゃないってことだろ?』
まぁ、あんな風に笑うくらいだからね〜。
『ん〜、そうかもしれないけど…。』
『それに、オレ待つの好きだしw』
あ、そうね。あたしも嫌いじゃない。
『ま、好きにしたら?』
『おぅ!付き合えたら一番に教えてやるよ!』
『へいへい。楽しみにしてますよw』
それから一年。
あたしはなんとなく、三人には近づかないように、ひっそり見守ってきた。
近づいたら多分…。
彼女を好きになってしまう気がしたから。
だから、あ〜ちゃんの名前も、あの日初めて会った時に知ったんだ。
なんだかんだで、ゆかちゃんとも、あの人とも合わなくなったんだよな。
そんで、あの人に久しぶりに話したいことあるんだけどって呼び出されて。
その時点で、分かっちゃったけどね。
満面の笑顔で親指を立てながら
『ついに付き合えることになったw』
『一年かよ…。』
『あははw』
ホント待つの好きだね。
雰囲気は傍からみたらカップルみたいなのに、付き合ってないのが可笑しいくらいだったよ。まったく…。
それに、シャッターガラガラとか言ってたけど、あれはただあ〜ちゃんが素直じゃなかっただけだけじゃん。
『さすがに、卒業だからよ。就職県外になっちゃったし…。会えなくなったら待つどころじゃないからな。』
珍しくちょっとした賭けに出たらしい。まぁ、賭けも何もないけど…。
これで振られてたら、それはそれで面白かったのに。
さすがに事細かには教えてくたなかったけど、とにかくあ〜ちゃんの本心が聞けたって超歓んでた。
『とりあえずおめでとうw良かったね。ちゃんと付き合えて。』
『ぉ、おう。彩乃も今度紹介してやろうか?』
『は?いいよあたしは〜。』
そんな親切はいらない。
『遠慮すんなってwいつもこっちみて笑ってたろ?歳だってかわらねぇから、仲良くなりたいんじゃねぇの?』
『だから、いいってw』
笑って返してたのに。
『オレと似てるんだから。絶っ対!彩乃も彼女のこと気に入るって!』
そんな確信込めて言わないで欲しかった。
『だからいいって言ってるじゃん!!』
笑えなかった。自分の想いを自覚させないで欲しかった。
『あ…ごめん。』
叫んでしまったあたしに、反射的に謝ってくる。
『っ…。謝んなくて良いよ。』
『彩乃…おまえもしかして彼女のコト…?』
顔を覗かれそうになって、とっさに後ろを向いた。
『彩乃?』
心配そうな声。
『仲良くやりなよ?』
出来るだけ明るく言う。
『…おぅ。』
『泣かせたらシバくから。…幸せにね?』
『…おう!』
しばらく間があったけど、はっきりそう返事してくれた。
『オシ!宜しい!』
あたしはそう言って、後ろ手に大きく手を振って家路へついた。
彼女が、あ〜ちゃんが幸せで笑っててくれれば、それで良かったのに。
なのに何で?
何で、あなたは死んじゃったのさ。
シバくって言ったのに、シバけないじゃん。
お通夜にゆかちゃんの姿を見つけたけど、あ〜ちゃんの姿はなかった。
葬式の日にも…。
あとから、あ〜ちゃんが病院で意識を失った事を母親の話から知った。
あなたの恋人が、入院してるって。
ショックで一時的に声を失ってるって。
何やってんの?
あ〜ちゃんのコト幸せにするって言ってたじゃん。
あなたに腹が立つ。
何も出来ない自分にも…。
数日後、あ〜ちゃんの声は戻って無事に退院したと聞いて、少し安心した。
図書館にも、またゆかちゃんと二人で来るようになって。
でも、でもね。やっぱりあなたに腹が立った。
あ〜ちゃんは笑ってる。でも、どこか目の奥が悲しんでる。
あなたは、あ〜ちゃんの光を奪ったんだ。
だから、あたしはもう一度あ〜ちゃんの光を見たくて。
あ〜ちゃんは、あなたに似たあたしの存在が嫌かもしれないと分かっていたけど。
無謀にも、あなたとの思い出が詰まっているこの図書館で、声を掛けたんだよ。
まさか、性別の違うあなたと恋のライバルになるとはね…。笑っちゃうね。
最初は良かったけど、案の定名前を名乗っただけで、あ〜ちゃんの心のシャッターが下りだして。
『あやちゃん』て言った瞬間に完璧ガラガラ閉店されちゃった。
頭の中でたぶん、あなたがそう呼んでたんだなと思った。
知ってた訳じゃないんだ。でもごめんね、あ〜ちゃん。
だけど、あたしが落ち込んでると、『みんなあ〜ちゃんて呼ぶから。』と言ってくれた。
それだけで、なんだかすごく嬉しくて。
戻ろうとするあ〜ちゃんの腕を掴んで。
なんかもう、今言わなきゃ。とか思って…。
あなたの気持ちが良く分かったよ。やっぱり、思考が似てるんだね。
でも、あたしが言うのを躊躇した瞬間に、
『ごめんなさい。友達待たせてるから。』
と手を振り解かれ、行ってしまった。
まいったな〜。と思いながらあ〜ちゃんの後姿を見送っていると、角を曲がる瞬間に見えた笑顔があの笑顔だった。
そのまま、引き寄せられるようにあたしは、見えなくなったあ〜ちゃんを追いかけた。
その笑顔が欲しかった。
ねぇ、あ〜ちゃん。
今は嫌われちゃってるけど。
あたしにいつか、その光を向けてくれるかなぁ?
そして、翌日も課題をしに図書館へやってきた二人。
あたしは、懲りずに二人の側へいく。
昨日ゆかちゃんには、「あ〜ちゃんのコト好きなの?」と聞かれたから「好きだよ。」って答えて。
そうなんだ。って、可もなく不可もなく。とりあえず、側に居ることは問題ないらしい。
でも、自分にそんなつもりはなくても、自然とあの人と同じ言葉を発してしまい。
その言葉は時に、あ〜ちゃんに痛みを生じさせてしまう。
—つづく—
最終更新:2009年06月17日 13:33