まだ、アンダーワールドという組織ができる前。
「約束しよう。私は、きっと君を助けてみせる」
―――それは、果たされなかった、約束。
「私の偽身、自傷概念なんだって」
まだ魔術師が人だった頃。
「正気かね、影坂君?
崩壊暴走を利用しようなんて」
たった一人の大事な人のために、魔術師は秘奥に挑む。
「強制励起から崩壊暴走へ、そして力ある言葉で干渉して魄滅に導く」
完成した研理論。―――しかし、
「崩壊暴走などという危険な行為、認めることはできませんな」
「融。私、幸せだったよ」
絶望する魔術師に、現実は進むべき道を示す。
「偽身病と命名されたようです。それにしても、他に先駆けて有効なサンプルデータがとれましたな」
「まったく。治療法がない病気は治療してはならないのですよ。失敗しては相模の名に傷がついてしまう」
その日、魔術師は己の研究データと共に消えた。
「偽りの悔恨など無用。ただ死して償え」
たった一人のための研究。愛しき人がいなくなった今、その全てを闇へと葬る。
「これは、貴様らが知っていいようなものではない」
故に魔術師は過去を葬る。
最終更新:2007年07月16日 11:00