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ゆかちゃんサイド。

「!」
起きた瞬間背筋がビクッとなった。
だって、だって…目の前に、あやちゃんの顔が、ある、ん、だもん。
心臓がバクバクと脈を打つ。血管が破けそうないきおいで、血が体内を巡るのを感じた。
白くてやおそうな肌と桃色でプルプルの唇。
まるで絵画の世界のような鮮やかさにうっとりする。
もしかして夢なんじゃなかろうか。

「んん…あ、ゆかちゃん…おはよう。」
「あ〜ちゃん…。」
「んぁーごめん寝とったね。
昼休み、教室いったらのっちがゆかちゃんは朝からおらんゆうから…。」
「あー。」
なるほどね。
流石あやちゃん、勘が鋭いってか、メールだけののっちと違って行動力あるわ。
「ゆかちゃん具合悪いん?先生おらんのじゃけど気持ち悪かったりせん?」
「うん、大丈夫。あ〜ちゃんありがとう。」
というか最初からどこも悪くなんかない。
ただ、朝からなんとなく気が向かなくてサボっていただけ。
むしろ心配してあやちゃんに触られたおでこが一番熱くてくらくらしそうなくらいだ。
あやちゃんがこんだけ心配してくれるなら毎日さぼっちゃいたいなー。
「てか、今何時…う゛ぁ!もう五限目始まっとるじゃん。」
時計を見たあやちゃんは顔色を変えた。
「どうしよ、確か体育だっけ。うあー絶対走らされる!」
頭を抱えて焦る姿を見てふといい考えが浮かぶ。でも真面目だからなぁ、あやちゃん。
「…さぼっちゃおーよ。」
まぁ言うだけならただよね。


「え!」
固まっちゃった。や、驚きすぎでしょ。
もしかしてゆかと二人っきりがいやとか?うわぁショック。
「そーしょっかな。」
固まった割にはあっさり決めてゆかの隣のベッドに寝転がるあやちゃん。
お互い顔を合わせると笑いが漏れた。
「あ、でもこんな近くにおったら、ゆかちゃんの病気移されそー。」
おどけた表情もかわいいなってそう思う。あやちゃんはいつだってかわいいけどね。
「残念、ゆか別に病気じゃないから。」
「え〜なんなんよそれ。」
「なーんか朝からダルくってさ。」
「ふーん。」
「バレンタイン疲れってやつ?
もーさ、みんなにチョコ配らんといけんけぇ前日から準備が大変でさぁ。」
「あー…そっかぁ。」
おろ?
恋ばな大好きあやちゃんのテンションが下がったぞ?
話題変えないと!
「あ!あと昨日だってあ〜ちゃんの誕生日じゃん。
のっちが1ヶ月も前からはしゃいでサプライズしようやらなんやらってうるさくってさー。
もーほんとあの空豆には困っちゃうよね。」
そうサプライズ、たかしげとちゃあぽんにあやちゃんを連れ出してもらって
その間におじさんおばさんと部屋を飾り付けて…
あのときのあやちゃんの顔といったらのっちじゃないけど思い出すだけでにやけちゃうし。
「そーじゃったね…。」
ん?
なんか投げやりだぞ?
どうした!
え?
バレンタイン…誕生日…
鉄板ネタじゃない?
ゆかなんかミスったっけ?
ええー?

焦って隣のあやちゃんを見ると泣いてしまいそうな顔をしてるから余計に焦る。
胸がキュッて締まって潰れるような痛みを感じた。


「なんかゆか悪いこと言ったっけ?」
「え…あ…ちがっ。」
ポロリと一筋涙が溢れた。
「うっわ、最悪。ゆかちゃんごめん。」
「や、無神経にべらべら喋ってたゆかが悪いんよ。ごめん!ほんとごめん!」
「ちがっう、あ〜ちゃんが…ぅえ、めん、くさいから…」
「はぁ?」
めんどくさい?
「い゛つっも、こんな、ビービー泣いて、世話かけっひっく…てたら嫌われても仕方ないんよ。」
「はぁ!?なん…ゆかがあ〜ちゃん嫌いになるわけないじゃん!」
思わず大声をだしてしまう。あちゃー、あやちゃんびっくりして泣き止んだよ。
でもこればっかりは仕方ない。だって嫌いなわけじゃない、むしろその反対も反対なんだから。

