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付き合うってそういうこと、





「あー、コレ可愛い!」


CDショップで欲しかったアルバムを手に入れてご機嫌なのっちと、それを幸せそうに見守るかしゆかが次に立ち寄ったのは雑貨屋だった。CDショップと同じ路面に並んでいて、何度か目にしたことはあったけれど、店の中に入ったのは初めてだった。展示用に置かれているアロマが、独特の甘い香りを店内に充満させる。黒のキャップを深く被ったのっちが、同じようにハットを深く被って黒縁眼鏡をかけて普段とは違う装いのかしゆかの声に反応する。かしゆかは嬉しそうに手にとったそれを見せてきた。


「ストラップ?」
「そう、可愛くない? イニシャルついとるんよー。」


かしゆかが手に取ったそれは、花柄模様のYのイニシャルのついたストラップ。紐にはY字の他にも星や小花も一緒についていて可愛らしい。全アルファベットの種類があって、のっちのAもあった。しかしかしゆかが手に取ったのは、N。


「のっちもこれ買おうや。」
「えー、Nなん、Aじゃないん。」
「…Aは、あ〜ちゃんとかぶるじゃろ。」


のっちがかしゆかが差し出したNがついたストラップに不満を洩らすと、かしゆかは黙った。一瞬、かしゆかの表情が曇ったのをのっちは見逃さなかった。あ、やばい、心の警戒音が小さく鳴る。駄目よ、のっち、違うでしょう、と。


かしゆかは、自然を装ってその手に取っていたYとNのストラップを棚に返してくるりと身体を反転させ、アクセサリーが置かれている棚へとヒールを鳴らしてトコトコと歩いて行った。
その後姿に何だか申し訳なさを感じた。かしゆかが返したばかりのストラップを2種類手に取って、かしゆかの背中とは反対方向にのっちは向かった。



「今日はどうするん?」
「……ゆかは、帰るよ。」
「のっちの家に?」
「ゆかの家。」


ご飯を食べていても他のショップを覗いても。かしゆかは精一杯自分を押し殺しているように見えた。それはけして怒っているとか、そういうのではなかった。のっちには、自信がなくて落ちてしまっているように見えた。
今も、いつもなら喜んで「のっちんちに泊まってね、一緒のベッドで寝るんじゃけんね。」と可愛らしいことを口にしていたのに、この反応から分かるような落ち具合にのっちは眉を垂らした。ポケットに突っ込んだ手を引っ張り出そうかどうか悩む。


「じゃあ、ゆか、こっちじゃけえ。」


そう言って弱弱しく手を振って切なげにさよならを言うかしゆかに、のっちは今しかない、とポケットに突っ込んで少し変形した小さい紙袋をかしゆかに差し出した。かしゆかの視線はのっちの掌に落とされ、そしてのっちへ。


「……なんなん、これ。」
「開けて。」


受けとった紙袋の封を開けると、先ほどのストラップ、イニシャルはYとN。


「なんで…?」
「ゆかちゃんのことが好きなんよ、のっちは。」


ストラップとのっちの顔を交互に見るかしゆかの目元は、薄っすら濡れていた。嬉しさが止まらない。


「のっち、ゆかのこと好きなん?」
「うん。」
「ゆかのこと好きになったら後悔するよ、」
「いいよ、ゆかちゃんが好き。」
「…あ〜ちゃんよりも?」


「…うん。」


抱きついてきた華奢な身体をのっちは離したくないと思った。住宅街の路地には、犬の散歩をするお姉さんの姿が遠くに見えるだけ。けれどけして気付かれない。

お家に帰ろうね、ゆかちゃん。

絡まった指先が、何だか無性に愛しく思えた。






最終更新:2009年10月22日 21:32