Side K
お風呂上り。
髪の毛を拭きながら、二人が居るリビングへと向かう。
開いたままの戸から中に入ると、のっちは寝てるみたいで、その前にあ〜ちゃんが座っている。
さっきまでの、楽しそうな表情と違って、
考え事をしてるみたいな感じ。
「あ〜ちゃん?」
私が呼ぶと、こっちを向いて
「あ、ゆかちゃん。」
ニコッと笑って答えてくれる。
「のっちの寝顔おもしろい?」
「え?」
「さっきから見てるみたいだから。」
「あー、ぅん、キレイだなーと思って。」
また、のっちの方へ顔を向けて答えるあ〜ちゃん。
私もあ〜ちゃんの隣にしゃがみ込んで、のっちを見る。
「…ちょっと口開いてるけど?」
「ふふ。でも、そのくらいの方がのっちっぽい。」
「まぁ、確かにw」
「のっち今日、あ〜ちゃんに友達って言われて、喜んでたね。」
「…うん。」
少し返事に間があいた。
「ちゃんと言えて良かったね?」
「…ぅん。」
まただ。
どうしたんだろう?と思って、隣のあ〜ちゃんを見ると、ポンと頭を預けてくるあ〜ちゃん。
「ゆかちゃん、良い匂いする…。」
突然そんなことを言ってくる。
「そりゃあ、お風呂上りだもん。」
「うん。」
ちょっと様子が変だ。
「ねぇ、ゆかちゃん。」
「ん?」
「あたし、ゆかちゃんのこと好き。」
こんなこと言ってくるなんて、やっぱり変だ。
私はよく言ってるけど、あ〜ちゃんは言ってこないから。
「ちょとwどうしたの?」
「ふへwちょっと『好き』って言ってみたくなっちゃった。」
好き…か。
もしかして、私がお風呂入ってる間に
「…何かあった?」
顔をふるふるっと振って
「何にもない。」
落ち着いた声でそう言うあ〜ちゃん。
でも、きっと何かあったはず。
長年一緒にいるから、なんとなく分かる。
酔っ払いのっちがなんかしたとか?
いや、でも寝てるし。
「そだ、のっちの布団敷いてきたんだ。移動させなきゃ。あ、あ〜ちゃんはお風呂行ってきなよ。」
「一人で大丈夫?」
私の肩から顔を上げて聞いてくる。
「大丈夫。無理そうなら叩き起こすからw」
「そ?分かった。」
笑いながらそう返事をして、あ〜ちゃんはお風呂へいった。
さてと…。
「のっちー?布団敷いたからそっちで寝てくれる?」
のっちの肩を揺らして起こしてみる。
小さな唸り声だけで起きてはくれない。
仕方ないから思いっきり揺さぶってみる。
そしたらさすがに目が覚めたみたいで。
「うにゃwごめんらさぃ。もう、あ〜ちゃんに抱きつきませんからw」
何か身構えられた…。
「のっち、寝ぼけてないで、布団で寝てくれない?」
「ぅえ??」
目をぱちくりさせているのっち。
「あれ?あ〜ちゃんは?」
「お風呂。」
「あ、そうなんだ。」
「何ホッとしてんの?」
Side N
「ゆかちゃんに怒られないですんだからw」
「あっそ。」
「あははぁ。」
それも確かなんだけど。
「なんか、酔って気分良くてあ〜ちゃんに『好き』って言っちゃった気がするんだよね。また困らせちゃったんじゃなかと思って…。」
何も言わずにじーっと見てくるゆかちゃん。
「しかも、洗い物してるところに後ろからこう…。」
そう言いながら腕で輪をつくって、抱きしめる動きをする。
なんか、ゆかちゃんに睨まれてる?
「やっぱ、まずかったかな…。」
「それでさっき謝ってたの?」
「う、うん。」
あ〜、やっぱダメだよなぁ。
あたしが告白した時のあ〜ちゃんの顔が脳裏を過ぎる。
また、あの顔させちゃったのかな…はぁ。
「あ〜ちゃん抵抗してた?」
「ん?いや、してなかった、と思う。」
ゆかちゃんは少し考えるそぶりをして
「そっか、だからか…。」
小声でそう言った。
「え?何が?」
「ん〜ん?こっちの話。」
なんだろう?
少し気になったけど、あたしには関係ないのかと思って聞かなかった。
ふぁ〜…。
ちょっと寝たけどやっぱりまだ眠いや。
「あ、のっち寝るなら布団で寝てよ?」
欠伸したあたしを見て思い出したように言ってくるゆかちゃん。
「ん…。てか泊まっちゃって良いの?」
「今さらなにを…。最初からそのつもりだけど?お酒飲ませて帰れとは言わないよ。」
「あ、そうなんだ。」
「と・も・だ・ち。でしょ?」
あw
「そうでしたw」
何か良いな、その響き。
「ねぇ、のっち。」
「はい?」
「あのさ、お願いがあるんだ。」
急に真面目な顔したゆかちゃんが、あたしにお願いだなんて。雹でも降るか?
「前にさ…。『まだ渡せない』って言ったの憶えてる?」
「え、うん。憶えてる。」
確か、あたしがあ〜ちゃんに告白しちゃった日。
「あの時はさ、あ〜ちゃんがのっちに近づこうとしてなかったから。そう言ったんだけどさ。今は違うから、あ〜ちゃんの光を取り戻して欲しいんだ。のっちに…。」
…あ〜ちゃんの光。
そっか、ゆかちゃんも同じだったんだ。あ〜ちゃんの光が見たいんだ。
「のっちなら出来ると思う。だからお願い。あ〜ちゃんのあの笑顔をまた見たいから。」
「うんwあたしも見たいよ。」
「ふふ、簡単じゃないかもしれないけど。期待しちゃっても良い?」
「期待かぁ〜。そこまでは言われると自信ないけどw」
「無理しなくても良いから。いつものゆる〜い感じでがんばってよ。」
イヒヒwといつもの意地悪な顔で言ってくる。
「ゆる〜くて良いなら、大丈夫だわ。」
「うん、のっちなら大丈夫。」
正直、本当にあたしに出来るかなんて分かんないけど、ゆかちゃんも同じ願いなら大丈夫な気がした。
ずっとあなたを『好き』なあ〜ちゃんに。
あたしは何をしてあげれるんだろう。
—つづく—
最終更新:2009年08月01日 23:03