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「ちょくえ、大丈夫か?」
《渓流》からユクモ村に帰る途中、教官がちょくえに問いかける。
大丈夫です、とちょくえは答えているが、その声に覇気を感じない。
坂本もちょくえを心配しているようだが何も言えずにいた。
「今日は本当にすまん。最近ジンオウガが現れたって話を村長から聞いたのをすっかり忘れてた。」
「気にしないでください。自分に技術がないのが悪いんです。」
「とりあえず生肉はもういいから、今日は家に帰って休め。あとこの場で言うとすごく意地悪に聞こえるかもしれないが、ギルドマスターからちょくえに伝言だ。」
伝言…?とちょくえは首をかしげる。
ギルドからは抜けた筈だ。今更ギルドに世話を焼かれる筋合いはないし、再びあの場所に戻ろうとも思っていない。
「あのジンオウガを討伐してほしいらしい。報酬はギルドに属するハンターの証明と報酬金とのことだ。」
「なんで俺なんですか? 俺がユクモ村に配属された時は別のハンターがジンオウガを討伐したと思うんですが。」
「今、ロックラックの街でジエン・モーランの亜種が現れたらしくて、手の空いているハンターはほとんどジエン・モーラン亜種の討伐に向かってる。渓流付近に住んでいてギルドに所属していない野良ハンターの存在なんてギルドからじゃ分からないからな。唯一配属された村で生活してるお前だけが頼りってわけだ。」
「でも、俺にあんなのを討伐する技術なんて……。」
「なんのためにお前は俺のところで修行を受けているのかもう一度思い出してみろ。」
教官の声色が少し変わる。
”モンスターを狩れるように努力する”
ちょくえは確かにそういった。その精神がこんなところで砕けてもらっては困る。
「……。」
「忘れたわけではないんだな。さすがに目の前で殺されかけたモンスターを討伐してこいなんてそんな鬼みたいなことは言えないが、これはお前と俺だけの問題じゃない。ユクモ村全域に関わる重大な問題だ。……お前にユクモ村の未来を託したい。」
「……分かりました。やってみます。ジンオウガを討伐出来るように努力します……!」
「よしそのいきだ。でも今日は休めよ? 焦らなくても渓流に食料がなくなるまでは安心だからな。」
「はい。」
ちょくえは歯切れよく返事をする。
「ニャ。そろそろユクモ村に着きますニャ。」
坂本の声を聞いて軽く周りを見渡すと、辺りの河川から湯気が上がっているのが見えてきた。
ユクモ村の出入り口には村長やギルドマスターを含め、数人の村人が群がっていた。
ちょくえのようなハンターでもすがに心配ぐらいはされるのか。それとも殺されたのか生きているのかを確認するために野次馬をしているのか。
最終更新:2014年03月16日 19:19