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この孤児院には、5人が支え合いながら暮らしている。
フクナガは万引きのプロで、食糧や必需品の調達を担当している。
政府が力を無くし、完全に荒れ果てた日本で生きて行くにはこうするしか無かった。
内気で体もあまり丈夫でないりりあは、主に家事炊事を担当していた。
不器用ながらも健気に頑張る彼女の姿に、フクナガは惹かれていった。
そしてまたりりあも、必死に生き抜こうとするフクナガの勇敢さに惹かれていったのだった。
ドアをノックする音で、フクナガは目を覚ました。
いつの間に寝ていたのか、あれからどれぐらい経ったのかはわからないが、日は落ちかけていて辺りは薄暗かった。
ふと隣を見ると、りりあが寝息を立てながら気持ち良さそうに眠っていた。
フクナガは、側にあったタオルケットをりりあに掛けると、ノックの音がする玄関へと向かった。
鍵を開けるとそこにいたのは、同じく孤児院で暮らす1人のピンチラだった。
「もー、開けてくれるの遅いっすよー」
わざとらしく泣き真似をして見せるピンチラに、フクナガは「すまん、寝てた」と答えた。
「いいっすよー、そう言えばりりあ姉さんは…?」
ピンチラの問いに、フクナガは黙ってりりあの方を見る。
「あっ、寝てるんすね。まぁ毎日夜中まで家事大変でしょうし、そりゃさぞお疲れでしょう」
フクナガはピンチラの言葉に「そうだな」と言って頷く。
「あれ、そういやりりあ姉さんお休みモードじゃ飯作れなくないっすか?」
ピンチラは問いかける。
工事現場で働いてるピンチラは、孤児院メンバーの貴重な稼ぎ頭だ。
「今日はそのまま食える物を持ってきた」
ピンチラは大げさに喜んだ。
「さっすがフクナガさん、準備いいっすね」
はしゃぐピンチラに、フクナガは「りりあが起きる」と注意して軽く小突いた。
ピンチラは悪びれた様子で、「すんません」と無邪気に舌を出して謝った。
玄関先で立ち話をしていると、ぷろふぃーると氷河期が帰ってきた。
「おう、戻ったぜ」
氷河期はそう言うと、「はい、おみやげ」と言ってフクナガに缶コーヒーを一本渡した。
「ありがとな」
フクナガは氷河期に礼を言う。
氷河期は、昼間フクナガ同様に食糧の調達を行っているが、夜はコンビニでバイトをしている。
「ただいま」
氷河期に続いて穏やかな笑みを浮かべながら帰ったのがぷろふぃーる。
メンバー最年長だが華奢で体が弱く、食糧を調達する事も働く事も出来なかった。
しかし何かしようと考えた結果、ぷろふは経済管理と街の情報収集を担う事になった。
それぞれ役割を分担し支え合う5人の絆は、物凄く深いものだった。
最終更新:2014年04月26日 14:56