バレンタインデー1週間前。
次の仕事までかなり時間が空くので、あたしたち3人はちょっとオシャレなカフェで一休みすることに。
「あ〜ちゃん、何にする?」
「ミルクティー!」
「ゆかちゃんは〜?」
「レモンティー!」
「んじゃ、店員さん呼ぶね。すいま〜せ〜ん・・・」
可愛らしい若い女の子の店員さんがオーダーを取りに、あたしたちのテーブルへ駆け寄って来た。
「えっと、ミルクティーとレモンティーとカフェオレでお願いします」
人見知りなあたしが、がんばって飲み物の注文をしたら店員さんが何か言いたそうな顔。
「あの・・・Perfume・・・さん・・・ですよね?」
え〜、わかっちゃったw。あっ、三人でいるから目立っちゃう?www。
いや〜、去年からテレビに出させてもらうようになってから、よく声掛けられるんだよね。
でもあたしは基本人見知りなんで声を掛けられてもビビちゃうけど、可愛い子なら別かな?なんてエロオヤジ丸出し?
「あっ・・・はい。一応そうです」
あ〜ちゃんが代表してとびっきりの営業スマイルで答えてくれた。
「あたし、Perfumeのファンなんです!!!いっつもipodで聴いてます!!その中でもチョコレイト・ディスコがお気にです。電車で聴いてると『ディスコ!!』って言いそうになっちゃって大変ですよwwこの間の武道館ライブ行きました!よかったです。めっちゃかっこよかったです。最初の登場の演出まんまと騙されました。あれすごかったですね、誰考えたんですか?今度の代々木も絶対行きますね!キャー実物チョー細い、白い、かわいい!会えるなんてチョーラッキー!mixiとブログで自慢しよ。あっ、握手してもらってもいいですか?」
その店員さんは水を得た魚の様に嬉々と早口で捲くし立てた。
あたしたち3人は圧倒されて握手をすることに。
最初にゆかちゃんと握手。
次にあ〜ちゃんと握手。
で、最後はあたしと握手。
あれ?あ〜ちゃんちょっと機嫌悪い?
いやいや、あたしの気のせいだよね?
うん、そうだ、そうだ、気のせい、気のせい、気にしな〜い。
早口の店員さんが去って言ったら、ゆかちゃんがからかいながら言った。
「あの子、のっちのファンじゃね〜。のっちよかったね。可愛い子がファンなんて」
「えっ!?そ、そっかな?」
「うん。だってのっちだけ両手で握手してたじゃろ?ありゃ、どうみたってのっちのこと好きだって」
言われたあたしはデレっとしてしまい
「げへへ。でもあの店員さんマジで可愛かったよね」
って、調子乗って言ってしまったもんだからさぁ大変!!
あきらかにあ〜ちゃんの雰囲気がおかしい。あれ?毛が逆立ってる猫みたいに見えるんですけど・・・。
やばい!!っと思って、すかさずフォロー。
「あっで、でもねぇ。あ〜ちゃんの方が全然かわいいよ。の、のっちの中れ、一番可愛いのはあ〜ちゃんじゃよ」
あ〜あ、フォローしてんのに噛んじゃった。最悪・・・。
「・・・のっちは可愛い子大好きじゃもんね。この間も街を歩いてる女の子見ては、可愛い〜、可愛い〜って言ってたし!」
「そ、そんなこと言ってたっけ?」
マジで憶えてないよ・・・。
「・・・最悪。憶えてないってことは、無意識で言ってたってことじゃろ!?無意識で出るってことは頭ん中でそういうこと考えとるからじゃろ!」
あ〜、やばいやばい。早くあ〜ちゃんの怒りを納めなきゃ・・・。
「ご、ごめん。もう言わないけぇ。」
「この間もそう言ってたじゃろ!!」
え〜、この間ってどの間?まったく憶えてないよ〜。
「ごめん・・・。謝るから、謝るから、許してくらさい・・・」
「・・・この間もそう言ってた・・・」
えっ、マジでぇ!?なんで憶えてないの自分!!なに?軽い記憶喪失!?
