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私のなかで、何か大事なものがはずれてしまったのかな。
どんどんとのっちに対してちぐはぐになっている自分がいる。
きっとこれを読んだら困ってしまうんだろうって、解るのに。
のっちの傍で一人泣いた日から、私の中がぐちゃぐちゃになりはじめた。
だってそうじゃなきゃ、こんなメールなんか…。
携帯の画面を見つめたまま1人で頭を抱える。
私らしくない。

最近いつもそう。
傍にいればなんともないのに、離れてしまうと途端に色々な感情に襲われて身動きがとれなくなる。
今日だってメールするつもりすらなかった。
このままじゃのっちが混乱してしまう。
ただでさえヘタレなのに。
しかも、明日は普通に撮影で会わなきゃいけない。
一体どんな顔をすればいいんだろう。
いっそ笑い飛ばしてくれないかな。あ〜ちゃんお得意のツンデレなん、とかいって。
都合のいい考えばかりがぐるぐる巡る。

私はいつのまにここまで好きになってたんだろう。のっちのこと。
誰かを思って身動きがとれなくなるなんてこと、今までなかった。
初めて本当に人を好きになったのに、絶対に実らないなんて。
あまりにもあまりで、少しだけ笑えた。


次の日、私はのっちをさり気なくさけ続けた。
もともと楽屋では私とゆかちゃんがわいわい騒いで、のっちはひたすらゲームをしてるのが普通だから、たぶん誰も気付かなかったとおもう。
それでもたまに、のっちがなんとなく様子をうかがっているのが感じられて、少しひやひやした。
だって、のっちは何も悪くない。
悪いのは私なのに。
私が勝手に好きになっただけなんだから。


「はーい、じゃあお疲れさまでした!」

スタッフさんの声とともに、長かった一日がようやく終わりを告げた。
私は誰にも気付かれないように細く長い息を吐き出す。
誰かを意図的に避けながら過ごすのって、しんどい。
いつも以上に体が重くてぐったりだ。


のっちはゆかちゃんと喋りながら私の前を歩いている。
時折見える白い首筋と、すらりとのびた手足。
彼女はただ歩いているだけなのに、無性にその肩に抱きつきたい衝動にかられて目の前がくらくらした。

あれは、私の。
誰にも触らせたりはせん。
自分の中で誰かが囁く。
私は必死に目に見えない衝動を押さえ込みながら、普通を装う。
滑稽な独占欲。
のっちは私のなんかじゃないし、第一モノじゃない。
でも、どうしても触れたくてたまらない。
あの腕で抱き締められたら、どうなってしまうんだろう。
考えただけでぞくぞくした。
頬にかあっと血がのぼっていくのがわかる。
ダメじゃ、やっぱり私、おかしい。


「…じゃよね、あーちゃん?」

と、突然目の前ののっちが振り返った。

「はぃ?」

思わず声が裏返る。きょとんとするのっち。当然だ。

「えーと…。」

何か言おうと必死に言葉を探すけれど、焦るばかりで言葉が出てこない。
しかも、顔、真っ赤なんに気付かれたかも。
最悪。

「ごめんね、あ〜ちゃん。突然だからびっくりしたじゃろう。」

いつまでもおろおろしていた私に、ゆかちゃんが助け船を出してくれた。
こら、のっち、なんていいながらのっちの頭にげんこつを落とす。
すると、怒られたことが納得いかなかったのか、のっちは首をかしげながら一人で歩いていってしまった。
残されたのは私とゆかちゃん。

「あ〜ちゃん、いこっか。」

まだまごついていた私にゆかちゃんは何も聞かず、手を取るとゆっくりと歩き始めた。
その優しさが、今はとてもありがたい。
だから、その手の温もりを感じながら、のっちと手を繋いだらどんな感じなんだろうなんて思った私は、本当に最低。


楽屋に戻るとのっちはもういなかった。
当たり前だ。あんな態度をとられて。自分だったら確実にふてくされてる。
彼女がいないことに少しがっかりして、でもどことなくほっともした。
だって、一体どんな顔をして会えばいいかわからないし。
ゆかちゃんはのっちがいないことに、特に何も言うでもなく、いつも通りの様子であっさり帰ってしまった。
取り残されたのは私一人。
なのになんとなく、家に帰り辛い。
きっと本当に一人になったらまた弱い私が出てきてしまう。
そうしたら、ますますのっちを混乱させる。


そして案の定、一人になった私はのっちにメールを送った。
内容は、言わずもがな。

自分は本当に救いがたい。


㈫(side A) END






最終更新:2008年10月17日 14:25