20ページ目
「ちょくえ! 起きろ!」
次の日の明け方。教官がちょくえを起こしに来てくれた。
といってもまだ4時前だ。修行は朝早くからのやるイメージが強いが、さすがに早すぎる。
修行と行くと目を輝かせて教官についていってしまう坂本もまだ夢の中だった。
「ん……。」
寝ぼけた目をこすりながら声の主を探すちょくえ。目の前には明け方で肌寒い気温の中、露出度の高い教官特有の防具を身にまとった教官がいた。
「どうした。訓練所の朝は早いぞ! 今日は武器を使った修行に入るからな! 朝のうちにランニングをすませておけ!」
相変わらず自重しない声の大きさに、近所迷惑にならないだろうかとちょくえは割と本気で心配する。まあ教官だし仕方ないと割り切ってもらえれば良いのだが……。
「修行って……。まだ4時前じゃないですか……。」
「さっきも言っただろう? 訓練所の朝は早いのだ!」
「早すぎますよいくらなんでも……。」
「何を言ってる。いつ村に凶悪なモンスターが現れるか分からないだろう? 自然界に『あと5分』はないんだぞ?」
至福の『あと5分』を要求する前に釘を打たれて渋々起き上がるちょくえ。それにしても坂本はいつになったら起きるんだろう……。
ちょくえは大きな欠伸をかきながら、坂本をゆすり起こす。
「むにゃー……。魚がいっぱいにゃー……。おいしそうニャー……。」
「魚はどこにもいないぞ坂本。」
「これは水をかけてやれば起きるんじゃないか?」
教官がとんでもないことをおっしゃっている。こんな時間に水をかけて起こすなんて拷問にも程があるだろう。
「ん? 可愛そうだって目をしてるな。魚がいっぱいってことは坂本は水辺にいるってことだ。水をかければ夢の中で川なり海なりに落っこちて目が覚めるんじゃないかと思ってな。」
「……意外とメルヘンなんですね教官は。」
「そこらへんで怪獣が火の玉を吐き出してるこの世界でメルヘンなんて言われてもなぁ…」
教官は苦笑しながら台所にあった手頃なコップに水を注いでいく。てかホントにやるのかよ……とちょくえは若干呆れた。
「ちょっと冷たいけど我慢しろなー」
そういいながら我慢させる気があるのかないのか分からない勢いで坂本の頭に水をぶちまける。
「みぎゃああああああああああああああ!!」
教官の声を軽く凌駕する叫びで坂本が飛び起きた。これは真面目に近所の方に謝りにいかなければ……。
「ガハハハ! やっぱりこれで目覚めたな! おはよう坂本! 夢の中で水におぼれてなかった?」
「にゃ!? にゃんでそれを!? てかなんでこんなにびしょびしょなんだニャ?」
「おいおい……。ほんとにおぼれてたのかよ……。」
「だから言ったろう? 水をかければ絶対に起きるってな。」
水をかけられて盛大に叫んだ坂本はともかくとして、なんだかんだで目が覚めてしまったちょくえは、教官に言われるがままランニングの準備を始める。
それに釣られて坂本が「修行ですかニャ!?」と予想通り目を輝かせて準備に取り掛かった。
「うむ。では行ってこい。戻ってきたら訓練所に寄ってくれ。朝飯ぐらいご馳走しよう。」
「ありがとうござます。じゃあ行ってきます。」
「行ってきますニャー。」
頑張ってこい!と手を大きくふって教官が見送ってくれた。
最終更新:2014年03月16日 19:22