side-K
あ〜ちゃんが帰って来た。
わたしたちは西脇一家といっしょにホームで待っていた。
朝一番の列車で現れたあ〜ちゃんは、あたしの記憶の中のあ〜ちゃんよりもちょっとだけ色黒で、前よりもぐっと大人びた顔をしていたけど、その他はなんにも変わりなかった。
耳なじみのいい柔らかな声も変わりなく、あたし達を見た第一声は「おはよう!」だった。
久しぶりとか、懐かしいとか、なんもなく、おはよう!って。
学生のころ、毎朝うちに迎えに来たあ〜ちゃんの朝一番の言葉。ぜんぜん変わらない。
そんで、それだけ言ったら号泣した。人目も気にせずよく泣く。ぜんぜん変わらない。
そしてあ〜ちゃんは約束通り、家にいったん帰る事もなく、うちへやってきた。
大概の荷物は家に送ったらしく、手荷物は小振りなスーツケースとショルダーバッグだけ。
スーツケースはとりあえず玄関に置いた。
そして今、あ〜ちゃんとのっちとあたしの三人であ〜ちゃんのお土産のジュースとフルーツを囲んで座っている。
「じゃ、まずはあ〜ちゃんの話から聞こっか。」
「そーじゃね。うちらの話は大概セットじゃけぇ。」
あ〜ちゃんの話は凄かった。相変わらずの擬音語の連発、外国帰りだからなのか前よりパワーアップして帰って来たジェスチャー。
外国でできた友達の話。やっぱりあ〜ちゃんは人を惹きよせる何かがあるらしい。
一緒に言った留学生の日本人の子の訛りがヒドくて、同じ日本人なのに外国語よりわかんなかったって話。あ〜ちゃんいわく、完全アウェイ。
日焼け止めが全然聞かないって話。だからこんなに焼けたんだって不満そう。
そして、帰ってきた経緯。就職の話。
要約すると、あ〜ちゃんは留学先で大きい会社の就職の面接に受かって、日本の広島支社に配属になったらしい。
「もぉホンットにすごかったんよ!!!うちは英語へたくそな上に、あがっちゃったもんだからもう踊りみたいな勢いでジェスチャーしたんよ。そしたらもうバカ受けしてさぁ・・・!」
もはや流石あ〜ちゃんとしかいいようのない生活をして来たようだ。
「そーいえばこれからあ〜ちゃんは実家にもどんの?」
「いやそれなんじゃけど・・・
「ん?」
「実はさぁ・・・ ちゃあぽんがさぁ、テレビ出る人になるらしいんじゃよ。」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!」」
「んでさ、今借りてる家を出て家族みんなで東京に引っ越すんよ。でもうちの会社は広島じゃけぇ、新しい家を借りなきゃいけんのよ・・・」
「そっかぁ・・・」「大変だねぇ・・・」
「んでさ、お願いなんだけどしばらく泊めてくれんかなぁ?家見つかるまで。」
「「もっちろん!!」」
「やったぁ!あ〜ちゃんご飯つくって!ご飯!毎日!毎食!」
「のっち、、、 ゆかのご飯は不満かな?」
「・・・ いやいやいやいや、違う!ただ久しぶりにぃ〜って...」
バツン!
頭を抑えて床に転がるのっち。思いっきりスプーンでぶっ叩いてやった。
まったく・・・ カレーしか作れんのっちに不満たれる権利はにゃいっ!
しかし、そんな様子を笑顔で見てるあ〜ちゃん。ほんとに変わらなすぎて拍子抜けした。
「あー、ほんっと助かるわぁ・・・ 二人ともありがとう!!家事ならなんでもやるけぇ!
さっ、うちの話はここまで! 二人の話、ゆっくり聞かせてもらおっかな♪」
どんちゃん騒ぎする自分たち3人を見てたら、二人でもあったかかった空間が、もっとあったかくなった気がした。
最終更新:2009年08月22日 22:50