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 3.~珠美の一日~

 僕の名前は内藤隆志。元某進学高校の二年生だった。
 と、いってもこれは生前の名前だ。実家に戻れば『戒名』や位牌はあるかもしれないが、
とりあえずそんな事には興味がない。家族に愛されてた、なんて思えた事は、物心ついてから
一度もなかった家庭で育ったからね……。

 家庭でも学校でも苛められっ子だった僕は、十七歳の時に非常階段から身を投げた。
 それから何年か、もう記憶も定かじゃないけれど、そこで地縛霊になっていたらしい。
 そんな僕を拾い上げたのが、霊感少女? の珠美とその母親の冴子さん達だ。

 もっとも、冴子さんは既に幽霊で、今は娘の珠美の守護霊になって存在している。
 珠美に言わせれば、守護霊じゃなくて疫病神らしいけど……。
 僕を浄化して取り込んだのは、珠美の体に憑依した冴子さんだ。
 僕はその時初体験もさせてもらって、今では……。守護霊というほどの力もないし、
ちょっと微妙な立ち位置にいるみたい。
 戸籍上は珠美と父親の式部さん……このおっさんの名前を知ったのはかなり最近だが、
この二人の父子家庭ってことになっているらしい。
 式部のおっさんは、一応場末のスナックと探偵業を開業しているが、まともに労働している
所はまだ見たことがない。
 スナックは気分次第でしか開店しないし、探偵家業は実質娘の珠美の霊力で解決させる、
ものぐさオヤジだ。……元はヒモ家業を生業としていた事もあるらしい。僕にしてみれば、
最低男だね、と思う。

 そして、一家の家計をほぼ一人で支えている少女が、今年高校生になる珠美だ。
 こう表現すると、健気で一途なヒロインと誤解されそうだから、注意は必要かもしれない。

 珠美の外見は色白で漆黒の黒髪と瞳を持つ、ぱっと目を引く美少女だ。
 スタイルも……珠美に聞かれたら殺されそうだけど、着やせするタイプだ。張りのいい胸と
くびれたウエスト、そしてこれは冴子さんかもしれないけど……感度もいい。
 非の打ち所のない美少女に間違いなく入ると思う。
 ――ただし、それはあくまで黙っている時だけの印象だ。
 一言で言えば口が悪い。家事全般はできない。ついでに守銭奴で乱暴もので……。

 ガスッ!

「ちょっとぉ~! 言いたい事言ってくれてるじゃん! アンタも性格変わってきたんじゃないの?」
 ……幽霊にものを投げつけられる特技も加えておこう……。この乱暴な少女が珠美だ。
「いてて……。気配消してくるのは僕らだけの専売特許じゃないの? 珠美ちゃん……」
「知るか。帰ってきたら、アンタがブツブツ無礼な事ほざいてたんでしょ~が!」
 ――え、え~と……。ともかくこんな感じの少女なんだ。
 かなり怪しげなやり方ばかりしてるけど、霊能者としてはかなり高位らしい。

「おっ、珠美ちゃん帰ってきたのか! ナイスタイミングだ! パパのお仕事手伝ってくれ~」
 ノックもせずに式部のおっさんが、部屋のドアから顔を出した。
 すかさず珠美がベッドサイドの目覚まし時計を、おっさんの顔にクリーンヒットさせる。
「全く……。年頃の娘の部屋を開ける時はノックしろと何度言わせるんだ! クソオヤジ!」
 うん。僕も毎回見てるけど、そう思うよ……式部のおっさん。
 一応生前の冴子さんの夫だったという事で、僕はこの式部のおっさんに好意を持ってない。
 僕は冴子さんが好きだったし、初体験の相手だし……。正直、嫉妬してるんだ。
「相変わらずコントロールが冴え渡ってるなぁ……珠美ちゃん。今日のは簡単な仕事だからさ、
 着替えたら事務所控え室に下りてくれな~」
 式部のおっさんも慣れたもので、ぶつけられた額をなでながら用件を言うと、そそくさと退散
していった。
 ちなみに事務所控え室っていうのは珠美家の食卓の事を指す。
 マンションの通し部屋が探偵事務所になってるんだ。
「ったく……。『手伝え』じゃなくて『やってくれ』だろ~が! あのヤサグレ親父!」
 珠美はぶつくさ言いながら制服を着替えようとして、僕の存在を思い出す。
「隆志! アンタも外に出る! 乙女の着替えをタダで見るな!」
 途端に部屋のドアが自動ドアのように開いて、ついでに僕まで吹っ飛ばされた。

