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カシャ


“なにしてんの、もぉー”


カシャ


“しかたないなー、ほら”


カシャ


“のっち、おいで?”




ファインダー越しに見える景色は、いつのまにか夕暮れ色に染まっていた。
…なにやってんだろ。一体何時間ここにいたのか。自分でもわからない。
こうやってただなんとなく風景を切り取っていくだけの写真はひどくつまらないのに。
シャッターをきるたびに彼女の姿が思い出されて、その手を止められなかった。


…悔しいな。そんなつもりないのに、彼女の記憶が自動更新されていく。
のっちの中のかしゆかは、いつからか記憶だけの存在になった。
結果、こうやって彼女からまともに影響をうけたカメラを構えれば、簡単に蘇ってくる。
悔しいけれど、直りそうもないし。最近は仕方ない、と思うことにしてる。


オレンジ色の夕焼けが妙に胸を締め付けるから、忘れないようにとシャッターをきった。


カシャ


“…忘れて、ね”


そんなのって、無理だよ。ゆかちゃん。
シャッターをきればきるほどに、かしゆかの笑顔ばかりが思い出されていたはずなのに。
こんな空の色が変わるまでの時間を費やしていたら、いよいよラストシーンを思い出してしまったよ。

…そんなつもりじゃ、なかったのに。
ここで終わり、って、簡単に記憶がストップできたらよかったのに。
忘れて、なんて。無理なのわかってて言ったのかな。それとも本当に忘れてほしかったのかな。


カシャ


“ずーっと好きだよ”


カシャ


“多分、何があっても”




忘れるわけない。何があっても好きなのは、のっちのほうだよ。
こんなに時間がたったって、記憶が更新されては悲しくて、思い出すたび愛しいんだ。


ファインダー越しに見える景色は、いつのまにか夕暮れ色に染まっていた。
眩しくて目を閉じた一瞬で、記憶の中の彼女は消えていった。




end






最終更新:2010年05月17日 20:49