概要
- 合成される場所:主に根の先端の組織内。形成層や成長中の芽の組織、発芽中の胚の中でも合成される。
- 生理作用:側芽の成長促進、クラウンゴール形成、種子発芽促進、老化の抑制、クロロフィル合成促進、気孔の開放、
歴史
| 1955年 |
カルスの細胞分裂を促進する物質を単離。カイネチンと名づけられる。その後トウモロコシからも単離され、ゼアチンと名づけられた。細胞分裂を促進するこれらの化合物を総称してサイトカイニンと呼ぶ。 |
- サイトカイニンは主に根の先端でアデノシン5リン酸とイソペンテニルプロリン酸から転位酵素の働きで合成され、通導組織を通り、蒸散流に乗って地上部に移動する。
| 1913年 |
G.Haberlandtはジャガイモを切断した時、その切り口で細胞分裂が始まることに着目。この切り口にできる物質を癒傷ホルモンと名づけた。それがサイトカイニンであった。 |
生理作用
①カルスの再分化の調節
- オーキシンと共にカルスの増殖を促進する。オーキシン濃度を下げサイトカイニン濃度を上げるとカルスから葉芽が分化し(=不定芽)、逆にオーキシン濃度を上げサイトカイニン濃度を下げるとカルスから根が分化する(=不定根)。
②頂芽優勢解除
- サイトカイニンを側芽に与えると、頂芽優勢が解除されて側芽が伸長する。
- 側芽の伸長ではオーキシンとサイトカイニンの間で相互作用がある。
- witches’-broom(魔女のホウキ、天狗の巣)は、樹木の枝に感染した微生物の生産したサイトカイニンの作用で頂芽優勢が解かれ、側枝の成長調節のバランスが崩れたために生じた形態変異である。
③細胞の拡大成長(太らせる成長)
オーキシンのみ=幅, 長さ共に増加する。
オーキシン+ジベレリン=幅は変わらず、単に長くなる。
オーキシン+サイトカイニン=長さは変わらず、単に太くなる。
- このことからサイトカイニンは、セルロース微繊維の配向を長軸方向にすることで細胞伸長を太らせる方に決定付ける。
④老化の抑制
- 通常、植物の葉を切り離すと退色し、黄ばむ(クロロフィルやタンパク質, 核酸などが分解されるため)。しかし葉の一部にサイトカイニンを塗布しておくとその部分のみ葉の退色が遅れ、つまりは老化を防ぐ。サイトカイニンはアミノ酸や糖などといった代謝物質を吸引し、これらの分解を抑えている。
⑤クロロフィル/核酸/タンパク質の合成の促進
- クロロフィルはδ-アミノレブリン酸からプロトクロロフィライドを経て合成され、サイトカイニンはこのδ-アミノレブリン酸の合成を促進する。
- 核酸, タンパク質の合成も、同様にサイトカイニンにより促進される。
⑥気孔を開く
- 光合成の阻害は、葉の老化を進める要因の1つとなっている。サイトカイニンは気孔を開いてガス交換をさせ、結果的に光合成阻害による葉の老化を抑制する。
⑦形態変化
- 根粒:マメ科植物の根に根粒菌(Rhizobium)が感染すると、植物と菌との相互作用により根の形態変化が引き起こされ、根粒ができる。根粒中には多量のサイトカイニンが含まれるので、根粒形成にサイトカイニンが関与することが考えられる。
⑧種子発芽の促進
- レタスなどの種子の発芽調整には、アブシジン酸とジベレリンが重要な役割を果たすが、サイトカイニンも関係している。暗所では発芽しないレタス種子にサイトカイニンを与えると発芽する。詳細な機構は不明。
最終更新:2011年06月10日 12:57