 

 「――成る程。最近ご主人の動向が怪しくてご心配というわけですな。ほうほう……」
 事務所の安っぽいテーブルを挟んで、式部のおっさんはソファに腰掛けてる依頼者の話に耳を
傾けていた。しきりにメモを取ってるように見えるが、メモ用紙には『ダンナの浮気調査』とだけ。
 後はへたくそな落書きを書いたりしている。
「もう十年も連れ添っているのに、今頃態度がおかしくなって……もう、どうしていいか……」
 依頼人のおばさんは、少し痩せぎすで、ちょっと僕の母親に似ていた。
 悔しそうに涙をにじませながら、時々ハンカチを噛んでいる。
「わかりました。とりあえず調査しますが、最低一週間はかかると思ってください。
 それと、ご主人の写真とか、会社の住所等の資料が必要ですがお持ちですか? できれば、
最近身につけていた品物もあると調査がはかどりますが」
 式部のおっさんは、勿体ぶった言い方で依頼人のおばさんに優しそうに注文をつける。
 おばさんは、なにやら手馴れた手つきで、でかいカバンから写真や資料、旦那さんのパンツを
引っ張り出して渡してよこした。

 控え室(キッチン)から様子を見ていた珠美が『げげっ!』と、嫌そうな顔をする。
 僕はちょっと珠美に同情した。

 式部のおっさんは終始依頼人の愚痴交じりの話を聞きながら、預かった荷物を真空パックでき
るビニールにしまい込み、おばさんが落ち着くまで我慢してからお帰り願った。
「やれやれ……。ダンナが浮気したくなる気持ちはちょっとわかるなぁ」
 不謹慎な事をいいながら、荷物を抱えてキッチンに入ってくる。
「おっ、珠美ちゃん。聞いてたのなら話は早い。今回の依頼はそ~ゆ~事だからさっ。
 いつもの様に、ひとつ頼むわ」
 荷物から住所など書かれた書類だけ抜き取ると、式部のおっさんは残りの荷物をテーブルに置
いた。珠美は荷物を見ながら相変わらず嫌そうな顔をしている。
「……なんか、気が進まないな~。なんでよりによってパンツ持ってくるかな、あの人は……」
「まぁまぁ。これも仕事だと思って、ぱぱっとやってくれよ~。頼むよ、珠美ちゃん」
「う~。しょーがないな……。隆志! そこのポラロイド持ってきて!」
 ……幽霊をこき使う子に同情する僕もバカだな……、僕は内心思いながらもカメラを珠美に渡し
た。
 ここは探偵事務所だが、地道な調査なんて、実はしてないんだ。
 珠美は依頼人のダンナの写真を額に当てると、さも嫌そうにパンツに指先を触れてみた。

「……」
 珠美がそうしてる間に、式部のおっさんはパソコンで通勤電車のサイトの運賃計算をしたり、
タクシーの偽造領収書を作成し始める。
「……げげっ! 親父……、これ。報告しないほうがいいかもよ?」
 依頼人の持ち物に触れていた珠美が、さらに嫌そうな顔をしてつぶやく。
「ん~? 報告しなきゃ、依頼料貰えないだろ~。どーしたんだ? 浮気じゃないのか?」
 パソコンのキーボードをカチャカチャいじりながら、式部のおっさんは咥え煙草で聞き流そうとし
ている。
「浮気は浮気だけどさ……。相手は女じゃないわ……、このダンナ。う~、見たくないなぁ……」
「へっ……?」
 式部のおっさんは咥え煙草を落としそうになりながら、ようやくパソコンから顔を上げる。
 珠美は諦め顔で、ポラロイドに念写を始めた。

 もうわかったと思うけど、この探偵事務所は調査なんかに行かないんだ。
 相手の写真と持ち物に触れた珠美が、その人物の行動をトレースして念写写真を浮かびださせ
ているんだよね。
 だから実際は交通費や張り込みとかの人件費は全くかからない。一週間とおっさんが期限をつ
けたのは、必要経費と偽った費用を水増し請求するためで。ほとんどそれは詐欺行為なんだ。
 珠美の念写が間違った事はないので、仕事は確実、と評判ではあるんだけどね……。

