(04)692 『母の日』

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2週間前、いつものように店を閉める準備をしとったら、
とんでもないアイデアが浮かんできたと。
いてもたってもおられんかったけん、愛ちゃんに相談したら、
『れいなの思うとおりやって構わん』って許可をもらったと。
よし、ここは愛佳の知恵を借りよう。


「コラー!かめ!開けたら閉める!出したらしまう!このままだと人生留年だよ?」
「ガキさん、絵里はこう見えてしっかりしてるんですよ。
四字熟語だってちゃんと言えるようになったし」


あれは2週間前のこと。急に田中さんから連絡があってん。
おいしいもん食べに行くお誘いかと思っとったら、
田中さん真剣に話し始めはるから、びっくりしたわ。
愛佳にもプライドがあるから、その日は徹夜して、プランMを作り上げたった。
そう、Mの計画。
白物メーカーが宣伝しとる、Nの計画ちゃうで。


「ガキさん、相談です。この間のオチのことなんですけど」
「かめが私に相談なんて、珍しいじゃない。あの電気ビリビリ来る奴?あれはウケてたじゃん」
「それじゃなくて、耳たぶを折りたたんで『ハイ!餃子』って奴」
「あー、気にしないでいいから。確かにリンリンの『たこ焼き!』並みに寒かったけど、
かめは寒いくらいがちょうどいいの」


新メニューのハニートーストって、結構手間がかかるんよ。
パンを1/2斤使うし、オーブンにも1個しか入らんしな。
あーしは、トーストが焼ける匂いをかぎながら、
コーヒーのドリップを見てる時が、いちばん好き。
れいなにはいつも、『愛ちゃん、もっとしっかりして欲しいと』って言われとるけどな。


「かめ、人と話してて、話題に困ったらどうしたらいいと思う?」
「ガキさん、そういうときは天気の話をするといいんですよ?天気の話題は共通なんです」
「ちょっと待って。電話してて、離れた場所にいたらどうすんの。
晴れですねって言ってて、向こうでは雨だったりするんだよ?」


この前町を歩いてたら、みんながさゆみのこと見るの。
やっぱりさゆみは、隠しててもかわいさがあふれてきてしまうんだな~って思ったら、
どうやら音楽聴きながら大声で歌ってたらしくて、超~恥ずかしかった。
うん、やっぱり今日もかわいい。


「田中さん、何買うたらええですかね?」
「れいなもプライベートであんまり遊んだことないし、難しいっちゃね・・・
やっぱり絵里がよう遊んどるみたいやし、絵里に聞いてみたほうがいいと?」
「あきません。愛佳は亀井さんを信用してへんわけやないですけど、
ポロっと話してしまうかもしれませんし」
「うーん。仕方ないけん、もう何軒か回ってみるとよ」


Xデーまであと二日。
ジュンジュンとリンリンは当日の予定が合わんって言われたけん、
れいながあらかじめ準備したと。
他のメンバーとはもう調整済みやし、あとは絵里だけ。
      • 絵里はすぐれいなのお尻触ろうとしよるし、強敵っちゃね。


私は小春に呼び出された。
定例会議の日でもないのに、小春と会うことなど珍しい。
「ちょっと小春。突然電話してくるから、何かと思ったら。
相談したいことがあるって、大丈夫なの?」
「まあまあ新垣さん、詳しい話はリビングで。
      • あ!、小春ちょっと電話してきますんで、新垣さん先上がっててもらえますか?」
「まあ、いいけど」
二階へと続く階段を上って、スイッチを入れる・・・照明がつかない。
パチパチとスイッチを入れたり切ったり。
と、いきなり明るくなった。

パン!パン!
炸裂音に反応して身構える。これまで組織で叩き込まれてきたから。
「ガキさん、ありがとう!」周囲から声が聞こえる。
私は状況が飲み込めずに立ち尽くすだけ。

「新垣さーん!いつもありがとうございまーす」全力で抱きついてくる小春。
「ちょ、小春、相談があるんでしょ?これはなに?」
「ガキさん、今日何の日か知っとる?」愛ちゃんに言われても、ピンとこない。
「またまたー。ガキさーん、人が悪いですよ?知ってるんでしょ」
かめがニヤニヤしながら肘で突付いてくる。
「んふふ。田中さん、説明お願いします~」
光井ちゃんまでもったいぶって。なんだか仲間はずれにされたようで、ひどく不快だ。


「ガキさん、今日は母の日っちゃね」れいながおかしさをこらえつつ話しかけてくる。
「ああ、母の日ね。でも、それとこれと何の関係が?」
「ガキさんは、リゾナンターのお母さんみたいな存在やけん、日ごろの感謝の気持ちったい」
れいなが手渡してくれたのは・・・色紙と、なにかの包み?

「これ、なに?」突然のことで、状況がきちんと把握できない。
そこには、リゾナンターのメンバーからのメッセージが書かれてあった。
姿が見えない、リンリンとジュンジュンのメッセージも。
『ジュンジュンの誕生日にはバナナ下サイ 新垣 ジュンジュン』
『新垣 いつもお疲れサマデス リンリン』
吹き出しながら、考える。あの二人にはもっと日本語を教えてあげないと。
やはり、かめが教育係というのは不安だ。

「さ、みんな集まったし、パーティやるがし」
タイミングを見計らったかのように、愛ちゃんが声をかける。
改めて周囲を見渡すと、目に入るのはきれいに飾り付けられた折り紙やモール。
私の目から何か熱いものがあふれてくる。これは・・・涙?
裏切り者のこの私を、母だと慕ってくれる、メンバー。

私はあくまでも裏切り者だ。
仮に組織を抜けたとしても、いまさら正義の味方面などできない。
でも今日だけは、この子たちのために、母でいてあげたいと思う。





















最終更新:2012年11月24日 07:28