「……んっ……んっ……んはぁっ……! もっと……もっと激しくして! お兄様!」
豪奢な屋敷の庭で、まだ年端も行かぬあどけない少女が青年に両の足を絡ませ、愉悦の
声を隠そうともせず快楽に耽っていた。
白く小柄な裸体が青年の股間に跨り、溢れる愛液を散らしながらも深々と貫かれ続ける。
「ふふ……。困った奴よ……。こんなにも淫らに濡らしておいて、まだ足りぬと申すか。
それ! どうじゃ!? これが良いのか?」
もっと激しくとねだる少女に応え、青年は少女を貫く律動を早める。
淫猥な肌と肌とがぶつかり合う音が庭内に鳴り響き、少女は歓喜の喘ぎを放ち続けた。
自らも青年を更に受け入れようと、貪欲に腰を動かしている。
「……い、いいっ……! いいのぉっ~!」
少女が達する叫びをあげると共に、青年は少女の蜜壷の中に白濁した欲望を放った。
初秋の夕日が紅葉と共に二人の裸体を赤く染めてゆく。
一瞬意識が朦朧とした少女は、汗まみれの体に衣を羽織ろうとする青年に抱きつき、
甘え声で囁いた。
「……お兄様の意地悪! 宮をこんな風になさったのは他ならぬお兄様でしょう?
宮がまだ10歳の頃から、宮のここにお兄様のものをお入れになられてきたのですから。
もう、あれから4年もの間ですのよ?」
「ふふふ……。そうであったな。あの頃から其方は華奢で我が身の欲望を煽ったものよ。
待ち焦がれた破瓜の折には、其方は『痛い、怖い』と泣いておったものだが。
体を重ねた年月は、よくぞここ迄『皇女』から『女』へと変貌を遂げさせたものだ。
……尤も、処女ではあったが、其方の躯は既に愛撫される事には慣らされておったな」
青年は高貴そうな衣を纏いながら、少女を見下ろし薄ら笑いをする。
「あ、あれは兄上様が……。物心つく前から宮を可愛がって下さっていたのですもの……」
「其方の異母兄である現帝殿か……。やはり好色の血は争えぬな。さ、其方も衣を羽織ら
ないと風邪を引いてしまうぞ。元々紅葉を見に来ただけの筈であろ? 和宮よ」
青年は笑ってはいるが、さして会話に興味も示さぬ様子で少女に内掛けを手渡した。
自らを『宮』と呼ぶこの少女は、仁孝天皇第八皇女 和宮親子内親王である。
仁孝天皇は和宮が生誕前に崩御しており、現在は彼女の異母兄が帝になっていた。
後世では『孝明天皇』と呼ばれる和宮の名付け親であり、この異母妹を溺愛していた事
は宮中でも密やかな噂だった。
そして今迄和宮と交わっていた青年は、有栖川宮家の長男熾仁(たるひと)親王という。
和宮6歳 熾仁19歳の折に帝の勧めで婚約が成立し、以後和宮は有栖川宮家で教育を受
けるために通い続けて14歳になる。
何不自由なく育まれた皇女としての教養や自尊心、そして淫欲はこうして培われてきた。
手渡された内掛けを肩にだけ羽織り、和宮は妖しく瞳の奥を光らせると熾仁にまたもし
な垂れかかった。
「お兄様、お寒くてらっしゃるの? お風邪がご心配なら、宮が温ためて差し上げてよ?」
はだけた肌を熾仁に密着させ、素足で熾仁の下半身に絡ませようとする。
先刻までとは打って変わった冷静な表情で熾仁は和宮を見下ろした。
「やめなさい。もう日も暮れている。妖かしの者に魅入られてしまうではないか。
そんなに欲しくば、室に戻って夕餉を済ませてから待つがよい」
廻された腕を振り解くと、和宮の腕ごと内掛けの中に包んだ。
熾仁は有栖川宮家の長男である。前途を約束された血気盛んな若者であり、いくら皇女
といえど、一人の女に縛られる事には満足できないでいた。
しかし、皇室という籠で育った和宮には、そんな熾仁の心情は未だ理解できていない。
「まぁ、つまらない事。宮は妖かし等怖くありませんわ。お兄様を守って差し上げる事も
できましてよ?」
不満そうに唇をすぼめる和宮に苦笑しながら、熾仁は背中を押しつつ室に向かって歩き
始めた。
室に向かい始めると、後方で何かが落ちる音と共に 庭内がにわかにざわめき始める。
「誰かある! 一体何事が起こったというのだ!?」
熾仁の呼びかけに、植え込みの影から警護を兼ねる庭師の一人が現れ跪く。
「お騒がせいたしまして申し訳ございませぬ。どうやら浮浪児が一人、庭の塀から紛れ込
んできた様です。御庭を汚す訳には参りませぬ故、ただいま取り押さえましてございます」
「離せよっ! 塀から出てる柿をお父にも持って行ってやろうとして滑っただけだっ!」
「こらっ! 高貴なお方々のおわす御庭内で騒ぐでない! 本来なら斬られても文句は言
えぬのだぞ!」
薄暗闇でわからないが、どうやら迷い込んだのはやや甲高い声を持つ女子の様であった。
「ふむ。その侵入者とやらを、ここに連れて参ってみよ」
熾仁はやや興味を示し、庭番にそう申し伝えた。
程なく縄で括られた侵入者が二人の前に引き出されてくる。
和宮と年の端も変わらぬ少女が粗末な着物に身を包み、ふて腐れた様に睨みつけてきた。
「まぁぁ……。随分と薄汚れた妖かしの者ですこと。……それになんだか臭いわ」
和宮は感じたままにそう言うと、内掛けで顔を背けるようにして嫌悪を表した。
囚われた少女は和宮の言葉を聞くと、かっとなったように叫んだ。
「く、臭くなんかないやいっ! ちゃんと毎日川で体も洗ってるんだ!