 パシャッ! パシャッ! パシャッ!……。十何枚かの写真を念写で出し続ける。
「……頭痛がしてきた……」
 僕はあの珠美が焦燥する写真に興味が出て、背後からその写真を覗いて見る。
「うわぁ……!」
 ちょっと絶句した。
 渡された写真のダンナが女装して、同年代のおっさんとホテルに入っていく写真だったんだ。
 ……それも、どう見てもオカマの扮装にしか見えない女装姿だ。
「しかも、そいつマゾ趣味もあるよ。鬱屈した欲求が、こういう結果に走らせたみたいね」
「う~ん……。事実は小説より奇なりってやつだな。ま、事実だから仕方ないさ」
 式部のおっさんはすばやく立ち直ると、また必要経費の領収書を偽造し始めた。
 こういう切り替えの早さも、やっぱり堅気とは言いがたいよね。僕はまたも呆れてしまう。

「あらぁ~? みんなそろって何してるのぉ? いや~ん! ママも混ぜてぇ~」
 昼寝していたのか、冴子さんが気まずい雰囲気の中に現れた。
 珠美は不機嫌そうに、生成したポラロイド写真を冴子さんに押し付ける。
「ほれ。好きなだけ見ろ……。あたしはなんか疲れたから寝る……。食欲も失せた……」
 付き合いきれない、といった風情で珠美はよろよろと部屋に戻っていった。
 あの珠美を疲れさせるとは……。ある意味すごい夫婦だなあ。変に感心してる僕とは違い、
冴子さんはじっと写真を見ていた。
「お化粧の仕方がなってないわねぇ……。アタシ、こういうのって許せないのよね!」
 ……冴子さん。論点がずれてるよ……。
「この人の奥さんは来週来るのね? その時はあたしに任せてっ! ダ~リン」
「ん~? 冴子は面倒見がいいからなぁ。ははは」
 おっさんは、冴子さんの申し出に無責任に頷いている。これが阿吽の夫婦なのかな……?

 夜になって、夕食ができても珠美は起きてくる気配がない。
「珠美ちゃん、夕食の支度ができたって言ってるよ?」
「……」
 僕は恐る恐る珠美を起こしにいったが、珠美は起きようとしない。よほど疲れたのかな?
「珠美ちゃん。珠美ちゃんってば!」
 少し大きな声で揺り動かしてみる。途端に体に電流が走って、僕は飛びのいた。
「……起こしたら殺す……」
 ええっ!? こ、殺すって……。ホントにやりそうだから怖いよ……。
 僕がびびってるのもお構いなしに、珠美は寝返りを打つと寝息を立てている。
「隆志クン、珠美ちゃん起きたぁ~?」
 冴子さんが心配して上ってきてくれた。僕は思わず冴子さんに抱きついて泣き言を言った。
「さ、冴子さ~ん! 無理! 僕には珠美ちゃんを起こすなんて無理だよ! こ、殺すって……」
 熟睡に入ったらしい珠美を見下ろすと、冴子さんは『困ったわねぇ』と溜息をついた。
「珠美ちゃんは元々寝起きが悪いのよねぇ~。怖がらなくても大丈夫よ、隆志クン。
 起きたらもう忘れてるんだから~。珠美ちゃんって、そういう子なのよねぇ……」

 ――そ、そうなの……? 実際やりそうな気がものすごくするんだけど……。
 僕はまだ、生きている状態でいえば動悸が収まらなかった。

「あらあら。珠美ちゃんったら、今日は体育があったんじゃないのぉ~!
 せめてお風呂に入らなきゃだめよぉ~!」
 机の時間割を見て、冴子さんは呑気な事を言う。たった今起こすと危険と言ったばかりなのに…
…。
「ふふっ、隆志クン。大丈夫よ。これだけ熟睡してるなら、方法はあるのよね~。
 大事な一人娘ですものぉ~。身支度はきちんとさせてあげるのもママの勤めよっ」
 冴子さんはそういうと、発光体になって珠美の中に入り込んだ。

