Side A
ゆかちゃんからメールが来て。
『あ〜ちゃんと話がしたいから、終わったら連絡して』という内容だった。
その通りに講義が終ってからメールを送ると、構内の隅にあるベンチで話す事になった。
ちょっとした木陰で、わりと静かな場所だからなんか落ち着く。
ゆかちゃんとのっちが良くココに居る。
いつも二人で楽しそうにしてて、ちょっと羨ましく思う事もあった。
「あ。あ〜ちゃん。」
先に来ていたゆかちゃんが、あたしに気付く。
あたしもゆかちゃんの隣に座って、話し出す。
「ゆかちゃんずっと待ってたの?」
「メール来るまでフラフラしてたから、気にしなくて良いよ?」
「そっか。それでぇ、話って?」
「あぁ、うん。その〜、例の人のことなんだけどさぁ…。」
ドクッと大きく反応する鼓動。
ゆかちゃんが切り出してきた例の人という言葉に、動揺してしまう。
「ん?何?」
少しだけ戸惑っている様なゆかちゃんに、冷静を装って聞き返す。
「誰?」
あたしは答えられなかった。
だって、答えたしまったら、また…。
「教えてくれないの?」
「うん。…ごめん。」
そう答えるしか出来なくて、視線を落としてしまった。
だけど、ゆかちゃんは…。
「じゃあさ。私当ててあげよっかぁ。」
「え?」
あたしはビックリしてゆかちゃんの方を見た。
にっこり笑ったゆかちゃんに、今度はあたしが戸惑ってしまう。
「…でぇ、もし当たってたら、私のお願い聞いてくれるかなぁ?」
ゆかちゃんがそう言うってことは、当たっているという、何か根拠があるんだと思う。
だから、きっとこの賭けはあたしには分が悪いはずなんだけど。
「…いいよ?」
なぜか、そう答えてしまった。
「ホント?良かったw」
「でも、応えられる範囲だからね?」
それだけ付け加えてみた。
「それは大丈夫だよ。」
一息吐いたゆかちゃんが、口にした名前。
それは確かに、あたしが三年間探し続けた人の名前で。
だけどゆかちゃんには、ずっと言わないでおこうと思っていた名前。
だから、あたしは頷く事が出来なくて、だからといって否定する事も出来ずにいると。
「何も言わないってことは、肯定と受け取るよ?」
「ぁ、の…。」
視線だけがあちこち彷徨っちゃって…言葉が続かない。
「カラオケであ〜ちゃんが最後にあの歌…。
いつもその人のこと思って歌ってた歌。あれ歌った時から、ずっとあ〜ちゃんの事見てたから。
間違ってないはずだよ?」
しっかりとあたしの顔を覗きこんでくるゆかちゃん。
あたしは覚悟を決めて、大きく息を吐いて話し出す。
「もう、ゆかちゃんには敵わないな〜。」
へへへぇ。と笑うゆかちゃん。
そこから、色々と聞かれて…。
約束通り、ゆかちゃんからのお願いを聞くことになった。
ゆかちゃんと別れた帰り道。
通り道の公園に、今はすっかり見慣れた姿を見つけた。
ブランコに座りながら携帯をジィーっと見つめて、近づいたあたしに気付かないのっち。
Side N
この間、子供たちと撮ったあ〜ちゃんの写真を見ながら、昨日のゆかちゃんの言葉を考えていた。
あ〜ちゃんに告白かぁ〜。出来るのかな…。
なんて
考え事をしていたら、誰かが近づいてくる気配にまったく気付かなかった。だから。
「なに見てるの?」
突然そう言って、横からヒョイと顔を覗かせたあ〜ちゃんにめちゃくちゃビックリしてしまった。
「あー、ごめん脅かしちゃって。」
「いや、あたしも全然気付かなくて…。」
心臓飛び出るかと思ったよ。
「なんか難しい顔して何見てたの?」
手にしてる携帯に視線を戻すと、あたしは慌てて携帯を閉じた。
「ん?何なになに?そんなに慌てちゃってぇ。もしかして好きな人の写真?」
