ふとした時に甦るあの夏のざわめき。
今もまだ色褪せる事なく昨日の事のように思い出せる。
結局あれ以来のっちには会わないでこっちに戻って来た。
毎日あたしに会いに来てたのっちが来なくなって少しホッとしてる自分もいた。
あの日あの時のっちは謝ってたけど、違うんだよ。
泣いてた理由は他にあるの。だから気にしなくていいんだよ。
って、それを伝えて上げられなかった事は心残りだけどあたしの中ではいい思い出だから…。
そう思ってた。
あの掲示板の文字を見つけるまでは。
心がざわついて初めて気付いた本当の想い。
触れるだけの軽い口づけ……。
唇を指で触れながらその感触を思い出してみると、いつも決まって胸を締め付けられるから、
また蓋をして日常へと戻ってた。
思い出になんか出来てなかったんだあたし…。
『ねぇ聞いてる?』
K『あ、ごめん。で何?』
大学に入って二ヶ月が経とうとしていた。
新しく出来た友人とともにお昼ご飯を食べる。
よくある風景、でもあたしの目はそれを捕らえていなかった。
無意識で周りを見渡す毎日。
生徒数が多くて毎日見た事のない人が出てくる。
淡い期待と濃い絶望を抱きながらあたしはこのまま過ごして行かなきゃいけないんだ…、と思うと逃げ出したくなった。
でも唯一の手掛かりから逃れられる訳もなくて心ここに在らずな毎日。
『今度の合コンの事だよ!』
K『あぁ…。あたしめんどいからパス。』
『頭数足んなくて困ってんのよっ、ねっ!お願いっ。』
K『………今回だけね。』
『マジ助かるありがとうっ!』
この際彼氏でも作ってみようかな…。
ずっと想い続けてるのが今は接点のない記憶の中の女の子、ってのも我ながらイタイし……。
気を紛らわすのにもちょうどいいし。
忘れさせてくれるなら何でもいいや……。
合コン当日、あまりのあたしの気合いのなさに周りの友達はギャーギャー騒いでたけどどうでもよかった。
彼氏なんて欲しくないし。
じゃあ何しに来たの?
そう思うとますます帰りたくなって仕方なかったけどあたしの気持ちなんてお構いなしに時間は過ぎていくもので。
『じゃあ一人まだ来てないみたいだけど乾杯しようか?』
相手の学校の男の子が乾杯の音頭を取る。
もちろん未成年なあたしはジュースで乾杯。
その後軽い自己紹介で名前だけを言っていく。
『ねぇ、ゆかちゃんて呼んでいい?』
男女交互に座ってるせいで隣の男の子はもう馴れ馴れしくしてくる。
K『あー…、お好きにどうぞ。』
『お、
ツンデレ系?』
ニヤニヤしてるその顔に鳥肌が立った。
もう帰りたい……。
『遅くなりましたっ。ごめんなさい。』
声のする方を見ると、あたし達のいる空間は簡単なパーティションで区切られていて、それから一人の女の子の姿が見えた
例に漏れず彼女も軽く自己紹介をする事になった。
だけどやる気なんかないあたしは自分の世界に引きこもってて視線をそこに留める事はなかった。
なんか場の空気が乱れてる今なら帰れそうな気がするなぁ……。
なんてことさえ考えている始末。
そんなあたしがもの凄い勢いで立ち上がるまでそう長くはかからなかった。
(続く)
最終更新:2009年01月24日 22:11