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テレビ番組収録前の控室。
一番早く着替え終わった私から少し離れたところで、あ〜ちゃんが着替えている。
私服も衣装もワンピースだからもっと早くていいはずなのに、なぜかあ〜ちゃんは一番遅い。
今ようやく私服を脱いだところだ。
何年もかけて見慣れた下着姿。私はいつものように行儀悪く背もたれを前にしてイスにまたがり、いつものところをじっと見た。
うーん、やっぱり…
「どこ見てんの、のっち」
あまりこのタイミングで話しかけられたことがないので、私はきょろきょろと声の主を探してしまった。
「隣だよ」
「あたっ」
知らない内に着替え終わり、隣のイスに座っていたかしゆかから頭にチョップをもらった。
「で?なにを見てるんですか〜」
こういうときのかしゆかは正直言ってしつこいので、私は素直に視線を戻す。
かしゆかは私の顔に頬が触れんばかりの至近距離に近づき、視線を辿った。
「んん〜?…もしかして」
これはバレたに違いない。
「そうそのもしかして」
まあ別にいいんだけど。向こうまでは聞こえないだろうし。
「…あ〜ちゃんの、胸?」
「いえっさー」
私は胸から目を離さず、かしゆかに向けてグッと親指を立てた。さすがわかってらっしゃる。
「ふ〜ん。どうりでいっつもね〜。ふ〜ん」
おぉ、いつもの私の行動に気づいていたのか。
と、ここまではよかったのだが。
かしゆかの口元がアヒル口になったのを見て、私は5秒前の自分を殴りたくなった。やばい。やばいぞ。
「あ〜ちゃーん!のっちに胸見られとるよ〜!」
「ちょおおおっっとぉぉおおい!!」
「めっちゃ見られとるよ〜!」
予想通り、アヒルかしゆかが満面の笑みで、火種を投じた。
「へ?うっそまじで!」
あ〜ちゃんはダンスのターン並の速さで衣装を身につけ、なおかつ両腕で胸を隠した。
しかも腰を引いて微かに後ずさりまでしている。
「なになに!?なんなの!?」
「いや、別に、女の子同士なんだから見たっていいじゃん」
私はさも当然のように言い放った。というより、当然だと思う。
それにそんなに嫌がらなくてもいいと思うんですが。軽く傷つくんだけど。
「いやまぁ、そうじゃけど」
我に返って納得しかけたあ〜ちゃんを、かしゆかが焚き付けた。
「でもあ〜ちゃん、のっち毎日毎回見とるよ。ニヤニヤしながら」
「なっ、ニヤニヤなんてしてないよ!!」
この女、完全に楽しんでる…!
「え、まじ?…ってか、毎回見とるところは否定しないんね」
「あ」
しまった。
ますます胸をぎゅっと抱えて後ずさりするあ〜ちゃん。あの表情は絶対…
「のっち、キモい」
はいやっぱり言われましたー。キモいいただきましたー。
しかしこのままでは私がただの変態みたいではないか。
別に変な意味で見ていたわけではなくて、客観的に観察してただけだし。そもそもだね。
「だってさー、前から思ってたんだけど、あ〜ちゃんの胸って…なんていうかこう…」
なんと表現したものか。私は普段の3倍速で頭を回転させる。


結論から言うと、あ〜ちゃんは胸が大きい。間違いない。そりゃ巨乳ってほどじゃないけど、なんだろ、なんか目立つっていうか。あ、そうだ、ギャップだ。あ〜ちゃんて顔がすんごい可愛らしくて、睫毛長くてしかもほんの少し垂れ目で笑顔とかちょーもう愛らしい。見てるこっちもつられて笑っちゃうもん。それにDream FighterのPVの上目遣いとかやばい破壊力でしょ。ザ・女の子!って感じ。なのに、なのに、なにあの腕で軽く抱えられたときの胸の大きさ!顔はちょっと幼さが残る可愛い女の子なのにその胸!?みたいな。しかもあ〜ちゃんの衣装って胸の下で切り返しついてること多くて、そんときはまじ、やーばい。誰かの陰謀としか思えないくらい胸ばーんって強調されちゃってもう顔とのギャップやばいよギャップ。GAME liveのTake me Take meとか顔だけ見てたら綺麗な女の子がちょっと頑張って背伸びしてますって感じであんまセクシーじゃないけど、胸がね、もうね、なんでそこだけ!?って感じで、むしろ胸を中心に踊ってる!?みたいな感じで、なんていうかもー…


「けしからんよねっ!」


…あれ?
なんか、あ〜ちゃんが硬直してる。
隣のかしゆかはなぜか、吹き出して笑い始めた。
私の直感が警報鳴らしてる。早く訂正しないと。
「っていうか、だからこう…なんといいますか…」
私はさらに5倍速で頭を回転させる。


ギャップ、そうギャップなんだよね。しかも大きいくせに、絶対それを見せつけるような服着ないしね。いやあの切り返しワンピースは可愛い女の子向けに作ってるものが、たまたま想定した以上に胸の大きい女の子なあ〜ちゃんとコラボっちゃってああいうことになってるけど、別にこう、谷間がチラ見するような、Vネックの深いニットとかもあんま着ないからね。だからこう、常に隠されてるっていうか、大きいのにガード固いぞ!って感じで、それがまた見てると色々想像しちゃう原因になってるんだなぁ絶対!愛らしくて幼い顔も胸のガードに確実に一役買ってて、なんていうの、中を見たいんだけど見たくない、みたいな。いや私は下着姿知ってるけど、普段胸見るときは絶対下着とか想像しないからね!したいけど、想像しちゃ駄目みたいな。ガード固いからこそ、しかも可愛い顔とギャップあるからこそ、そしてお姉さんでちょっと母性まで感じさせちゃうあ〜ちゃんだからこそ、ストレートな想像なんてしちゃ駄目で、なんつーか、そのギリギリのライン?の想像を膨らませちゃう!?みたいな。だから服脱いだらどうなってんのかなあぁでも脱がせちゃいかんいかんみたいな感じで、もーすんごいこう…


「夢あふれるって感じっ!」


…おぉ?
なんか、あ〜ちゃんの顔、怖くなってる。
隣のかしゆかはもはや、お腹抱えて笑ってるし。
私の警報はむしろ止んでるけど。
あ、これやばい。
もう手遅れ、か?

私はそれから丸2日、あ〜ちゃんに無視され続けた。
褒めたつもりだったんだけどなぁ。


ーーーーendーーーー




最終更新:2009年01月24日 21:37