《過去の中の過去》
サイドA
こんなにうまくいくなら、もっと早くから素直になればよかったかな。
でも、中途半端に束縛しあえた関係も、それはそれで心地良かったんよ。
だって、のっちはやっぱりヒーローで。
ずっと一緒にいる中で、社交的になったところとか、いつの間にか恋人が出来てたり、変わったとこの方が当たり前に多いけど、出会った時からそこだけは変わってない。
いつでもあ〜ちゃんのヒーローはのっちで。
『あ〜ちゃんのためなら飛んでくよ』
って、恥ずかしがりもしないでシレッと言うとこ、自慢だったりもするんよ。
大学は別々だからわからないけど、高校まではずっと一緒だったから知ってる。
あ〜ちゃんに友達が多く出来たのも、実はのっちが原因で。みんなのっちと仲良くなりたがってた。
私の教室まで犬みたいにやってきては、そのヒーローみたいな大きな笑顔と大きな背中に、みんな憧れてたんだろうな。
自慢でもあったけど、劣等感だって感じなかったと言えば嘘になる。
みんなにとってあ〜ちゃんはのっちまでの繋ぎなの?
なんて、、子供だったから、よく思ってたっけ。
でもヒーローはみんなのヒーローじゃなかった。
のっちが変身するのは、私が辛いときだけ。
私だけ。私だけのヒーローだった。
だからやっぱり、のっちはあ〜ちゃんの自慢だったな。
そんなみんなの憧れの対象だったくせに、全然自分に自信がなくて、
『あ〜ちゃんがおらんとなんもできん』
なんて。八の字眉なのに、平気な顔してサラッと言ってくれるもんだから、どこにも行かせたくないんよ。
ヒーローはヒーローのまま、ただ私の傍で、私を守ってよ。
『あ〜ちゃん、のっちと付き合ってよ』
私の何年も前からある気持ちに気付いてるのか知らないけど。ねぇのっち、断る理由なんかないよね。
でも素直になれないのは悪い癖かな?でものっち、
ツンデレ好きでしょ?
うまくいきすぎてないかい?
ちょっとあ〜ちゃん怖いよ。
でもね、のっちが隣にいてくれるだけで安心するんよ。
『ねぇのっち!』
『うん?』
『これって偶然?』
『いんや!運命でしょ!』
運命の赤い糸が肉眼で見えるくらいの、とびっきりの恋がいいな。
ずっと傍にいて、ずっと糸が切れないようにしててよね。
『幸せすぎて泣きそう、、』
『ふはっwなにいいよるんあんた!w』
泣かなくていいよ、のっち。この幸せは絶対に消えないもん。のっちが泣いたら意味がないんよ。あ〜ちゃんのヒーローは泣かんでいいんよ。
『ずっと傍におるけぇ、大丈夫よ』
泣く必要なんか、ないんよ。
《現在》
サイドA
ねぇのっち。あなたの名前、今でもよく日記帳に出てきます。
でもね、あなたのことを日記に書こうと言葉を探しても言葉になんかならないんよ。
ちっともうまく言葉になんかならんくて、かわりに涙ばかりでるんよ。
ねぇ、神様っているのかな?いるとしたら、神様ってちょっと意地悪だよ。
だって、何度笑い合ったかわからないのに、浮かんでくるのは辛いことばかりで。
ちょっと意地悪だよね、、。他にいい思い出いっぱいあるはずなのに。
でも、それでもね。辛いことばかりでも、あなたのいない世界のほうが嫌だから、私はそれでも思い出すんよ。
ただ寂しさを埋めようと必死で考えていたけれど、どれも自分のことばかりで。
あなたとの間に、一定の距離を保たないとダメになってしまいそうだった。そんなのすっごい嫌なのに。
一定の距離なんかいらないのに。その関係にすらすがりそうな自分も嫌だった。
結局あの頃の私は自分のことばかりで、
“のっちは私のことばかり考えてくれてたなぁ”
なんて、今頃になってやっと気付いたんよ。
言葉とか態度にしなくたって、のっちならわかってくれるでしょ?って思ってたんよ。本当、自分勝手だよね。
あの頃の私は、本当に自分のことばかりだったよね。
最終更新:2009年08月01日 23:01