サイドN
早いもので出発までもう一週間をきった。
ずっと一緒にいたいけど、当たり前のように毎日学校もあるし、バイトだってある。
夏休みの初日に私は出発する。
1週間くらい遅らせればよかったな。
そしたら、夏休みだもん。1週間びっちり遊んでから、、、なんて。
そんなこと言ってたら余計に淋しくするだけだ。自分だって淋しくなるだけだ。
こうやって慌ただしく毎日が過ぎてくれれば、お互いに淋しさを紛らわして、、、
紛らわしてるんじゃ駄目なこと、、気付いているけど。
だってほら、夜になったら君は泣く。
ばれないようにこっそりと。
だけどばれてるんだもん。
でも、、知っていたいよ。一人で泣かないで?
ごめん、のっちが一人にしちゃうんだったね、、。
サイドK
慌ただしく毎日が過ぎて、のっちの出発の日まで気付けば残り一週間をきった。
あ、このまま忙しさに身を任せて気付かなければよかったのに、、、なんて無理だね。
無理なこと、自分が一番よく知ってる。
だって涙が流れるから。
無意識に、夜になると一人で泣く癖がついた。
のっちの腕の中、起こさないようにこっそり泣くの。
私が泣くと、眠っているはずののっちの腕の力が少し強くなる気がして、
夢の中でゆかのこと抱き締めてくれてるんだって、少しだけ落ち着くの。
だから今のうちに泣いておこう。
のっちの腕の中で眠れるうちに。
今のうちに、こっそりと。
サイドN
夜になると急に冷たい風が吹く気がした。
こんなに熱帯夜なのに。
二人の間に距離はないのに、そのわずかな隙間を縫うようにして
冷たい風が通り過ぎた、気がした。
こんなに熱帯夜なのに。
『電話するから』
『メールも送るよ』
『心配しなくていいからね』
腕の中で眠る彼女を抱き締め、投げ掛けてみても
返事は、ない。
そりゃそうだ。寝てるんだから。
だけど、起きてる時にこんな話をしたら
きっと二人して泣きだしちゃうだろうから、
ゆかが寝てる間にこっそり話しておくね。
『迎えにくるから、待っててね、、、』
返事は、ない。当たり前だ。
夢の中でさえ、ゆかは泣いているのかな?
胸が苦しくなる。
夜になると、このところいつもそうだ。
夜になると冷たい風が吹く。このところいつもそうだ。
こんなに熱帯夜なのに。
『ごめんね、、。』
遠ざかる
二人の距離を物語るかのように、
心に吹く冷たい風を前に、
私はただ謝ることしかできなかった。
サイドK
今日で授業も終わり。
明日から楽しいはずの夏休み。今年はちっとも楽しくないけれど。
『空港まで見送りにいくよー』
あ〜ちゃんが言う。
『うん。ありがと』
笑顔で答えるのっち。
ねぇ、のっち
ゆか、行けそうにないや。ごめん。
最後までそんな笑顔見せられたら、自分が情けなくなる。
だって、夢だと思いたいから。
いまだに嘘だって思いたいの。
ばかだね、ゆか。
そんなの無理なのに、、。
サイドN
早いなぁもう。明日には出発かぁ。
でも後悔はしてない。
だって、あっとゆう間だもん。
この半年ちょっとだって、こんなにも早かったんだ。
二年なんてすぐだ。
『ゆか。』
『うん?』
『ちょっと来て。』
眠りにつく前に、最後の確認。
『明日、のっちは行くよ。』
『・・・うん』
『でも必ず戻ってくるよ。』
『・・・うん』
『で、必ず迎えにくる。』
『・・・うん』
『だから、必ず待ってて?』
『・・・』
『ごめん、、』
『・・・』
『・・・別れ、たい?』
『・・・』
『のっちは・・
『別れたいわけないじゃん!・・・ずっと待ってるもん。ゆか、のっちじゃなきゃ、、のっちじゃなきゃ、、、
泣きだした彼女を抱き締めるこの腕が、痺れるほどに強く握られた。
抱き締めることしかできないけど、これからは
それすらできなくなる。
『うん。のっちはゆかしかいらない。
だからどこにも行かないで、ずっと待っててほしい。』
『・・・うん』
力なく、か細く頷いた彼女を出来る限りの力で抱き締めた。
その体に染み込むように。
その心から忘れないように。
最終更新:2009年07月17日 22:46