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Side N
あ〜ちゃんが最後に歌った曲。
あれはきっと、あ〜ちゃんが例の人に向けて歌ってたんだと思う。
歌詞がそんな感じの内容だったから。

すごく気持ちがこもってて、胸の辺りがぎゅってなって。
ホントに好きなんだなって思ったら、ちょい切なくなっちゃった。

おかげで、一度もあ〜ちゃんの方を見れなかった。
ただ一つだけ、なんであんなに辛そうに聞こえたのか。
まるで叶う事ないみたいな切なさを感じたんだろう?

「あ〜ちゃんの好きな人って…どんな人?」

あ〜ちゃんと一緒の帰り道。
唐突に口をついて出た言葉に、ビックリしてるあ〜ちゃん。そりゃそうだよね。

「ぁの、ほら、最後に歌った歌。あれってその、あ〜ちゃんが探してた人のことなのかなって…。」
「あ、そっか。ゆかちゃんとの事聞いてるなら、それも聞いてるよね?」
ちょっと苦笑いのあ〜ちゃん。

「う〜ん、どんな人か〜…。」
少し考えるあ〜ちゃん。
「ん〜、優しいかな。あとはぁ、なんだろ。普段そうじゃないけど、時々カッコイイみたいな。へへw」
照れながら教えてくれるのが、また可愛くて。

「じゃあ、いい人そうだね?」
「うん。」
「上手くいくと良いね。」
変な人じゃないみたいで良かった。


「ありがと。」
へへっと笑った後に、予想していなかった言葉。
「…でも、たぶん告白とかは、しないと思う。」
どういうこと?

「え?な、何で?彼女とかいるの?」
あ〜ちゃんは、ふるふると首を振って
「いないけど、いつも一緒の子が居るの。きっとその子も、好きだと思うから。」

「で、も、付き合ってるんじゃないなら、告白ぐらい…。」
「しなぁいの〜。一緒にいる子のことも、あたし大好きだから。良いの。」

何も言わなかったけど、納得のいかない顔をしていたら。
「そんな顔しないでよぉ。…はぁ。それに、あたし前その子に、辛い思いさせちゃって…。
だから、その子に上手くいって欲しいの。」
ちょっと困った笑顔で、そう説明してくれた。

三年間…。その間にも、想いは募ってるだろうに。
それでやっと見つけたのに、それでもその子を優先しちゃうなんて。
どれだけ、この子は悩んだんだろ。
だから、あんなに辛そうに歌ってたんだ…。

「あ。これゆかちゃんには内緒だよ?きっと怒られちゃうから。」
いつもの調子で、人差し指でシィーってしながら言ってくる。
「…ん。」
色々、言ってあげたいけど、なんせ言葉が出てこない。
しかも、なんか泣きそうなあたし…。

「んで?難しい顔してるのっちはいないの?好きな人。」
むにっと、両方のほっぺを引っ張られて
「ほぇ?」
「のっちばっかり聞いてズルイぃ〜。…ふへ、のっちの顔面白い。」
さらにむに〜っと引っ張りながら、自分の気持ちとあたしの気持ちを変えるように笑うあ〜ちゃん。

おかげで泣かずに済んだけど。
「あ〜ひゃんが、ひっはっへふんれしょ?」
「へへへ♪そ〜でしたぁ。」
あ〜ちゃんがぱっと手を離したほっぺを擦りながら。


目の前に。
「ぅぅ…いるよ。好きな人。でも、その人は違う人が好きで…。だから片想い。」
解ってるのに、なんでどんどん好きになっちゃうんだろうね。

「そっかぁ〜。のっちも片想いなんだ…。」
あたしの気持ちを気にしてか、少し寂しそうに笑うあ〜ちゃん。
でも、すぐにぱっと表情を変えて。

「じゃあさじゃあさ!片想い同士、公園でガンガン遊んじゃう?」
「ぅえ?公園で?」
「そぅ。お金掛からないで良いでしょ?」
「あ、ま、まあ…ね。」

「じゃあ、決まり!行こ行こ。」
あ〜ちゃんは、あたしの手を引っ張って、朝来た公園にやってきた。
日も暮れかかって、この時間は子供たちも帰って誰も居ない。

ということで、二人で公園を思いっきり堪能。
滑り台にジャングルジム、ブランコなどなど…。

こんなにわーわー、きゃーきゃー言ってはしゃぐのも久しぶりで、結構楽しい。
最後に、水道の蛇口で水の掛け合いに…。

それを失敗したあたしは、思いっきり自分に水を掛けてしまって顔の辺りがびしゃびしゃ。
それを見て大笑いのあ〜ちゃん。

「うはw、ちびたぃ。」
そんなあたしに、もう、何やってるの〜。って言いながらハンカチで拭いてくれる。

「のっち、面白すぎ。…ホント、面白すぎだよぅ。」
あ〜ちゃんの顔を見ると、笑いながら目に涙を浮かべていて…。

面白過ぎて…だけじゃないよね?たぶん。
だからあたしは、あ〜ちゃんの頭にぽんぽんと手を置いて。
「あ〜ちゃん…泣く?」
そう聞いていた。


「大、丈…。」
泣きそうなのを堪えてそう言いかけたあ〜ちゃんを、無意識に抱きしめてしまって。
「いいじゃん。ゆかちゃんには内緒にしとくからさ?泣いちゃいなよ。ね?」
出来るだけ優しくそう言うと

「のっちぃ…のっちぃ…っ。」
何度かあたしの名前を呼んでから、しがみ付くみたいにして、声は上げずに泣き出したあ〜ちゃん。
あたしには、こんなことくらいしか、君が一人で泣かないように、側にいるしか出来ないから。

時間にしたら、ほんの数分なんだろうけど。
何もしゃべらずにいる時間は、少し長く感じた。

そして、涙がだいぶ落ち着いてきたあ〜ちゃんが話し出す。
「…ありがと、のっち。」
その声に、抱きしめていた腕を緩めてあ〜ちゃんに視線を移すと、ふいっと横を向かれて。
「あんまり見ないでよ。恥ずかしいから…。化粧もとれてるし…。」
手で頬を拭いながら、恥ずかしそうに言う。

「あ、ごめんごめん。」
でも、ちょっと見てみたいかも。あ〜ちゃんのすっぴん…。
「それから、もう大丈夫だから、そろそろ〜。」
「ん?」
「離して?」
「……ぅあ!ご、ごめん!」

しばらくの思考の末。
ずっとあ〜ちゃんの肩に手を置いていたのに気付き、慌ててあ〜ちゃんから離れる。

「のっち、慌てすぎだってw」
あ、いつもの笑顔だ。

そうだ。今はこの笑顔を守っていこう。それが、きっと今出来る事だ。

この日から、数日が過ぎ。
大学ではいつもと変らない、あ〜ちゃんの姿にほっと安心して。

急にあ〜ちゃんが、妹のちゃあぽんを連れて家に遊びに来たいと言われてテンパったり…。
ちょっとしたハプニングもあったけど、楽しかった。

そんな感じで過ごしていたんだけど、一つ気になることが…。
あの日から、ときどき考え事をしてるようで、ぼーっとしてるゆかちゃんを見る。
かと思えば、急にジッとあたしの方を見てたり…。

あ〜ちゃんとも話せてるみたいだし。どうしたんだろ?
一回聞いてみたけど、何が?とか、ちょっと考え事。って言われて、さらりとかわされてしまった。

まあ、何もなければ、それで良いんだけど。


—つづく—






最終更新:2009年01月24日 21:26