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控え室のドアを開けようとしたら、部屋の中から声がした。

『耳元で聞こえるのっちの息が荒いんよ!』
『だってあ〜ちゃんと密着してるんだもん!』

…あらあら、またバカップルの痴話喧嘩ですか。
っていうか、のっちはあ〜ちゃんに何をしでかして逆ギレしとるんよ。
今日は一人ずつの撮影じゃけえ、二人きりの空間ができてオイシイだろうけれどさ。
邪魔したくないけど、ゆかは控え室に忘れ物があるんよね。
まさかエッチなことしてるわけでもあるまい。

仕方なくドアを開けると、そこには珍しくゲームをしてるあ〜ちゃんと、
そのあ〜ちゃんを後ろから抱きしめて手を重ねて、一緒に操作するのっちの姿。

「教えてとは言ったけどそんなことせんでいいんよ!」
「これ、口じゃ説明難しいけぇね。一緒に操作したほうがわかりやすいじゃろっ」

のっちがウィンクする。あ〜ちゃんには見えてないけどね。
…っていうか二人がゆかのこと見えてないみたいだけどね。

のっちにギャーギャー言ってるあ〜ちゃんは耳まで真っ赤だしさ。
それに気づいてるのっちはからかうように更に密着してるしさ。

「…ラブラブじゃね」

呆れたように呟いてソファに座った。

「ゆ、ゆかちゃん…っ!?」

ゆかに気づいたあ〜ちゃんは光のような速さでのっちを引き剥がそうとする。

「あーゆかちゃんじゃ!いつの間におったん?」

そんなあ〜ちゃんを離すまいと強く抱きしめながら、笑顔でさり気なく暴言を吐くのっち。
やっぱ気づいてなかったんじゃね…二人だけの世界は怖いわ。

「のっち、離れんさい!」
「なんでじゃー」
「ゆかちゃんがおるじゃろ!」
「ゆかちゃんおらん時だったらいいん?」
「アホのっち!」
「ぅぐはぁッ!」


繰り広げられた攻防戦。勝敗なんて、する前から目に見えとるわ。
アゴに"あ〜パンチ"を食らったのっちは、アゴを押さえてヨロヨロしながらこっちに来た。

「うぅ…ゆかちゃ〜ん」
「あんたがいけんよ、あんたが」
「なんでじゃ…あ〜ちゃんのことが好きなだけじゃもん」

ゆかの隣で、アゴ痛い〜って涙目になりながらぐったりしてるのっちが言う。

のっちは言葉も行動も、いつもストレート。
時々、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいだ。
多分それが、ツンデレあ〜ちゃんにはくすぐったいんよね。
じゃけぇ素直になれんのよ。のっちはあんまり気づいてないみたいだけど。

でも、わざわざゆかが言う必要は無い。
あ〜ちゃんとのっちのことだったら、ゆかが何も言わなくても2人は大丈夫なんよ。

「へへ、のっち頑張れ」

そう言って、ふて腐れているのっちの頭を撫でると、忘れ物を持って控え室を出る。

「じゃ、行って来るねー」
「行ってらっしゃ〜い」

ゲームしながら、あ〜ちゃんが元気な声で送り出してくれた。
ドアを閉める直前に見たのは、ソファでゴロンとしてるのっち。
のっち、あんたはまったく…。


撮影を終えて控え室に戻る。
おや?今度は痴話喧嘩どころか話し声すら聞こえない。
ちょっと。さっきより入るのをためらってしまうじゃないですか。
のっちはともかく、あ〜ちゃんは節度あるけぇ。まさかこんな所ではね。
きっとあ〜ちゃんはまだゲームをしてて、のっちは寝てるんだ。うん。


恐る恐るドアを開いて、少しだけ出来た隙間から中の様子を伺う。

…ドアの隙間から見えたのは、ソファでぐっすり眠るのっちの頭を膝に乗せて。
優しくその髪を撫でているあ〜ちゃんの姿。
起こさないように、そっとのっちに触れている。

(うわあ…)

その光景に思わずドキドキしてしまう。
のっちの髪を撫でるあ〜ちゃんは、とても柔らかい表情をしている。
微笑んでいるようで、切なそうな、普段は見ない表情。
のっちを愛しそうに見つめる、優しく細めた目。

あ〜ちゃんがのっちの前髪をそっと分けて、おでこにキスをした。
一瞬、見てていいんだろうかと思ったけれど、その空間に捕らえられて動けなかった。
軽く触れるだけのキス。顔を上げたあ〜ちゃんの頬はほんのり赤く染まっている。
"のっちが好き"っていう気持ちが、いっぱいいっぱい伝わってくる。

…ほらね、ゆかが何か言ったりする必要なんかないんよ。
あ〜ちゃんにはあ〜ちゃんなりの愛情表現があるんじゃもんね。

あ、のっちが起きた。そしてあ〜ちゃんに殴られた。
会話は聞こえないけど、多分起きぬけにチューをねだったとかそんなとこじゃろ。
あんたさっきおでこにしてもらってたんよ、って言ってやりたいわ。
また聞こえてきた痴話喧嘩。のっちは相変わらずじゃね。
…本当は、そんなのっちもあ〜ちゃんは愛しいんだ。

ゆかは、好き合ってる2人をみて不安になったり落ち込んだりはせん。
あ〜ちゃんものっちも、"3人でPerfume"ってわかってくれとるから。
だから、ゆかに2人の関係を教えてくれたんだと思っとるよ。

のっちがあ〜ちゃんを押し倒したところで、部屋に突入した。

「コラァのっち!あ〜ちゃんに何しとるん!」
「ん?のっちなにもしてないよ」
「……」

ゆかが怒ると、笑顔でとぼけるのっち。
真っ赤な顔を両手で隠すあ〜ちゃん。

いつもの光景じゃね。
言葉では言い表し辛いけど、とても心地良いんよ。

…じゃけぇ。ゆかはこれからもこの距離で、
ずっとこの愛しいバカップルと一緒にいたいなぁと思うのです。






最終更新:2008年11月04日 14:31