SIDE-N
楽屋で自分達の出番を待つため雑誌を広げたが、
さっきから彼女の言動が気になって仕方がない。
前なら笑えた冗談も、その裏にある意味が手に取るようにわかる。
『…いつから知ってたの?』
『ちょっと前から。』
彼女もそうなのだろう。
私の彼女への言動が、本当はどういう意味なのか。
余りにもストレート過ぎて、表も裏もないのだけれど。
「あ〜ちゃん、爪可愛いー」
「じゃろ?昨日ちゃあぽんとネイルサロン行ったんよ」
「へーいいなぁ…ゆかも行きたい」
彼女は何気なく指を絡める。
たったそれだけなのに、何だかいやらしく感じた。
私は中2男子か、と心の中で突っ込む。
「じゃあ今度一緒に行く?」
「えーいいの?!やったぁ!」
一層彼女は指を強く絡めた。
「のっちも行かん?」
絡めた指はそのままで、彼女は私に話をふった。
「んー…どうしよっかなぁ」
読んでもいない雑誌をパラパラめくる。
視界の端に彼女の指が動くのが見えてしまった。
「ひゃっ…!」
その声に思わず顔を上げる。
「ちょっとゆかちゃん、くすぐったい!」
「ごめんごめん」
パッと離れた手に安心するが、何故か心臓がうるさい。
「で、どうするん?」
「えっと…じゃあ行きまふ。」
「ふはっ、噛みよった!」
手を叩いて笑う彼女を少し恨めしく思いながら、雑誌を閉じた。
丁度そのときスタッフさんから呼ばれる。
「はーい!宜しくお願いします!」
三人とも椅子から立ちあがる。私は雑誌を元の棚に戻しに行く。
ふと背後に気配を感じる。
「のっち行くよ」
「うん」
さっきまで彼女に絡まっていた指が私に絡まってきた。
指先が熱い。
「ほーら。」
身体が近づく。
「はよせんと、」
ふと今朝の風景と重なる。
「あ〜ちゃん、ゆかのものにしちゃうよ。」
耳元で囁かれる。
ライバルと言えば聞こえが良いが、
共犯者だと言われたことを思い出した。
共犯者、ねぇ。
妙にしっくりくるのが可笑しかった。
つづく
最終更新:2009年02月23日 03:51