 しばらくして、珠美はむっくり起き上がった。
 瞳の色は変わらないが、なぜか険のない柔らかいまなざしだ。
「もしかして……冴子さん!?」
 冴子が憑依した珠美は、にっこりと笑って頷いた。
「初めて隆志クンに会った時以来ね。どう? 懐かしい?」
 あの時は珠美の存在を知らなかったけど……冴子さんが入ってる珠美はやっぱり可愛い。
「Hすると、また隆志クンは珠美ちゃんおなかに取り込まれちゃうけど……キスくらいする?」
「う、うん!」
 僕は珠美が起きたらどうしよう……と恐れながらも、冴子さんを抱きしめて唇を重ねた。
 いつもは毒々しい言葉を吐く、怖い珠美の唇は、重ねてみるとやはり柔らかく魅惑的だった。

 抱きしめて、舌を絡ませあう。柔らかい胸の膨らみも久しぶりで心地よかった。
「さ、冴子さん……! ぼ、僕……!」
 そのままベッドに押し倒したい誘惑に駆られたが、冴子さんは優しく僕を引き離した。
「ふふっ……。だ~め……。お風呂前だし、珠美ちゃんったら宿題も残してるのよぅ~」
「しゅ、宿題なら僕が答えを言うよっ! 冴子さんはそのまま書き写して!」
 なんだかうまく乗せられた気もするが、それだけ冴子……いや、珠美の体は誘惑的なんだ。
「そぉぉ? じゃ、先に宿題を終わらせましょうか」
 冴子の入った珠美はカバンから数学の宿題を取り出すと、机に腰掛けた。
 中学の問題くらい、勉強だけが取り柄だった僕には造作もないことだ。あっという間に片付いた。

「じゃ、お風呂に行きましょうか」
 珠美のクローゼットから着替えを取り出すと、冴子入りの珠美はにっこり微笑んだ。
 いつもの珠美なら、入浴などの時には結界を張って入れてくれない。
 僕は期待感で一杯になりながら、冴子入りの珠美の後をついていった。
 キッチンの前を通ると、式部のおっさんは、まだ偽造領収書作りに熱中していた。
 ――冴子さんは、おっさんの事気にしないのかな……? 一応これって不倫だよね?
 僕の脳裏をこんな事がよぎったが、目前の誘惑の前にはどうでもいいように思えてしまう。

 脱衣所で冴子の入った珠美が服を脱ぎ始める。
 相変わらず陶磁器のように白くて滑らかな肢体だ。見とれていると珠美が言う。
「隆志クンも脱いで。イメージすれば脱げるはずよ」
「う、うん!」
 僕は服を脱ぐことを一心にイメージした。服が消えて、猛っている僕自身が顕わになる。
「ちゃんと体を洗ってからね。珠美ちゃんはヘア・ケアも手抜きなのよねぇ~」
 猛っている僕を見つめながら、珠美は浴室に入っていく。
 冴子である珠美はスポンジをたっぷり泡立てて、からだの隅々まで念入りに洗っていた。
 スポンジの動きに合わせて、白い乳房が扇情的に揺れる。
 髪の毛を洗う時、ややうつむいた姿勢になった珠美の乳房がゆらゆらと揺れる。
 股間の草むらが濡れ光って、僕はもう我慢の限界だった。

「冴子さん……っ!」
 後ろから抱きつくと、お湯でほんのりピンク色に染まった乳房を揉みしだく。
「あ……んっ! 隆志クンったらぁ……っ。焦っちゃだめよぅ……んっ……」
 今度は拒否されなかった。僕は珠美を正面に向かせると、乳房を鷲づかみにして先端を押し出
し、そこに吸い付きながら舐め転がす。口の中で刺激された先端が固くなっていくのが嬉しかった。
 冴子さんが珠美の声で、甘い吐息をもらし始める。
 珠美の胸は、前より少し成長してるみたいだ。
「ふふ……っ。……隆志クンは……っ……おっぱいが好きね……んんっ……!」
 両の乳房にむしゃぶりつく僕を、珠美の声で、珠美の腕で、冴子は優しく抱きしめてくれる。
「うん……。だって、すごくおいしいよ……! 冴子さんの胸……それにこっちも……」
 お湯だけではなく、しっとりと濡れた珠美の股間に指を差し込む。
「……ひゃぅっ……! ……んぁっ……! た、隆志クンったら……っ」
 僕に体を預けている珠美を抱き上げ、浴槽に座らせて足を広げる。湯煙の中で草むらに隠れて
いたピンクの突起が目の前に現れた。
 僕は柔らかい襞を指で左右に広げて、珠美の秘部にじっくりと魅入る。珠美自身から溢れる液
で、一番敏感な突起が濡れ光り、震えている。
「綺麗だ……。すごく綺麗だ……冴子さん……、いや、珠美ちゃん……」

