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ちょくえは走りやすいようにジャージに着替え、坂本は訓練所にあったオトモ用の防具を身にまとってユクモ村の出入り口付近まで歩いてくる。
村から出てすぐのところに小さな広場があった。ちょくえと坂本はそこで軽く準備運動をする。
「渓流を走ってこいとは言われたけど、どこをどれだけ走れば良いのか聞いてないな」
「ニャー 教官さんは自分の好きなように走れって言ってたニャ。手を抜いてもいいけど後々苦労するのはお前らだぞってことらしいニャ。」
「だよなぁ……。」
熱血指導に定評のある教官だが、意外と自主性を尊重するやり方のようだ。
確かに一人でやるよりは俄然やる気になれるが、かといって自主的にというよりはやらされている感じがする。
ハンターを志す者、何かしら”ハンターにならなくてはならない理由”がないと上達しにくいというデータがギルド内で出ていたのをちょくえは思い出した。
ポッケ村に配属された星屑という優秀なハンターは、幼い頃ポッケ村で生活をしていたところ、突然村に現れた【ティガレックス】に両親を殺されたらしい。
それからあの【ティガレックス】に仇を討ちたいがために、ハンターになるための厳しい訓練を乗り越えてきたとか……。
思えばちょくえにもハンターになりたい理由があった。
”もう誰にも馬鹿にされたくない”
才能がないことを棚に上げて何事にも本気で取り組んでこなかった自分が悪いというのは、ちょくえ自身もなんとなく分かっていた。
でも周りに馬鹿にされる、というのはいくら自分に落ち度があっても頭に来るものだ。
ギルドに入れば変われると思った。ハンターになれば変われると思った。
しかしその願いの根本には”今まで馬鹿にしてきた奴らを見下してやりたい”という黒い願望があった。
ギルドによればこういった黒い願望があるハンターは成長が遅いらしい。
才能がないことに加え、そういった気持ちも持っていたちょくえは、だからこそ今でも採取クエストしかできない落ちこぼれになってしまったのだろう。
坂本の言葉を聞いて少々真剣に悩んでしまったのか、坂本が不安そうにちょくえの顔を覗いていた。
「……本当に大丈夫ですかニャ?」
「ん? ああ大丈夫だよ。頭は痛いけどなんとか我慢する。」
自分の悩みをアイルーである坂本に押しつけるわけにはいかない。ちょくえは無理に笑って見せた。
「さて。準備運動も済んだし、走りに行くか!」
「はいですニャ!」
ちょくえは何かを振りきるように走りだす。ちょくえのペースに合わせて隣を走る坂本もやる気満々のようだ。
最終更新:2014年03月16日 19:13