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《過去》


サイドA


『ねぇのっち、何かあった?』
『ん?なんもないよ?』
聞けばいつだって優しい目をして、そう答える。
『隠し事、してる?』
『はぁ?あ〜ちゃん何言ってんの〜w』
聞けばいつだって優しく笑って、そう答える。

—愛する者のために思いやってつく嘘は、罪でなく愛である—

どっかの偉い人の本で読んだっけ?
でもさ、のっち?
あなたが“愛してるから”とついた嘘は、いったい誰のための愛?自分自身への愛じゃない?
私のためについた嘘。本当は自分のためじゃない?


『なに、あ〜ちゃん?信じてないの?のっちのこと。』
私だって愛してるから。私だって私を好きでいたいよ。

『信じてるよ。』
ほらまたあなたに嘘ついた。

今までについてきた沢山の嘘なんか比にならないくらい沢山の愛を持ったその嘘は、のっちのため?自分のため?
ねぇのっち。ごめん。あ〜ちゃんもう綺麗なままでいられない。


—愛する者のために思いやってつく嘘は、罪でなく愛である—
なら、その嘘は愛だよね?私のための愛だよね?
私だってのっちのための愛だよ。
罪なんかじゃない。愛だよ。




《現在》


サイドA


ねぇ。のっちは幸せなのかな?
『幸せになってね』
最後にそう言ってくれたから笑顔で答えてみたけれど、本当はあ〜ちゃん寂しかったよ。
だって、本当に聞きたかったのは、“幸せにするよ”だったんだもん。勝手でしょ?笑っちゃうよね。
結局、別れを選んだのも、今の人を選んだのも自分のくせに、やっぱりどっか心のすみっこで、
“それでものっちが引き止めてくれれば”
なんて考えてたんよ。
でも今更もう無理だし、戻れないし、奪われたものを奪い返す気力もない。

・・・・・ちがうか、、。奪われたわけじゃない。
私が気付くよりもずっと先に、かしゆかは気付いてたんだよね。
早いか、遅いか。それだけの違いなのに、その違いが今でもたまにチクッて胸を苦しめるよ。
でも、だとしたら奪ったのはあ〜ちゃん?
のっちだけじゃないね。ゆかちゃんにも、ごめん。


運命の赤い糸が肉眼で見えるくらいの、とびっきりの恋。・・・・・を、夢見てたんだな、きっと。
だけど本当にそんな夢なら、欲張りな私はきっと“夢から覚めたくない”ってわがままを言って、またあなたを困らせてたよね。
目を覚まさなくちゃ、あなたの泣き顔にも気付けなかったのに。
夢も現実も、のっちには笑っていてほしかった。

結局夢も現実も、甘い恋ではなかったから目を覚ますことはできたのに、表に出ることのないのっちの涙に気付いたのはあ〜ちゃんじゃなかった。
なんでだろ?あんなに大好きで大好きでしょうがなかったのに、どうして肝心なところはあ〜ちゃんじゃなかったんだろう。
“人を想う”こと。私にはまだ難しいよ。
私にはまだ、その“人”は自分自身で、“相手を想う”には、もうなれないみたい。
その“相手”になれるのは、のっちだけしか無理だと思うから、そんなのっちが隣にいない今、
それはもう、できんのよ。






最終更新:2009年08月22日 21:32