 どうも呼び名がややこしい。ともかく僕は、そのピンクの突起を唇ではさんで舌先で転がした。
 珠美がのけぞり、せつなそうな喘ぎ声を上げる。普段の珠美からは想像できない位可愛く、
僕を興奮させる。湯船の水音に負けないくらい、僕は珠美のそこを音を立てて舐め続けた。
 珠美の押し殺していた声が、だんだん浴室に響き渡る。僕はもう、痛いほど猛っていた。
「ダメだ……! もう、入れたいよ……冴子さ……ん……!」
「んっ……んっ……中に出しちゃダメ……よ……? ……で……きる……あんっ!」
 冴子さんの入った珠美の体も、欲しくなっているらしい。ゆっくり向きを変えると、浴槽に捉まった
珠美が、僕に形のいいお尻を突き出してきた。
 僕はその形のいいお尻をつかむと、猛り狂いそうな僕自身を珠美の中に埋め込んだ。
「ふ……ぁっ!」
 珠美の内部がきゅぅっと僕を締め付ける。いきなり暴発しそうになるのをなんとか耐えた。
 珠美の中で爆発したら、また僕は珠美の中に取り込まれてしまうんだ。
 しばらく挿入したまま、落ち着くのを待つ。少し波が去ったところで珠美の中で抽迭を始めた。
 僕と珠美が擦れあう水音が浴室を満たす。僕が貫くたびに、珠美の乳房は上下に揺れ動き、
珠美の声が漏れる。音を隠すように、珠美がシャワーをひねって水音を立てた。

 果てる事がないような欲望が僕を支配する。ずっとこうして珠美と繋がっていたいとさえ思える。
「ダメ……! 隆志クン……! イッちゃう……っ!」
 不意に珠美の体が絶頂を迎えた。珠美の内部がきゅぅっと僕を締め付ける。
 ――ダメだ! 僕ももう出そうだ……!
 僕も限界なのを察した冴子さんが、身をよじって僕を内部から引き抜く。
 それと同時に、僕は珠美のお尻から背中にかけて、白濁した液を大量に放った……。
「……危なかったね……隆志クン……」
 息を弾ませながら、珠美が振り向いて微笑む。僕は安心と放心するような快感で、珠美の背中
に抱きついたまま息を整えた。

 再び珠美はシャワーで僕の出した液体を洗い流すと、弱々しい足取りで浴室から出ていった。
「ふぅ……。のぼせちゃうところだったね……。隆志クンったら、逞しくなってるんだもん……」
「そ、そうかな……。つい、夢中になっちゃって……。こんなにしても珠美ちゃんは起きない?」
 僕はやっと我に帰ると、もしも珠美がこのことを知ったら……と想像して怖くなってきた。
「ふふっ……。今はアタシが体を支配してるから大丈夫。隆志クン、ホントは珠美ちゃんとも
したいんでしょ?」
 珠美の顔で、冴子さんはイタズラそうに笑う。
 ……それはもちろんしたいけど……やっぱり怒らせるのは怖いしなぁ……。
 意識のないうちにっていうのも卑怯だけど、僕には生身の体もないしね……。
 いつか本当の珠美が他の男とこうするようになったら、僕はどうなるだろう?
 元々気が弱くて自信もない僕は、そう考えると落ち込んでしまう。
「大丈夫よ、隆志クン。ちょっとママとしては情けないけど、珠美ちゃんってまだまだ子供だしぃ」
 僕の心を見透かしたように、珠美の顔で冴子さんは慰めてくれた。
「さて、湯あたりしないように珠美ちゃんをベッドに戻さないとねっ! いこっ、隆志クン」
 珠美をベッドに寝かせると、冴子さんはまた発光体になって珠美の体から出てきた。

