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「泥棒だ!泥棒だ!捕まえてくれ!」
白昼、怒号が響き渡る。
指を指されながら、大きな袋を抱えて商店街を駆け抜ける少年に人々は振り向いた。
正義感の強い者は少年を捕まえようと飛びかかるが、少年はそれをこ慣れたステップでかわしていく。
そうして逃げ切った少年が向かったのは、古びた孤児院だった。

「帰ったぞ」
少年が正面玄関の扉をノックすると、中から綺麗なストレートロングの髪をした高校生ぐらいの少女がドアを開けた。
「お帰りなさい、フクナガ」
フクナガと呼ばれた少年は、「ただいま」と言って孤児院の中へと入る。
孤児院の中には、ドアを開けた少女以外誰もいなかった。

「りりあ、みんなはまだ帰ってないのか?」
フクナガが尋ねると、りりあと呼ばれた少女は答えた。
「えぇ、まだ誰も帰ってないわ。苦戦してるみたい」
フクナガは、「そうか」と答え、抱えていた大きな袋を降ろす。
「俺は今日は絶好調だった、俺1人で全員分の食糧を確保できたかもな」
そう言うと、フクナガは袋からパン等の食料品を次々と取り出す。
「流石フクナガ、これで当分は安心ね」
りりあはそう言うと、胸を撫で下ろして「ほっ」と一息ついた。

フクナガは疲れたのか床の上に直接寝転がり、仰向けになって目を閉じる。
役割である家事を大方終わらせたりりあも、フクナガに寄り添う形で仰向けに寝転がる。

「珍しいな、お前が隣に来るなんて」
フクナガは目を閉じたまま、りりあに話しかけた。
「だって、二人きりになる事って珍しいじゃない」
りりあは、くすっと笑ってそう言う。
「そうだな」
フクナガもりりあに応えるように、ふっと笑った。

「少し寝る?」
疲れてるであろうフクナガを労わって、りりあは言う。
「まだいい」
少し素っ気無い返事だが、フクナガのその返事からは「二人きりの時間を大切にしたい」という意図が簡単に読み取れた。

しばらくの沈黙の後、2人は同時に口を開いた。
「なぁ」
「ねぇ」
2人は少し驚いて、向き合った。
目が合って、見つめ合う形となった。
寄り添って横になっている2人の距離はあまりに近く、互いに相手の事を普段よりも強く意識させるには充分だった。

しばらく視線を合わせたまま数秒、すると2人は急に笑いが込み上げてきた。
「ふふっ」
「くすっ」
フクナガとりりあは付き合っていた。
互いに強く愛し合い、孤児院の仲間からも羨ましがられる程の仲だった。

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最終更新:2014年04月26日 14:55