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サマヨール

サマヨール

英名 Dusclops  学名 fantasumi mumiamorta
標準体高 1.6m  標準重量 30.6kg  特性:プレッシャー
進化過程: ヨマワル サマヨール →ヨノワール


「てまねきポケモン」。ヨマワルが成長することで進化を遂げる。
黒く小さな体・球状であったヨマワルから大きく姿を変え、
短くも力強い手足と、白くズッシリした体躯を得て、人間に近い形を成している。
暗い森や山、洞窟などを住処にする夜行性のポケモン。

不気味に光る真っ赤な一ツ眼は常に微弱に揺らいでおり、その動きを見た者、
つまり目を合わせた生物の脳に働きかけ一時的に神経を麻痺させてしまう凶悪な催眠効果を有している。
これはヨマワルの頃から持っていた能力だが、顔の奥の空洞部分に眼があったヨマワル時代に比べ、
頭部の表面に眼が浮き出ているため、より直接的に相手の視界と脳回路に呪われた眼光を焼き付けることができ
もともと強力であった催眠効果を更に増幅させている。
また、生物を幻惑する動きを本能的に知っており、
手まねきするような妖しいモーションをとることで、
眼と同じように見た者を無力化する催眠効果を与えることができる。
こちらは及ぼす効果が少々異なるようで、
かかってしまうと手招きに応えるように自らサマヨールに近寄っていってしまう。
そうして獲物の自由を奪い、苦労無く餌である肉を得る。これが彼らの狩りのスタイルだ。
どこまでも追いかけ死をもたらすヨマワルと対照的に、
自分は動くことなく獲物を引き寄せて死を与える、恐るべきポケモンである。

だがしかし、意外にも普段は温厚な性格で、必要以上の狩りをすることはなく
空腹時でなければ、出会ってしまっても催眠もかけてこず、襲いかかってくることはあまりない。
しかし警戒心は強く、こちらに危険がないとわかるまでは、不気味な無表情で観察してくるので怖いところではある。
たしかに姿を見ただけで命を奪われてしまうようなイメージのある恐ろしいポケモンには違いないのだが、
おどろおどろしい見かけと凶悪な能力のため、必要以上に恐れられていることは否めない。
ちなみに人に慣れたサマヨールは、催眠能力の出力をほぼゼロにするようになるので
姿を直視したとしても安心である。イタズラで時折幻惑の動きをすることはあるが、引き寄せられてもそれ以上に害を及ぼすことはない。

ところで、死神を彷彿とする容姿のヨマワル同様、彼らの姿は一般的に広く知られている「ある物」を思い起こさせる。
彼らの真っ白な体に規律正しく走る細い横線の模様は、一見すればその姿を
「白い布を体に巻かれた人間」のように錯覚させるだろう。
そう、誰もが知っている古代エジプト文化の神秘の存在・ミイラである。
全身を包帯に包まれ、遺跡の奥で静かに眠り続ける死者。
サマヨールは、そんなミイラに酷似した外見をしているのだ。
正確に言えば、ミイラの方がサマヨールをモチーフにして作られたと言うべきなのだが、
面白いことにその背景には、古代エジプト人がサマヨールを上で述べた「死」のイメージと
正反対の概念の象徴として捉えたことに由来している。
死に直結する恐ろしい能力を持つサマヨールだが、
古代エジプトでは「死」とともに「不死身」のシンボルとしても扱われていたようだ。

エジプトの神話には「ホルス」という鳥の頭を持つ太陽神が登場するが、これはネイティオがモデルとなっている。
古代エジプト人は、一日中太陽を見つめ続けて動こうとしないミステリアスな鳥ポケモン・ネイティオを
その神秘性から太陽の化身として神格化し、敬っていた。
古代人の神官たちは、ネイティオに供物(食料)を捧げることで手なずけ、現代のトレーナーのようにその力を行使していた。

また同神話には、死者の国を統治するミイラの姿の神「オシリス」が描かれている。
こちらはサマヨールが神格化された存在であり(ヨノワールとする説もある)、
初期の神話ではやはり死の象徴として恐れられていた。
地上に現れるサマヨールはこのオシリスの手下または分霊であり、
その日死ぬべき人間を探して冥界へ誘うためにやって来るのだと考えられていた。

