Side A
まだ彼のことが『好き』
彼が亡くなってから、初めて言葉にした。
彼が生きている時でさえ、たったの一度伝えたきりだから…。
後悔…、してるのかな。
もっと素直になれてたら。
そしたら、もっとたくさん『好き』って伝えられたのに。
「あたしの方こそ、言い難いこと聞いてごめんね?」
彼女はそう言って、あの困り顔になった。
違うよ。あなたは悪くない。悪くないんだよ。
でも、何も言えなくて…。
そして、そこから会話が無くなった。
チラッと見た彼女の横顔は、何かを考えているみたいで、少し険しい。
隣に居るのに、なんだか遠くに感じて嫌だった。
…そっか。
彼女はすでにあたしの中で、失ってしまう可能性がある人物になっていたんだね。
そう思った途端に、あたしは彼女の左手の小指をゆるく掴まえていた。
もちろん、ビックリした顔でこっちを見る彼女。
「どうしたの?」
「どっか、行っちゃいそう…だった、から…。」
「あぁ…。ごめんごめんwちょっと
考え事しちゃってたw」
「うん…。」
いつもの笑顔でほっとした。
「なんだったら手ぇ、繋ぐ?」
あたしの様子を伺うように、冗談ぽく聞いてくる。
「ヤダ…。このまま…で良ぃ。」
あたしは彼女の小指を掴まえていた手に、少し力を込めた。
「だよねぇwでも、あ〜ちゃんがそれで落ち着くならそれでw」
「うん。」
また、私の可愛くない所。
素直に繋いでもらえば良いのに…。
結局そのまま家まで送ってもらって。
「ありがとう。」
かろうじて、それだけ言えた。
「ん〜ん。こっちこそありがとう。あ、課題ってもう終った?」
「うん。」
「そっか…。じゃあ、しばらく会えないね?」
「そ、だね。」
「また、いつでも待ってるからw」
「…ぅん。」
「へへぇ、じゃ、またね?」
そして、彼女の…癖。
あたしの頭をぽんぽんと撫でていく。
彼と同じ癖。
ああ、まただ…。
どうしたら、比べずに済むのかなぁ?
それは、ちょっとした、気にも止まらないような気持ちの変化。
それは、あたしもまだ気付かないくらいの…。
—つづく—
最終更新:2009年08月01日 20:49