「今年から…呼び方だってあやちゃんじゃなくてあ〜ちゃんになったし…」
「そ、れは…。」
「今年のバレンタインは、うちだけチョコ忘れられた。」
「あ゛、やぁ、それは…。」
「…今まであ〜ちゃんは耳が綺麗だからぜーったい開けん方がええって言っとったのに、昨日のプレゼントはピアスだし
そんなことでうじうじ悩んでるから寝不足になるし
気づいとるのにこーやってお見舞いに押し掛かけてしつこいし、そんでぐーすか寝ちゃってさ、ほんま間抜け。
もうこんなめんどくさいあ〜ちゃんのことなんてどーでもよくなったんじゃろ?」
「違う、違うって、あ〜ちゃん!」
「ええよ、別に。ゆかちゃんは優しいから幼馴染みのあ〜ちゃんにはなんも言えんのんじゃろ?」
「…。」
誤解だって、言いたいのに、言葉が上手く出てこない。喉の奥に鉛が詰まったような感覚。
何か、何か言わんと決定的に終わる前に…。




あ〜ちゃんサイド。

一気に捲し立てられ言葉を無くすゆかちゃんを見てまた自己嫌悪が脳裏をよぎった。
こうやって追い詰めるなんて最低だ。
優しいから…ゆかちゃんが反論出来ないのがわかってるから、言えるんだ。

はぁ、こーんな一方的じゃ、思いが届くどころか今まで友達でいられたことさえ怪しい。何年一緒におるんよ。
たぶん今まで何度も、こんな感じで、知らないうちに呆れさせてたんだろうな。
今更気づいたって遅いよ。ゆかちゃんが冷たくなるのもしょうがないわ。

「…ちゃん、」
「?」
「あ、やちゃん」
「何?」
「誤解なんだって、それは。」
「ゆかちゃん…もうええよ。」
「違う!」
「うちが悪いんはわかってるって。もうご機嫌とりはええから。」
「だーかーらー!ああもう!」
「きゃ」
急に立ち上がったゆかちゃんに気づいたら押し倒されていた。
「ぅあ、やっちゃった…。」
うちを押し倒すいきおいに釣られてゆかちゃんも倒れ込んできたから必然的に顔が近い。
やばいくらいどきどきするのと同時にゆかちゃんの目潤んできらきらで綺麗だなって思う
二人の自分が混在して変な気分。
「も…いーや。…ぁやちゃんが、悪いんだからね。」
小さい声でぼそぼそとそう呟くと右手で頬を触って
「…っ。」
ほんの一瞬だけど今までにないくらい、それ以上あり得ないくらい二人の距離が限りなくゼロに近づいた。
「あ、の、ゆかちゃん…。」
「あんね、ゆかは、あやちゃんが、すっ…好きなんだからね。」
「…。」
「だから、キスだって出来るし。
だからこんな簡単に押し倒されちゃうんだったら
こんでも勘違いし続けるなら、き、キス以上だって…あーなに言ってんだろ!
もうわけわからん!あやちゃん笑わんといてよ!もー!」


「だって、ムードとか、一番気にしそうな、ゆかちゃんが、グダグダなんじゃもん。」
本当におかしいから素直にそう言うと
本当につまんないって顔になって頬をぷくりと膨らませるゆかちゃん。
「そうよ、グダグダじゃ。カッコ悪いし最低、最悪。
…でもそんだけあやちゃんが好きだから、だから余裕ないんよ。
否定したって聞いてくれんし。」
「…ごめん。」
はぁって溜め息をついたゆかちゃんはしばらく考えあぐねたあとぽつりぽつりと語り始めた。
「あのね…あやちゃんって呼ばんくなったのは恥ずかしかったんよ。」
「?」
「4月の初め覚えとるじゃろ?学校の裏に呼び出されて」
「あぁ…。」
先輩とか同級生の男の子複数人に告白されたっけ
「いつもはあやちゃんがモテるのは毎度ことじゃけぇって
思っとったけど今年は、違った。そんで好きだって、気づいた。
そしたら他の子と違うのが妙に気になって。
それにもし気づかれたら?女の子同士なのに?って。嫌われるのは絶対やだった。」
「そんなん…」
「そんでバレンタインはね…。あの、用意してたの。」
「ええ!」
「でも、渡せんかった。だって他の子とは込めた思いが違うから。
同じに見られちゃうのはそう思われるのは、絶対やだったの。
て、これさっきと矛盾してるね。ふふ。」
自嘲気味に笑うゆかちゃんに胸が痛む。
うちがのんきにしてる間にいろいろ悩んだんだろうな。
あー、鈍感な自分に嫌気が差す。
「あ、で、ピアスは?」
「ん、それはのっちがあ〜ちゃんはピアス開けたいのにゆかちゃんのこと気にしとるって。
だから、うちから直接プレゼントしたらやりやすいかなぁって。
結局傷つけちゃってたみたいだけどね。本当、ごめん。」
「んーん。いいの、そのお陰で気づいたから。」
「へ?」