サマヨールのターゲットとされた人間は神官に助けを請い、
神官たちは守護神であるネイティオを使役し退けようとしたが、
ネイティオはエスパータイプ。サマヨールはゴーストタイプ。天敵である。
ポケモン間の相性がよく知られていなかった当時の人間が、そのような力関係など知る由も無い。
更に、サマヨールには上で述べた催眠術以外にもう一つ、特筆すべき戦闘能力がある。
それは、防御能力の高さだ。
ヨマワル時代から頑強であった外皮は、進化によって輪をかけてその弾力と強度を増し、
生半可な攻撃ではかすり傷のひとつもつけることもできない。
それどころか、力自慢のポケモンが、並のポケモンであれば命を落としかねない渾身の一撃をぶつけても
よろめく程度で受け止め、倒れすらしない。それほどまでに彼らは強固なのだ。
その耐久性からくる持久力の高さは計り知れない。
対するネイティオは、特に攻撃面に優れた種族ではなく、
守りの面でもサマヨールに対抗できるほどの能力はない。
相性、素の戦闘力ともに、サマヨール相手では分が悪かった。
結果、神官側は無理な戦いをしては倒されてしまう、ということばかりであったようである。

太陽神の力をもってしても打ち勝てない死の運命。恐ろしいものである。
サマヨールの強さによって、その主人あるいはそのものとされるオシリスの権威は上昇していった。
オシリスは非常に力の強い神となり、多くのエピソードが作られていった。
認識が高まる中で古代人たちはサマヨールを倒せない理由を考えたが、最終的に
「死を司る神の加護を受けているため、死ぬことがないから」という解釈にいたった。
この頃から、死と合わせて不死身のイメージが持たれるようになっていったようだ。
避けられない必然であるならしかたがないと、いつしか人々は諦めサマヨールのもたらす死を受け入れるようになっていった。
冥界の神が抗いようのない死の運命を定めて使者を送ってくるのだから、甘んじて受け取るしかない、と。
こうしてサマヨールによりもたらされる死は、古代エジプトの日常に浸透していった。

逆に、そんな認識があったからこそ、サマヨールに捕らわれずに最後まで生きることができた人間は非常に尊いものとされた。
サマヨールによって冥界に落とされなかった……つまりオシリスに呼ばれることなく天寿を全うできた場合、
その者はオシリスが死を与えなかった、あるいは与えることができなかった選ばれた人間であるという考えが生まれた。
その魂はサマヨールによって冥界に運ばれることがなく、死後も現世にとどまることができ、
魂の入れ物である肉体さえ残っていれば、魂は再びその体を拠り所として復活することができると信じられた。
しかし、普通に置いておくだけでは当然遺体は腐敗してしまう。
そこで、内臓を摘出し、体を乾燥させることで防腐処理を行い、
いつか魂が戻ってくるまで、肉体が形を保っていられるようにミイラとして残しておくようになった。
この時、不死身と不滅の力を持つサマヨールの姿を模して
ミイラを白い包帯で巻き包むことで、肉体と魂の不滅を願ったというわけだ。
これは結果的にミイラの保護に役立ち、保存状態の向上に繋がった。
おかげで現代まで綺麗なまま残っているミイラも多い。
魂はわからないが、少なくとも肉体の不滅は達成されているぞと古代人達に伝えてやりたいところだ。
また、「こいつはお前たちの仲間であるから、お前たちの手で冥界に持っていく必要はないぞ」という
サマヨールへのメッセージ及びカモフラージュにもなっていたようである。

この風習が続く内、徐々にミイラを作る理由とサマヨールを模す理由が混合され、
いつしかサマヨールには不死と再生の象徴という印象が植えつけられた。
その内に、彼らの支配者たるオシリス神も同様の見方がなされるようになり
初期の死神のようなイメージから一転、死と再生・不滅の神として
一躍人気の神に成り上がっていった。
文化と共に神話や伝説が変遷していくことはよくあることだが、
一定の地域内、かつ短期間でここまで大きな転換を遂げることは珍しい。
興味深い話である。

余談だが、今までにサマヨールがトレーナーの手元で死んだ例はなく、
自然の中で死骸が見つかったことも、絶命する瞬間が目撃されたこともない。
寿命も不明で、老化したり弱った個体も見つからず、死んだ痕跡すらも見あたらない……
まさか本当に不死なのではないかと疑ってしまう。どうなっているのだろうか?

エジプトの神話大系に大きく影響を与え、奇妙だが神々しくもある不思議なミイラの由来となったサマヨール。
恐ろしくも神秘的でホラーな魅力があふれる彼らには、まだまだ謎が秘められている。

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最終更新:2010年08月30日 00:22