目をキラキラさせて聞いてくるあ〜ちゃん。
「ぇあ、そのぉ…。まぁ、そんな感じ…。」
本人を目の前に、内心すごいドキドキしながら答える。
「そっかぁ。いいな〜…。」
少し寂しそうに視線を落とすあ〜ちゃん。
「あ〜ちゃん無いの?」
「う〜ん。そういえば無いな〜。」
空いてる方のブランコに腰掛けながら答えてくる。
しばらくの無言の後に。
「…今日ね?ゆかちゃんと話したの。例の人の話。」
あ〜ちゃんの方を見ると、へへっと照れ笑い。
「ゆかちゃんに誰かってバレちゃってたよぅ。で、やっぱりちょっと怒られちゃったw」
指でちょっとって仕草をするあ〜ちゃんが可愛くて。
不意打ちでキュンとしてしまった。
「ははwそうなんだ。実はあたしも昨日、ゆかちゃんにちょっと怒られたんだ。」
「え?のっちが?何で?」
身を乗り出して聞いてくるあ〜ちゃん。
「ちゃんと告白くらいしなさいって。じゃなきゃ前に進めないよって。」
「あはは。じゃあ、あたしとお揃いだね?あたしもちゃんと告白してきてって言われたの。
じゃないと、ゆかちゃんの想いが浮かばれないからって。」
あ〜ちゃんにも言ったんだ。まぁ、そりゃそうか。
そのために、ゆかちゃんあ〜ちゃんと別れたんだもんね。
「じゃあ、あ〜ちゃん告白するんだ。」
「…うん。これからしようかなと思って…。」
「そっか。がんばってね。」
にへって、ちょっと緊張気味の笑顔をするあ〜ちゃん。
「大丈夫だと思うけど、もしもさぁ。断られたら、一人で泣いたりしないで、あたしのトコに来てよ。
なんだったら呼んでくれても良いし。一人で泣かないで?」
あ〜ちゃんの泣ける場所でありたい。
「うん、ありがとぅ。ふへぇ。そういえば、ゆかちゃんにも似たような事言われたw」
「?何て?」
「振られたら、代わりにゆかちゃんが付き合ってくれるって。もちろん冗談だけどね。」
「それ、ゆかちゃんらしいわw」
きっと、少しは本気が混じってるんだろうな。ゆかちゃん。
「あぁーー。あたしも告白しちゃおっかな〜…。」
「のっちぃ、へこんじゃうね。」
「だねw。なんせ片想いだからね〜。…うん。よし!決めた。告白する!」
勢い良くブランコから立ち上がる。
「お。のっちやる気だね〜。がんばれぇ。じゃあ、へこんだのっちは、あたしと付き合っちゃう?…な〜んちゃってぇ。うへへw。」
ゆかちゃんと同じ冗談であたしを励ましてくれる。
「なははw期待しないでおくよ。」
そう言ってあたしは、あ〜ちゃんの前に立つ。
だって、あたしをへこませるのは、君なんだよ?
その動きに疑問をもったあ〜ちゃんが、不思議そうにあたしの名前を呼ぶ。
「のっち?」
あたしは目を閉じて、一度大きく深呼吸してから、真っ直ぐとあ〜ちゃんを見つめる。
「どう、したの?」
覚悟は出来た。
「……好きです。」
飾りも何も無いシンプルな言葉。
あたしにはこれが精一杯。気持ちだけはいっぱい込めて。
「あ〜ちゃんに…、片想い…してます。」
突然の告白に驚いて、言葉が出てこないあ〜ちゃんに。
「ぁの、返事はしないで大丈夫。ぇと、ちゃんと解ってるからさ。…あの、困らせるような事言ってごめんね?」
オロオロしだすあたしを、じーっと見つめてくるあ〜ちゃん。
それでさらにオロオロなあたし。
ようやくニコッとしたあ〜ちゃんに、ほっとする。
「…じゃあさぁ、のっち。困らせたお詫びにさ、例の人の話、聞いてくれる?」
いつもと変らないあ〜ちゃんに、笑顔で答える。
「うん。聞きたい。」
これで、少しは前に進めたのかなぁ?
—つづく—
最終更新:2009年01月24日 22:17