 珠美は全く起きる様子も無く、気持ちよさそうに熟睡していた。

 ――翌朝、遅刻寸前で目覚めた珠美は、大急ぎで登校していった。
 帰宅すると、やった覚えのない宿題がやってあり、しかも満点だった事を冴子と隆志に告げ、じ
ろりとにらむ。起きてる時の珠美は、やはり迫力があって怖いんだ……。
「宿題だけで、他にやましいことしなかったでしょーね?」
 ばれたら、やっぱり消される……ホントにそう思えるんだ。
「し、してない! してない! ねっ!? 冴子さん?」
「珠美ちゃん~、人を疑いすぎるのはよくないわよぅ~! ママ、そんな子に育てた覚えありませ
んっ!」
 しばらく疑いの目でにらまれていたが、冴子さんの言葉で矛先がそれた。
「育てた覚えがないって……当たり前でしょーがっ! あたしを生んですぐ亡くなったでしょ!」
「好きで死んだわけじゃないわよぅ……。それにすぐ戻ってきたじゃないっ! 珠美ちゃんのバカッ」
 ……あ、そうだったんだ……。怒りの矛先がずれた僕は、この新事実に少し驚いた。
 じゃぁ、珠美のオムツを替えたりしてたのは、あの式部のおっさんなのか……。
 珠美にとって、どっちが幸せだったんだろう?

 珠美と冴子が言い合いしている横で、僕はこの家族について考えていた。
 そこにまた、ノックをしないで式部のおっさんが顔を出す。
「おっ。珠美ちゃん帰ってきたのか! ナイスタイミングだ! パパのお仕事手伝ってくれ~」
 珠美は無言で目覚まし時計より破壊力のあるものはないか、目で探し始めていた。
 ……なんだかんだいって、この家は珠美を中心にまとまっているんだな、と僕は思う……。

  ~後日談~

 一週間が経ち、件の浮気調査依頼のおばさんがやってきた。
 式部のおっさんは珠美の用意した写真と、調査にかかった必要経費の領収書を渡していた。
 おばさんは気の毒に、卒倒しそうなショックを受けていた。
 まさか、只の浮気ではなく、夫が暗い深い河の向こうの住人になっているとまでは予測しなかっ
たのだ。
「ま、まさかこんな結果が出るなんて……!」
 写真を握り締め、わなわなと震えるおばさんに、式部のおっさんがささやいた。
「奥さん、旦那さんを許せませんか……? 夫婦生活をやり直したくはありませんか?」
 おばさんはしばらく考え込んでいたが、意を決したように答えた。
「夫の趣味はまだ理解できませんが……。できる事ならやり直したいです!」

「素晴らしいですわ! 奥様! そのお言葉を待っていました!」
 事務所控え室(キッチン)から、大人の女性に扮装した珠美が、まるでショータイムのように現れ
る。勿論、中身は冴子さんの憑依状態だ。
「ゲイであることは私達女には超えられません。でも、ご主人のもうひとつの趣味で、虜にする事
は可能ですのよぅ~! 奥様なら、きっと素晴らしいパートナーになれますわっ!」
「は、はぁ……」
 呆気に取られているおばさんに、冴子である珠美はメモを渡した。
「奥様のスタイリストは及ばずながらワタシがお手伝いします。そしてテクニックはここで会得を」
「はぁぁ……」
 おばさんは毒気を抜かれたように、冴子さんのなすがままに流されていた。

 半月後、やけに自信に満ちた化粧の濃い女性が事務所に花束を持って現れた。
 あの、ホモでマゾのダンナを持ってしまった奥さんだと気づくまで、しばらくかかった。
「あの時のアドバイスで、主人は浮気をやめましたの! 夫婦生活は前より円滑で、もう一人家族
計画を立てようかと夫が……。この探偵事務所は素晴らしいですわ!」
 満足そうにまくし立てるおばさんをキッチンで見ながら、珠美と僕は呆気に取られていた……。
 冴子さんだけが、満足そうに笑っている。
「やっぱりねぇぇ~。ご主人と奥さんを見たときから、二人ともそっちの素質ありと思ったのよぅ~。
 こればかりは経験が人を見る目を養うのよねっ! ねね、珠美ちゃん。ママを尊敬した?」
 珠美はげんなりした顔でぼそっとつぶやく。
「……類は友を呼ぶ、変態には変態がわかる、でしょーが……」
 うん……。今回ばかりは珠美に賛成かも……。
 珠美は一体どんな女性に育つんだろう? そして、僕は一体どうなるんだ?

 ちょっと未来が心配な僕だ……。幽霊に未来があればだけどね……。

                 閉幕

最終更新:2010年12月01日 08:22