「・・・もうのっちなんて知らん!!さっきの店員さんでも口説いてしまえばいいんよ。あの子のっちのこと好きなんでしょ?だったら即OKじゃろ?可愛い子と付き合えてよかったじゃん」
あ〜ちゃん、そ、そこまで言っちゃうの・・・。
「あ〜ちゃん。ごめん!!そんなコト言わんといてぇ。のっちが一番可愛くて好きなんは、あ〜ちゃんだけじゃ」
「のっちはすぐ『あ〜ちゃん好き』とか『可愛い』とか軽々しく言ってるけど、もうその言葉も信じられん・・・。」
「えっ・・・」
「もう絶交じゃ。のっちにチョコなんてあげん!!」
あ〜ちゃんはギャンギャン怒ってお店を出てってしまった。
ポカーンとなってるあたし・・・。
あー、またやっちゃった・・・。
しかも今回はちょっとやそっとじゃ許してくれなさそう・・・。
どうしよ・・・。
今までのやり取りを完全に傍観してた隣に座ってるゆかちゃんに助け舟。
「ゆ、ゆかちゃん・・・。のっちは一体どうしたらいいれすか?」
「知らん。可愛い子に鼻の下伸ばしてるのっちがいけないんじゃ。自分で考えなさい。ゆかはあ〜ちゃんの見方じゃけ」
マッマジっすか!?鼻の下は伸ばしてるつもりなかったんですけど・・・。
それと元々はゆかちゃんが「店員さんがのっちのファンだ!」って言ったのが発端じゃね?って思ったけど、これ言ったらPerfumeが崩壊の危機になりそうなのでやめた。
とほほ・・・本当にどうしよ・・・。
今年最大のピンチ!?いや、人生最大の大ピンチよ!!
そういえばさっき、あ〜ちゃんが「のっちにチョコなんてあげん!!」と捨て台詞を言ってたような・・・。
チョコ?なんでチョコ?
あっ・・・!!!
1週間後はバレンタインデーだ。チョコレイト・ディスコだよ。デパートの地下が揺れて、教室がダンスフロアになっちゃうんだよ。
しまった・・・どうにかしてバレンタインデーまでにあ〜ちゃんに許しを貰わなければ、手作りチョコをもらえなくなってしまう!!
バレンタインデー前日。
あ〜ちゃんを怒らせてからメールや電話で謝ったけど、ほぼ無視状態。
完全にあ〜ちゃんに無視されてる状態がほぼ1週間・・・。
謝る機会もくれないなんてそうとうだよね・・・。
あ〜、何やってんだろ。タイムマシンがあったら1週間前に戻りたいよぉ。ドラえも〜ん助けてー。
こうなったら贈り物大作戦じゃ!
絶対あ〜ちゃんの機嫌直してもらんだ!!
バレンタインデー当日。
今日はレギュラー番組の収録だけで夕方に終わった。
ゆかちゃんはこれから用事があるっていって楽屋を一目散にして出てった。
なんだ〜?彼氏とデートかぁ?なんて今のあたしには冷やかす余裕なんてない。
必然的に楽屋はあたしとあ〜ちゃんの二人っきり。
あ〜ちゃんは居心地が悪そうにしてそそくさと帰りの準備。
よっしゃ!!ここだ!!やるんだ大本彩乃!!こっから漢の見せ所じゃ。
「あ〜ちゃん」
できるだけ優しい声で呼んだ。
「・・・」
当然、あ〜ちゃんは無視。
「あ〜ちゃん」
「・・・」
「あ〜ちゃん。あ〜ちゃん」
「・・・・・・」
「あ〜ちゃん。あ〜ちゃん。あ〜ちゃん・・・返事してくれるまで呼び続けるよ」
「・・・・・・・・・・・」
げっ、あ〜ちゃん楽屋から出ようとしてる!
