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後ろから「ちょくえさん」という坂本の叫びが聞こえた気がした。
時間にすると一瞬から1秒程度のものだが、こういう状況を実際に目の当たりにすると、かなりスローモーションで映る。
身体が動体視力の限界を超えてなんとか逃げようとしているのか、ただ神様が自分を殺した奴ぐらい目に焼き付けておけと言いたいのか。
無慈悲にも振り降ろされる強靭な腕。しかし響いた音は骨を割って肉を叩く音ではなく、ガキィンというどこにでもある普通の金属音だった。
ちょくえの目の前には竜骨で拵えた大剣で【ジンオウガ】の腕を支えている教官の姿があった。
教官はちょくえの顔を見ずに「わりぃな無理させちまって」とだけ言うと、【ジンオウガ】の腕を突き返すように大剣を押す。
重量武器を扱っているとは思えないほど俊敏な動きで再び大剣を構え直すと、すぐに【ジンオウガ】の腕に容赦なく切っ先を振りおろす。
【ジンオウガ】はとっさのタイミングでこれを回避すると、逃げるように森へと去っていく。とりあえずは何とかなったみたいだ。
危機は去ったものの、ちょくえの頭は未だに真っ白だった。眼の前に【ジンオウガ】が現れて、自分を殺そうとした時に、教官が出てきて追い払ってくれた。
たったこれだけのことだが、未だに理解できない。次第にぽつぽつと記憶がよみがえってくるにつれて、ちょくえは泣きだしそうな顔をして教官に縋った。
教官はちょくえの頭をポンと軽く叩くと、「もう大丈夫だ。今日は帰ろう。」と優しく言いかける。
最終更新:2014年03月16日 19:18