あんたこそ綺麗な着物を羽織ってる癖に、なんだか生臭い臭いがしてるじゃないかっ!」
言い返す少女の言葉に和宮の顔色が赤く染まり、体が小刻みに震えた。
「なっ……! 不潔な上に、なんて無礼な浮浪児なの!」
確かに和宮の体からは、先程まで抽送されていた熾仁の精液の臭いが微かに漂っている。
しかし、それを口に出す者は この館の中には誰一人としている筈もなかった。
「こ、こやつ! 皇女様に直に言葉を発しただけでも無礼というのに! 事もあろうに、
なんと恐れ多い事をほざきおるのか! ええい、黙らぬと命の保障はせぬぞ!」
庭師は和宮の顔色の変化に慌てながら、縛られた少女を引きずり上げた。
「痛いってばっ! あたいはほんとの事を言っただけだ!」
「こ、この無礼者っ……! お兄様、この乞食娘にきつい罰を与えてやって下さいませ!」
悔しさと怒りで縋り付いてくる和宮を余所に、熾仁は可笑しそうに笑ってしまった。
「まぁ、たまには珍事を見逃しても構わぬ。見ればまだ子供だ。
花盗人は罪にならぬとも言うではないか。この庭内の柿位ならば、いくら与えてやって
も困らぬであろう。……娘、名はなんと言うのだ?」
「……」
またも庭師に引きずり上げられ、少女は苦しげに視線を伏せながらぼそりと言った。
「……たき。あたいの名前はタキだよっ……」
「タキ……多岐だな。なかなか良い名だ。そこの者、多岐の戒めを解いて柿をくれてやれ」
庶民には漢字名がつけられる風習はまだ少ない。熾仁は勝手にタキを多岐と呼び直した。
「お、お兄様っ!? 何故……っ!?」
自分の命が通らなかった和宮は驚いて熾仁に詰め寄るが、熾仁は耳を貸そうともない。
今まで、和宮は何一つ自分の要求が満たされなかった事がない。
和宮の怒りの矛先は、この小汚く無礼な浮浪児を処罰してくれない熾仁へと変わった。
「お兄様ったらっ!宮はこの者に罰を願っているのです! なのに何故……」
「もうお黙り。和宮。皇女が物もわからぬ下々の言葉に、そうも動揺するのは宜しくない。
慈悲の気持ちを施してやる事も皇女の務めだと思いなさい。さあ、夕餉に向かうぞ?」
「だって……!」
「いいから。来ぬなら先に行ってしまうぞ。
……そのご様子を通すつもりならば今宵は会えぬやも知れぬが、宜しいかな?」
熾仁の言葉にぐっと詰まると、和宮は唇を噛みながら室へと踵を返した。
――お兄様の馬鹿っ! 心の中で精一杯悪態をつきながら室へと早足で戻ってゆく。
まだその場に残っていた熾仁は、和宮が室に入るのを見届けると、庭師に多岐を風呂に
入れ、衣装一式を揃えてやるよう命じた。
「な、なんで着物までくれるの……? あ、あたいは柿を2個も貰えれば満足なんだ!」
熾仁は好奇の目で多岐を見下ろしながら、微笑んだ。
「気にするな。ただの気まぐれだ。それに、磨けば其方は美しかろうぞ? 多岐よ」
「えっ……?」
思わず赤面する自分にたきは戸惑う。
いきなり何を言い出すのかわからない熾仁に対する不安感と、装いを凝らした自分の姿
を想像して湧き上がる、生まれて初めての期待感だった。
「其方が支度をする間に、柿は家に届けてやろうぞ。……そのように計らえ」
「……は、ははっ! 直ちに!」
庭師の一人が即座に反応する。
「これも何かの縁だ。家の事は気にせず、しばしこの館に滞在を許す。――連れてゆけ」
「な、なんで……!? あ、あたい、わけがわかんないよ! ねぇってば!」
戸惑いつつ庭師に連れてゆかれる多岐を微笑みながら見送ると、熾仁は室へと歩を進め
始めた。
「さて……。早々に癇気を起こされた皇女様のご機嫌を、取りなしてやらねばの」
今宵は予定していた女の元に行く事は無理だろう。
熾仁はもう和宮の扱いにすっかり慣れていたつもりだが、熾仁自身に癇癪を起こす和宮
を見るのはあれが初めてであった。
