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窓を叩く音がやけに騒がしく聞こえてカーテンを開けた。
枝にしがみつくようにして一命を取り留めている葉っぱたちのその必死な様が目に入る。
今日は風が強い、強すぎる。そして冷たい。
木枯らし1号だか耳たぶ2号だかとかげ3号だかなんだか知らないけど、いきなりやってきたそれにブルっと体を冷やされて、私はまたカーテンを閉じた。

「風、やばいよゆかちゃん」
「外、寒そう?」

ベッドの上、夏の名残をそのままに引きずった薄い掛け布団にくるまったかしゆかが顔だけ出してそう聞いてきた。
ガタ、ゴト、窓の外の世界の音を背中に受け、私は考える。
この突然の暴冷風、ゆかちゃんが珍しくあんなに甘々であんなにかわいくて何回も何回も何回も果てた結果のこれ、なんじゃない?

「ねーってば。」
「…めっちゃ寒そうです。」

葉っぱとかマジで超必死だったし。
ちらほらとお亡くなりになった方々が飛んでくのも見えたし。

パタパタとベッドに駆け寄り、ゆかちゃんが…いや、ゆかちゃんを独り占めするそのテロッテロな掛け布団に潜り込む。
寒い寒い!ともらせば、狭い狭い!と文句を言うその可愛らしい唇に唇を寄せると案外すんなりと受け入れてくれた。
調子にのって2度、3度そうすると、先に動いたゆかちゃんの、腕、空気、太もも。

押さえ付けられて無言で繰り返されるそれに抵抗する必要性は感じられなかったから、私は全ての権限をゆかちゃんにゆだねた。
はぁ…と息をついて私の耳に濡れた唇を寄せて。
耳たぶに走る刺されたような痛み。
思わず下唇を噛んだ。

「ゆか、していいって言ったん?」
「…言ってません」
「のんのん、お仕置き」





最初から激しく。

冷えた体なんてのはどこへ行ったのか、熱く、鋭く上がる自分の体温に若干目眩がする。
ゆかちゃんを隠す長い黒髪が揺れて、私の顔にかかる。
その一本一本がこうしてゆかちゃんを形作って、魅せる目元を隠して、口元をイヤラしく見せてくる。
私の上を我が物顔でただようゆかちゃんは恐ろしく、キレイだ。

「のっち脱がして」

さっき身につけたばかりのボーダーのTシャツはその短い生涯を終えた。

ベッドの外に落ちたそれは、明日になればまた拾われて息を吹き返す。
細い体を隠すように、また私たちの邪魔を始めるのなら、今ここで隠してしまいたかった。

見えた赤い舌。
出すと噛まれる舌。
跡をナメる舌。
もっともっと、モット。

ゆかちゃんからこぼれた唾液が私の体をまとっていく。キラキラ、あとを残して。

のっちはゆかの。

そう言われてるみたいで悪い気はしなかった。
ゆかちゃんの所有権も私にあるのだと思うと、この落ちる汗でさへも熱く感じる。
与えられる快感も痛みも全部、ゆかちゃんのために。
その体から発信されるものは全部、手放してはダメだと思った。

「泣くまでやめない」

こんな私の涙でさへも、ゆかちゃんを飾るために存在するのなら、いくらでも流すよ。
それでゆかちゃんが輝くのなら、いくらでも。
でも今は、泣くわけにはいかなくなった。

「泣いてもやめんけど」

息をあげて楽しそうに笑ったゆかちゃんは私のイイところしか責めてこないゆかちゃんは、その細い腕で全て消し去っていく。

「もっと出さんとやめちゃうよ?」

私が出すかすれた声も、私が出すヌルヌルした何かも、全てがゆかちゃんの成分になるのなら、私は私は…。

「どこがいいん?」
「どこも、いい…」

くしゃくしゃにゆがんだシーツも飛んでいった葉っぱたちも重みに悲鳴をあげてるこのベッドも、のっちも。
全てゆかちゃんのために。


End





最終更新:2010年11月07日 03:05