SIDE-N
怪しい。
というより明からさまと言った方がいい。
あの撮影の日から、やたらと引っ付いている二人。
まさか。
でも。
彼女のことだから。
有り得ないことでもないか。
私はスタッフさんに呼ばれるまま楽屋を出て、短いインタビューをすませ、また戻る。
ほんとに短い間だと思ってたんだけど。
ノックもせずに開けた楽屋で、彼女たちは抱きしめあっていた。
ちょうど彼女は私に背中を向けていて、一方の彼女は私と目が合う。
その目が笑っている。
やっぱり小悪魔だ。
閉めた扉の音でようやく二人は離れた。
そして次のタイミングでスタッフさんが入ってきた。
もし見たのが私じゃなかったらどうするつもりなんだ。
顔を真っ赤にさせた彼女は何も言わず足早にスタッフさんと共に出て行った。
「ねぇ。」
「何?」
わかってるくせに。
彼女の小悪魔っぷりには完敗だ。
「あ〜ちゃんと何かあった?」
「あったよ。」
私が知りたいのはその先。
「何があったの?」
「告白した。」
「それで?」
「あ〜ちゃんはゆかのものになった。」
得意げな顔でそう告げたあと、少し考えるフリをして付け加えた。
「違うわ。ゆかがあ〜ちゃんのものになったの。」
どっちであろうと私にはどうでも良かった。
「ゆかちゃんって凄いね。」
これが私の正直な気持ち。
「凄くなんかないよ。」
彼女は急に真面目な顔付きになった。
「あのさー、気になることがあるんよね。」
「何?」
「のっちさ、この前収録終わりに芸人さんと喋ってたでしょ…?」
「うん。」
「あ〜ちゃんがねぇ、凄い顔で見てたよ。芸人さんに噛み付きそうじゃったもん。」
「ゆかちゃん…それってのっちにヤキモチ妬いてるんじゃないの?」
「それもあるけど…でも違うんよ。気になるのはそこじゃなくて。」
「じゃあ何?」
「んー…」
今度は本当に考えてるみたいだ。
私には彼女の頭の中にあるコンピュータがフル回転してるのように見えた。
「どう言ったらいいのかわからんけど…」
「取り合えずのっち、ゆかの言う通りにしてみん?」
「へ?」
「のっちはゆかと
共犯者じゃけぇ、損はさせん。」
何か確信を持って話す彼女。
私はその圧倒的な雰囲気に押されて、彼女の話を受け入れるしかなかった。
しばらくすると彼女が帰ってきて、入れ替わるように彼女は出ていく。
『のっちはずっと携帯弄っといて。ゆかの携帯にメール送っててもいいから。』
彼女に言われた通り携帯を取り出し、適当に操作する。
うーん。
意外に使ってない機能ってあるもんだね。
「のっち。」
「ん?」
『あ〜ちゃんに話かけられても携帯弄り続けるんよ。』
「何しとるん?」
「え…っとね」
『何しとるか聞かれたらメールしとるって答えて。』
「メ、メール…?」
「ふふっ、なんで疑問形なんよ!でも珍しいね…のっちがメールしとるなんて。」
「そうかな…。」
「誰となん?」
『相手を聞かれてもごまかす。』
「いや…誰と言いましても…」
「言えんの?」
「あ、あ〜ちゃんに言っても知らん人じゃけぇ!」
「ふーん。」
明らかに彼女が不機嫌になった。
何これ。
私嵌められた?
ふと頭に彼女の笑顔が浮かぶ。
私は急いで彼女にメールを打つ。
これ一体何のためなん?
送信ボタンを押す。
数秒後彼女の携帯が鞄の中で音もバイブもならずに、光ったのが見えた。
つづく
最終更新:2009年03月17日 17:19