「…ちょっと間空いちゃったけど、あ〜ちゃんも、ゆかちゃんが好き。」


「うっそだぁ。」
「ほんと。昨日ピアスもらったのがあんなショックだったのも
ずーっと寝れんかったのもゆかちゃんを思って泣いたのだってゆかちゃんが好きだから。」
「一時の感情に流されちゃダメじゃよ、あやちゃん。」
信じきれないって顔のゆかちゃん。
あ、そういえばうちら頭が固いもん同士じゃったね。
どうやったら…ってここはあれしかない?
なんか恥ずかしいなぁ。でも背に腹は変えられんよね…。

「ゆかちゃんっ」
「わぁっ」
思いっきり抱き寄せて思いっきり気持ちを込めてキスをした。
ゆかちゃんにこの思いが何万分の一でも届くようにって
「あやちゃ…」
「わかった?」
「うん…てかするのも恥ずかしいけどダイレクトだからされるのもちょっと恥ずかしいね。」
「言わんといてよ。ただでさえ熱いんだから。うう。」
「あはは。」
「あ…と、さ、いつまでこの体勢なん?」
「そーいえばそうじゃったね。」
「時間もそろそろやばいんじゃ。」
二人で時計を見ると次の授業の始まりまであと三分くらい。
ちなみに保健室は眠る子もいるので授業のチャイムはオフにしてある。
「ゆかちゃん、いこっ。」
「えー最初に述べたように朝から気が…。」
「だーめ、サボりは許しません。」
「うえー、じゃあさ、お願い聞いてくれる?」
「何?」
「キスしていい?」
「なっ…」
甘い声で耳元で囁やかれて顔が熱くなる。
「ばかっ。」
「ふふっ。これ、チョコの代わり、ね。」
そういうとゆかちゃんは甘いキスをプレゼントしてくれた。


おわり




おまけ
のっちサイド。

「あれ?先生、何しっ…」
どうものっちです。
あ〜ちゃんが体育をサボったと聞いてやって参りましたが
何故か保健室の中を覗き見している保険医の越島先生に口を押さえられました。
流石越島先生、大人だけあって手までいい香りだ。ってそゆことじゃない!
「なんああっふぁんれすか。」
「しーっ」
内緒のポーズをしてドアをクイっと指す先生。
見てみろってこと?なんなん?もう。大人ってふしぎゃああああああああああ

中を見るとあ〜ちゃんとゆかちゃんが隠れもせずキスをしていた。
いやいやいやベッド回りのカーテンくらい引きましょうよ。
てかうわっちょっなに不純異性交遊は校則で禁止でって二人は同性じゃーい!
え、てか、もうね、何してんのかと。
あ〜ちゃんとゆかちゃんなんてつまり“天使”と“小悪魔”じゃないっすか?
詳しくはよく知らんけどそれに“漢”ののっちを加えた三角関係とやらが今学校の一部で噂されているらしい。
あ〜ちゃんがいくら告白されても誰にも落ちないとか
のっちは女の子から人気だとか
ゆかちゃんは二人に近づく男どもを誘惑して蹴散らすとか
そんな三人のうち二人が本当にくっついちゃったら…
うわぁやばいよ、バレたらやばいってーもっと盛り上がるって!
越島先生はそんな口が軽い人だとは思わんし
念押せば大丈夫だろうけど…二人があんな空気だったら時間の問題じゃろこれ。

とびっきり甘い芳香を放つ二人の側でわたしは頭を抱えて座り込んだ。

おわり。





最終更新:2009年02月23日 04:16