十歳で熾仁によって性を目覚めさせられた和宮は、精をねだるとき以外は従順であり、
学問や雅楽に秀でた理想的な皇女に育ちつつある。
その気高い皇女を思うがまま性に溺れさせ、淫楽の世界に誘う事は、熾仁にとって新鮮
であり、優越感に浸れる楽しい秘め事でもあった。
先程の癇癪も、元はといえば熾仁の多岐への扱いに嫉妬しての事であろう。
すっかり自分に溺れている和宮を意のままに扱う事は、熾仁に愉悦感をもたらした。
「今宵はもう、お兄様とはお話したくありません!」
夕餉の時にそう宣告すると、和宮は寝屋に入っても寝具の隅に正座して黙り込んでいた。
「いい加減、もう少し大人の振る舞いができぬのか。家人達にも体裁が悪かろう?」
言い聞かせても拗ねて黙り込んでいる和宮の横顔が、ほの暗い行灯に映し出される。
つんと取り澄ました横顔は、逆に熾仁の征服欲を掻き立てた。
夜具の袖をつかみ、初夜の時の様に乱暴に押し倒すと、驚いている和宮の夜具の裾を捲
り上げる。
和宮は小さく悲鳴をあげようとしたが、強情に口をつぐみ、意地でも声を出すまいとし
ていた。
その様子が熾仁の欲望を更に煽り立てる事を、和宮が自覚しているのか否なのか。
捲り上げた裾から両足を肩に担ぐと、熾仁自らの一物を取り出して和宮の股間にあてが
う。
「そら、和宮。其方がさっき『もっと』と欲しがっていたものだ。存分に味わうがよい!」
熾仁は前戯もそこそこに、猛る一物を皇女の中に埋め貫くと抽送を開始した。
「い、嫌よっ! お兄様なんか嫌い! ……んぁっ!……い、嫌……やめ……ああっ!」
突き上げながら腰紐を解き、胸元をこじ開けると顕わになった乳房を鷲づかみにする。
既に乳房の先端にある小さな突起は尖り立ち、咥えられるのを待っていたかの様だった。
欲望のままに齧り付くと、一物を咥えこんでいる蜜壷がきゅぅっと絞まり、愛液を際限
なく溢れさせてくる。
四年間もの間、熾仁に性儀を教え込まれて来た和宮には、言葉とは裏腹に秘壷を突き上
げてくる熱い塊が与える刺激に陥落するしか術がなかった。
「今宵は喋らないのではなかったのか? 其方は上の口も下の口も嘘つきな様だな?」
「ひ、ひどい……! そんな風に仰るなんて! い、意地悪……んあぅっ!……」
自ら腰を浮かせて熾仁を受け入れている事に、和宮はまだ気づいていない。
「そらっ!……どうした、和宮。ここでやめて欲しいか? やめてよいのか?」
熾仁は和宮を突き上げながら、意地悪く問い詰める。
もう、和宮は口を閉ざす事も耐えられなくなり刹那そうに叫んだ。
「……いや……! ……や、やめ……止めちゃいやぁっ! お兄様っ、お願い……」
体が無意識に開き反応しただけではなく、快楽に屈して意地を張る事も放棄した和宮は、
熾仁の動きに併せて腰を律動し始めた。
夕刻の様に悦淫を狂おしく欲しては、与えられる快楽に歓喜をあげて呼応する。
その姿は和宮自身全く自覚していないが、とても皇女のそれではなく、まるで性を売る
事を生業とする遊郭の女のようだ、と熾仁は思った。
世にも高貴なる娼婦の作出が、熾仁によって成されたのだ。
乱れては遂に潮を吹き、幾度となく達しては失神を繰り返す和宮を、熾仁はまだ果てる
事無く貫き続ける。
ようやく多量の精を和宮の蜜壷内部に打ち放ち終えると、熾仁は満足そうに自分の作出
した芸術作品を見つめた。
高貴なる娼婦の寝顔はまだあどけなく、未だ聖女のようであった。
――それからしばらくの間、和宮は機嫌もよろしく有栖川宮家に留まり暮らしていた。
そこに絶望的な知らせが届いたのは、万延元年(1860年)4月のある日の事であった。
尊王攘夷を旗印として倒幕を目指す連中の力を殺ぐ為に提案された、公武合体。
……すなわち皇女和宮に対する徳川 第十四代将軍家茂への、降嫁の出令が出されたの
である。