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Side N
二十歳の誕生日にはじめて見た夢。
その日を境に、時たま見るようになった夢。

大きな桜の木。

そして、その下には三人の女の子。

一人はあたしで、
二人は会ったことのない子達。

その夢に出てきた桜の木は知っている。
この辺じゃあ、ちょっとした穴場にある桜だけど。

同じ夢を見るから、気になって何度か見に行った事もある。

まぁ、この時期には、誰も見向きもしないけど…。

年が明ける頃から、さらに頻繁に夢の回数が増えてきた。

三人で向かい合い、おでこをくっ付け合って、手を取り合って、いつも同じ約束を繰り返している。

『ずっと、三人でいようね?』

いったい、この二人は誰なんだろう?

気になって、桜の木へと足を運ぶ回数も増える。



そんなある日…。

桜の木に近づいていくと、カメラを構えてる女の子がいた。
花が咲いてる訳でもないのに…。
あたしは立ち止まって、彼女の様子を見ることにした。

何回かシャッターを切って、カメラを下ろした彼女が木を見上げる。

あれ?何か見覚えが…。

ドクンッ

夢がフラッシュバックする。

あ。あの子だ…。

夢の中にいる女の子のうちの一人だ。
夢では名前を呼んでいるはずなんだけど、目が覚めるといつも覚えてないんだよね…。

もしかしてあの子も夢を…?

なんて考えが浮かんだけど、そんな偶然、あるわけない。
あたしは、その子に声を掛ける事なく、来た道を戻った。

夢の彼女を見かけた日から、ここへおとずれる度に、何度か見かけるようになっていたけど。
彼女からも声は掛けてこなかったから、やっぱりただの偶然なんだって思っていた。

だけど二月の半ばを過ぎた頃から、例の夢を毎日見るようになって。
だから、きっと何かあるって、そう思うようになった。



そして迎えた桜の季節…。

今日は朝から、なんか良いことが起こりそうな、そんな予感がしていた。

いつもの桜の木へと向かう。

居た…。

満開の桜の花を見上げて、彼女が居た。

今なら声を掛けれる。
そんな気がして、彼女に近づく。

あたしの足音に気づいて彼女がこっちを向く。

あたしは彼女の前で立ち止まって。
そっと微笑む彼女に

「あの…。」

声を掛けたタイミングで、二人の間を勢い良く春風が吹き抜けていった。
二人ともその風に目を覆って、そっと目を開けると、周りには花吹雪が舞っていた。
そして、風が吹き抜けた先には…。

「うわぁ〜、超キレイw」
こっちに歩いてくる見覚えのある女の子。

舞った花びらを見上げながら、たまにクルリと回りながら、確実にあたしたちの方へ歩いてくる。

でも、あたし達の前に来る手前でバランスを崩してコケそうになる。

そこでとっさにその子を支えて
「「あ〜ちゃん!」」
口をついて出た名前と。
あたしと同じように、その子を支えて同じ名前を呼んだ彼女。



顔を見合わせると…
「ゆ、か、ちゃん?」
また口をついて出てきた。

「のっ、ち?」
同じように少し戸惑いながら、彼女もあたしの呼び名を口にする。

「うぁwやばかったwゆかちゃん、のっち、ありがとうw」
崩れかけた体制を立て直す、あ〜ちゃん。

あたしたちが「あ〜ちゃん」と呼んだその子も、彼女をゆかちゃんと呼ぶ。

「ふぃ〜。やっと、逢えたぁ。」
トントンと足を揃えるあ〜ちゃん。

あ〜ちゃんの弾けるような笑顔を見てると、何か思い出しそう…。

「また、三人で…居られるね?」

ああ、この声…。

そうだ。

「あ〜ちゃんっ。」

ゆかちゃんがあ〜ちゃんに抱きつく。



…うん。そうだね。

また二人と
生きていける



桜の花が咲くころ

二人と出逢い
あたしが目醒める


<桜の花咲くころに>fin





最終更新:2009年07月22日 22:04