それはいかん!!とっさに、あ〜ちゃんの腕を掴み取った。
「・・・・もう何なん?さっきから人の名前連呼して、バカじゃ・・・」
あん、バカって言われちゃったけど、1週間ぶりにあ〜ちゃんがしゃべってくれた。嬉しいw。
しかも掴まれた腕をブンブンと振り解こうとする動作がとてつもなく可愛い。ぐふふw。
嬉しすぎて思わずニヤけてしまうあたし。
「・・・何ニヤけとん?変態・・・」
はい、バカの次は変態いただきました〜。
やばい、やばい、今日は変態のっちじゃなく、漢前なのっちでいかなきゃいけんのに!
顔を漢前に直して、
「あ〜ちゃん、帰る前にのっち渡したいものがあるけぇ。ちょっとだけでいいから時間ちょうだい?」
「・・・なに?早くしてよ・・・」
よし、あ〜ちゃんを足止めしたぞ!第一段階クリア!
あたしは中身が散乱してるカバンを漁って、あ〜ちゃんにかわいく包装された箱を渡した。
「はい。あ〜ちゃん」
「なにこれ?」
渡したのは、あたしがあ〜ちゃんへの愛をいっぱい込めて作った手作りのチョコレイト。
「ほら今日バレンタインだし、なんか今年男の人が女の人にあげる『逆チョコ』ってのがあるんだって。
だからこれはのっちからあ〜ちゃんへの『逆チョコ』
って、言ってものっち男の子じゃないけどw
去年はあ〜ちゃんが手作りチョコくれたでしょ?そのお返しも込めてね?」
ちょっとあの店員さんみたく早口になってしゃべってしまった。でもめずらしく噛まなかった〜。さすが漢前モードじゃ。
あ〜ちゃんはチョコの箱を受け取ってくれたけど、俯いたまま。
あれ?うそ?贈り物大作戦失敗?
不安になってきた時、あ〜ちゃんがポツポツとしゃべり出した。
「・・・のっちが作ったん?」
「うん!!」
あたしは飼い主に呼ばれた犬みたいな返事をした。
おっ!!作戦成功?あ〜ちゃんの機嫌直ったかなって思ったら
「・・・バレンタインデーのお返しは普通、ホワイトデーにするんじゃろ。」
「あっす、そうだよねぇ、たはは・・・」
やべ、乾いた笑いしか出来ん。
「・・・物であ〜ちゃんの機嫌取ろうとしてるんじゃろ?あ〜ちゃんは物で動く子じゃないけ・・・」
えっウソ!?よ、読まれてる・・・。あ〜ちゃん実はエスパー?それとも上級者向きの高度な
ツンデレ!?
さすがあ〜ちゃん、のっちの一枚も二枚も上手じゃ。
でもここで負けたら苦労して作ったチョコが無駄になってしまう。
いやいや、あ〜ちゃん自体を失ってしまう最悪な展開になりかねない。
こうなったら作戦Bパターン開始!
再度、あ〜ちゃんの腕を掴み、強引にあたしの方へ引っ張った。
「なっ・・・。いたっ、何するん!?」
また怒られちゃった・・・。
あたしはあ〜ちゃんのふくれたぽっぺたに、小鳥みたいな軽いキスを落とした。
「!?」
驚くあ〜ちゃん。
そんなあ〜ちゃんを見つめながら、あたしはしゃべりだした。
「ごめんね、あ〜ちゃんが怒るの無理ないよね。のっちがバカだから、あ〜ちゃんに不安な思いさせちゃって。」
あ〜ちゃんは視線をそらし俯いた。それでもあたしは言葉を続ける。
「たしかにのっちは他の女の子を可愛いって言っちゃうけど・・・誰かの為に何かしたいと思ったり、キスしたいと思ったり、だ、抱きしめたいと思うのは、あ〜ちゃんしかいないんだよ」
「のっちには、あ〜ちゃんじゃなきゃダメなんよ。他の子じゃダメなの。あ〜ちゃんとしかキスしたくない。」
俯いたあ〜ちゃんの顔を覗き込んで、唇に今度は子犬みたいなかわいいキスを送った。
見る見るうちにどんどん、あ〜ちゃんの顔がイチゴみたいに真っ赤に染まった。
「・・・あ〜ちゃん、のっちのチョコ用意してないけぇ・・・」
小声で照れくさそうにつぶやいた、あ〜ちゃん。
おっ。これは機嫌直りつつある?
