次の日の放課後。出動要請を受けて、あたしは校門脇にスタンバイした。あたしの役割はゆかちゃんに言い寄ってる奴からゆかちゃんを守ること。
俺の女に手を出すな的役割を果たす為、迫力を出すよう、制服の上に迷彩柄のパーカーなんぞ着てみた。自分で言うのも何だけど、結構きまってる。
あたしはちらりと植え込みの陰に目をやる。あ〜ちゃんが「のっち、ガンバレ」とちっちゃく手を握る。…可愛い。
(あ〜ちゃんにはかしゆかに半ば脅されて協力要請された事は話してません。意外と姑息なのっちです。作者注)
あたしは校門前でうんざり顔のゆかちゃんと、それに全然気付いてないナルシスト君の方に颯爽と近づいた。
「ゆか、何やってんの?(ひゃあ〜、ゆか、だって)」
「…のっち(あんた棒読み…)」
「何、このダしゃ…ダサい奴…」
…ハイ、噛んだ〜。一気に空気はグダグダに。
ゆかちゃんが凍りついた能面の表情を浮かべてらっしゃる…。
ナルシスト君は脳天気に、
「キミ、今噛んだよね!?超ウケんだけど。キミ、美人さんなのに残念だなあ」
…失礼な奴だな…。あ〜ちゃんが正しい、のっちもこんな奴嫌いじゃ。
「有香ちゃんの友達?やっぱ可愛い子は友達も可愛いよね。この間一緒にいたパーマの子も、かわいかったなあ」
…それってそれって、あ〜ちゃんのこと?!ゆかちゃんのみならず、あ〜ちゃんのことまで舐めるように見とったんかコイツ!
「何言ってんの!?」
あたしはガツっと地面を蹴った。
「あ〜ちゃんのことを軽々しく可愛いなんて言うな!」
声を荒げて強い口調で言った。目力にものを言わせてガンをとばす。あたしだって本気で怒ればこんなもんよ。
…だけど。なんか…違ったみたいで。
「そんなマジになんなくても。もちろん俺的には有香ちゃんが一番可愛いからさ〜安心して」
ま、間違えた。あたしはゆかちゃんをこのアホから奪還する使命があったのに。あ〜ちゃんへの愛を叫んでどうする。
ゆかちゃんがあたしを見ながら、ア・ホと唇を動かした。…言い返せない。
このバカバカしいグダグダ状態を打破したのは。
「…ゆかちゃん!」
あ〜ちゃんが飛び出してきた。あ〜ちゃんはゆかちゃんの前に立って、まっすぐ見つめながら、
「ゆかちゃん、うちが一番大事じゃろ?うちはゆかちゃんをそんな奴にとられたくない」
「…あ〜ちゃん」
「うちを選んで」
「…そんなん。当たり前じゃろ?」
急展開にポカンとしてるあたしとナルシスト君(はからずもアホ二人な図)を置き去りに。ゆかちゃんはあ〜ちゃんにゆっくり近づいて。
あ〜ちゃんの頭に手を置いて、撫で撫でした…までは、いい。問題はその先。
…キ、キスしおった…。のっちの目の前で。ゆかちゃんがあ〜ちゃんのほっぺに。あろうことか唇ぎりぎりの頬に。
しかもなんてゆうか、王子様キスだよ…!顎に手をやって持ち上げるやつ…。
なななんなんよ、この状況〜!
ゆかちゃんはぴったりとあ〜ちゃんにくっついたまま、ナルシスト君に意地悪な笑顔を向けて、
「ゆかはあ〜ちゃんが一番大事じゃけえ、残ってるポジションはゆかの下僕くらいじゃけど…」
ゆかちゃんはちらりとあたしを見て、
「下僕ももういるから、やっぱりいらにゃい!」
とひらひらと笑顔で手を振った。
呆然とするアホ男に背を向けて、ゆかちゃんとあ〜ちゃんは盛大にクスクス笑いを始めた。
いつもの
共犯者の笑い。
そう、共犯者。いつだって2人は共同戦線を組んで、いたいけなあたしをからかったり、ちょっと目を離すとゴロゴロべたべたしとったりするんよ…。
でも今回はひどいよ!。
キスすることないじゃん!のっちの目の前で!2人とものっちの気持ち知っとるくせに。
地面をのたうちまわりたい衝動をこらえて、パーカーに手を突っ込んでじとーんと立ってたら。
あ〜ちゃんがあたしの方を振り返って、
「何しよん?変な子じゃね」
「…あ〜ちゃん…。最初からあ〜ちゃん一人でカタついたと思うんじゃけど…」
「だ〜って、こんなにのっちが役立たずとはあ〜ちゃん思わんかった」
「ひ、ひどいよあ〜ちゃん!」
あたしはぶんむくれて、その場にうずくまった。
…もういい。さすがに頭に来た。あ〜ちゃんなんかもういい。ワガママなんて、聞いてあげない。
あ〜ちゃんとゆかちゃんのいちゃいちゃに引きずり込まれたようなもんじゃん。のっち一人、アホ扱い…。
「の〜っち」
あ〜ちゃんの甘い声。ふんだ。もうその手にはのらん。
「のっちはダメダメで全然役に立たんかったけど」あ〜ちゃんは歌うように続けた。「あ〜ちゃんのことで怒ったのっちはカッコ良かったけえ」
あ〜ちゃんはうずくまってるあたしの肩に手をかけて。
チュ、とあたしの額にふわりとキスをした。
そして憎たらしいほどご機嫌な声で、
「これからゆかちゃんとお茶して帰るけど、のっちが来んかったら2人っきりでデートみたくなるんじゃけど、のっち来る?」
ああもう。頭に来るなあ。あ〜ちゃんなんか知らん、って言いたいけど。
「…行く」
結局。振り回されることを選んじゃうんだよ。
「じゃあほれ、さっさとついて来んさい。置いてくよ?」
あ〜ちゃんは容赦なくあたしを置いて、スタスタ歩き出した。
ほんと、腹が立つけど。
ご機嫌あ〜ちゃんの弾むような足取りすら、やっぱ可愛く思えて(重症だよね)。
ワガママ姫のお供をすべく、あたしは駆け寄っていった。
終わり
最終更新:2008年10月13日 11:29