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「……。」
闘技場で育ったモンスターは少なからず教育がなされている。
闘技場ではハンターが採取を始めるか、道具を手にとるか、剣を抜くまでは動かないようにモンスターをしつけているため、ちょくえが動かなければジャギィも基本的には動かない。
大型モンスターなんかは見つけた途端に野生の本能を発揮して襲いかかってくるが、大型モンスターでも【エスピナス】のようなモンスターは野生でもそう簡単に襲ってこない。
「……。」
無駄に長い沈黙が降りる。いくらしつけがなされているとは言っても、相手はモンスターだ。放っておけばいつかはしつけなんて完全に無視して襲ってきてもおかしくないが……。
『おい! ちょくえ! いつまで突っ立ってるつもりだ! 早く攻撃しろ!』
「!?」
いきなり闘技場にマイクでくぐもったような音が響き渡る。それも特大で。
長い沈黙から解放されたのは良いとして、ジャギィの方はこれを『音爆弾』か何かと勘違いしたのか、ちょくえ目がけて突撃してくる。
「ちょ!? なんでこっち来るの!? 俺は何もしてねぇぞ!?」
剣を抜いてさっを振れば死ぬ相手に対して必死に逃げるちょくえ。
『お前の持ってる大剣で切り落とせば死ぬだろうが! とにかく早く剣を抜け!』
教官の叱責が飛ぶ。
分かっていても長いブランクがあるちょくえは大剣を抜くだけで躊躇してしまう。
ジャギィはその間もお構いなしに迫ってくる。
「!?」
ほんの数メートルまでジャギィが近付いてきたところで、ちょくえの背中からついに大剣が抜ける。
その勢いで思わずひっくり返りそうになるが、なんとか持ち超え耐えて大剣を構える。
久しぶりの感覚だが、不思議と身体は勝手に動いた。
(構えた状態からだと縦に切るより横殴りに斬った方が動きやすかったはずッ!)
ギルドにいたころの知識が走馬灯のように頭によみがえってきた。
既に手を伸ばせば届きそうな範囲まで迫ったジャギィをちょくえの大剣が一閃する。
ズバッ!と大剣が肉を叩き斬った音が響く。大剣の軌道にあわせてジャギィの血がまるで残像のように尾を引いていく。
「……。」
目の前には首の下辺りからばっさりと分裂してしまっているジャギィが転がっていた。
確実に即死の筈だが、ジャギィの目はまだかろうじて光があって、舌を出してぴくぴくと気味悪く動いていた。
ちょくえはモンスターを殺すことがあまりなかったため実感が湧かなかったが、モンスターもモンスターでとりあえずは生きている生き物だ。
確かに人間に対して悪影響を及ぼすものばかりだけど、こう簡単に殺せてしまうと初めて殺人を犯したような、変な気分になる。
もっとも、殺人を犯したことなんてあるわけがないのだが。
なにやら言葉に出来ない心境に浸っていると、背後の扉が再び動いた。

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最終更新:2014年03月16日 19:25