Side A
日本に帰ってきて、これから武道館への準備も本格的になってくるというある日
それは、突然だった
「今まで、ありがと」
「どうしたん?急にぃ」
「あたし、大丈夫、、なったからさ…」
キスをした後、困ったように笑いながら、その先の言葉を続けようとするのっち
その表情に、嫌でも内容が予想できた
『のっちが大丈夫思うまで…』そう言ったのはあたしだもん
でも、やだ…待って…
先を聞きたくないあたしは、そう言いたいけど、そんな権利はないんだ
「もう、止めよ…」
ドクン…
いつかくると分かっていた時
だけど、もしかしたら…なんて淡い期待も心の片隅で感じていたのに
のっちの言葉で脆くも消え去った
「ぅん…分かった…」
分かんないよ…
ホントは嫌だよ…
もっと、のっちと居たいよ…
だけど、思い留まらせようと思ったって、元々そういう関係じゃないんだもん
のっちが大丈夫って言うなら
そう、返事するしかないじゃん
「我儘ばっかで、ごめんね?」
「我儘なんて、思ったことないけぇ…」
どうしよう、泣いちゃいそうだよ…
泣いたらのっちを困らせちゃうのに…
「かわりに、今日はあ〜ちゃんの我儘、なんでもきくけぇ…」
「なん、でも?」
「そう、なんでも」
あぁ…ダメだ…
「じゃあ、ここから帰るまで…」
「うん…」
「のっちと、恋人に、、なりたい…っ」
涙と一緒に想いが零れだす
こんなの、ホントにただの我儘だ
なのに、なんで…
「うん、分かった…」
なんで、そんなに優しいの?
そんなの、ズルイよ…
ただただ見つめるあたしの涙を舐めとっていくのっち
次から次へと溢れる涙を、何度も舐めながら次第に目元へたどり着く舌
そして瞼に口付けてくる
「ん、のっち…」
「あ〜ちゃん…」
「なんで?」
「ぅん?」
「なんで、優しくするの?」
「…あ〜ちゃん好きだからw」
それ、本気なの?判んないって…
でも、もし本気なら…
「だったら…優しくなんて、しないでよ…」
あたしが大丈夫じゃなくなるから
「壊れるくらい…愛して…」
いっそのこと、心ごと壊して欲しい
そしたら、悲しいなんて思わなくてすむでしょ?
「あ〜ちゃんっ」
ぐっと抱きしめられた
ホントにぐっと…
「お願い、壊して…」
湧き水のように溢れた気持ちを、今はもう、自分でも止められない
のっち、ごめんね?今日だけだから、あたしの我儘…お願い…
「あ〜ちゃん、ごめん…愛してる…」
何で謝るの?そう聞きたかったけど
一言呟いたのっちの深い口付けが、あたしの呼吸を奪っていく
今夜限りの『愛してる』を何度も刻み付けて
最近優しかったその行為は、あたしの言葉通り、何度もあたしを壊しに掛かってきた
その度に、あたしの意識は飛んで、壊れそうになる
だけど、どんなに激しくても、その中でハチミツ一さじ程の甘い優しさを感じてしまうから
それだけで、結局あたしの心は最後まで壊れることはなかった、
何度目か意識が飛んだ後、気がつけば朝を迎えていた
まだ肌が触れ合う距離にのっちがいる
きっと、もう触れる事のないその頬に
そっと手を伸ばした
—つづく—
最終更新:2009年12月24日 18:03