アットウィキロゴ
Side A

まだ彼のことが『好き』

彼が亡くなってから、初めて言葉にした。

彼が生きている時でさえ、たったの一度伝えたきりだから…。

後悔…、してるのかな。

もっと素直になれてたら。
そしたら、もっとたくさん『好き』って伝えられたのに。

「あたしの方こそ、言い難いこと聞いてごめんね?」
彼女はそう言って、あの困り顔になった。

違うよ。あなたは悪くない。悪くないんだよ。
でも、何も言えなくて…。

そして、そこから会話が無くなった。

チラッと見た彼女の横顔は、何かを考えているみたいで、少し険しい。
隣に居るのに、なんだか遠くに感じて嫌だった。

…そっか。
彼女はすでにあたしの中で、失ってしまう可能性がある人物になっていたんだね。

そう思った途端に、あたしは彼女の左手の小指をゆるく掴まえていた。
もちろん、ビックリした顔でこっちを見る彼女。
「どうしたの?」
「どっか、行っちゃいそう…だった、から…。」
「あぁ…。ごめんごめんwちょっと考え事しちゃってたw」
「うん…。」



いつもの笑顔でほっとした。
「なんだったら手ぇ、繋ぐ?」
あたしの様子を伺うように、冗談ぽく聞いてくる。
「ヤダ…。このまま…で良ぃ。」
あたしは彼女の小指を掴まえていた手に、少し力を込めた。

「だよねぇwでも、あ〜ちゃんがそれで落ち着くならそれでw」
「うん。」

また、私の可愛くない所。
素直に繋いでもらえば良いのに…。

結局そのまま家まで送ってもらって。

「ありがとう。」
かろうじて、それだけ言えた。

「ん〜ん。こっちこそありがとう。あ、課題ってもう終った?」
「うん。」
「そっか…。じゃあ、しばらく会えないね?」
「そ、だね。」
「また、いつでも待ってるからw」
「…ぅん。」

「へへぇ、じゃ、またね?」
そして、彼女の…癖。

あたしの頭をぽんぽんと撫でていく。
彼と同じ癖。

ああ、まただ…。
どうしたら、比べずに済むのかなぁ?

それは、ちょっとした、気にも止まらないような気持ちの変化。
それは、あたしもまだ気付かないくらいの…。


—つづく—





最終更新:2009年08月01日 20:49