えっ・・・てか、ほんとにくれないんだ・・・。ちょっとショック。
でもチョコよりもあ〜ちゃんの方が大事!!
もう一押しだ!がんばれ自分!!
あ〜ちゃんの腕を放し、今度は両手を握った。
「あ〜ちゃんの手作りチョコ食べれないのは残念だけど、のっちはチョコよりも甘い甘いあ〜ちゃんを食べれればそれでいいんよ?」
と、あ〜ちゃんの右手の人さし指の先を少し舐めながらおねだり。
またあ〜ちゃんの顔が真っ赤に。今度は耳も首もイチゴ色に染まった。
やべ、目の前の真っ赤なイチゴちゃんなあ〜ちゃん食べたいって変態モードなりそうになった時いきなり抱きつかれた。
ビックリした。
のっちに抱きついてきたってことは、あ〜ちゃんのご機嫌ななめは直った!?
某海外ドラマの日本人キャラのようにヤッターって心の中で叫んでたら、あ〜ちゃんが真っ赤な顔して上目遣いで、
「・・・虫歯になっても、あ〜ちゃん知らんよ?」
!!!!????
目の前にいるのは天使ですか???
な、なんだってぇぇぇ!!そういう切り返し!?
可愛い、可愛すぎるよ、あ〜ちゃん。
そうか、これがツンデレのデレってやつなのか!?
ぐはぁwwすげーすげーよ、あ〜ちゃん。そういう手使っちゃうあ〜ちゃんに勝てる訳ないじゃん。
「・・・あ〜ちゃん」
「えっ?」
あたしはいてもたってもいられなくなり我慢できず抱きしめて、ライオンみたいな激しいキスを降らした。
急にキスされたあ〜ちゃんはビックリしてあたしの肩を叩いてる。
それでもあたしは止めなかった。
やっと長い長いキスが終わると、あ〜ちゃんにまた怒られた。
「んっ・・・はぁ、はぁ・・・のっちのバカ!!ガッツきすぎ!ここどこだと思っとるん?」
本日バカ2回目のあたしは子猫のように小さくなり謝った。
「ごめんなさい・・・。だってあ〜ちゃんがあまりにも可愛いかったから」
あ〜ちゃんがあたしのほっぺたを擦りながら、あやすように優しく答えた。
「・・・でもここは楽屋じゃけ。他の人が入ってきたら大変じゃろ?」
「うん、ごめん。」
あたしはまた素直に謝る。
「もう、のっちの『ごめん』聞き飽きたわ。もういいんよ。のっちの気持ちわかったから、あ〜ちゃんもう怒ってないけぇ」
「えっマジでぇ!?」
よぉぉし!!許しを得ました!!作戦Bパターン成功!!さすがのっちやれば出来る子!!
「うん。のっちチョコありがとね。作るの大変だったでしょ?」
「ううん。あ〜ちゃんのこと思って作ったから全然苦じゃなかったよ」
「のっちハノ字眉になっとるよ?」って言ってあ〜ちゃんが今度は首に抱きついてきた。
そして耳元で「のっち、大好きじゃよ」なんて言われから腰がくだけそうになった。
ヤァァバイ!!ツンなあ〜ちゃんも魅力的だけど、デレなあ〜ちゃんは破壊力抜群じゃ!!
「うん。のっちもあ〜ちゃん大好きじゃ」って負けじとお返しにあ〜ちゃんの耳元で囁いた。
「のっちのおうちで一緒にチョコ食べよ?」ってデレあ〜ちゃんが言った。
「うん!!」あたしは満面の笑みで答えた。
その夜、ライオンと化したのっちはベットの中でチョコと甘い甘ーいデレあ〜ちゃんを一晩かけてじっくりと、味わったとさ。
のっちが虫歯になったかどうかは、あ〜ちゃんとのっちだけのヒ・ミ・ツ。
—Finー
最終更新:2009年02月12日 15:48