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「シャワー上がったぞー」
髪が生乾きの氷河期が戻ってきて言う。
「それじゃ、二番目貰いやす」
そう言って、ピンチラがシャワー室へ向かった。
「あら、ぷろふその本どこで手に入れたんだ?」
氷河期はぷろふに質問する。
ぷろふは普段新聞を読むか家計簿を付けているため、読書をしているのは珍しい事だった。
ぷろふは氷河期を見て、話した。
「これ、図書館で借りてきたんだ。図書館ではいろんな情報が集まるからね」
話し終わると、また本に視線を戻す。
「図書館…か」
物心ついた時からこの孤児院にいたフクナガは、図書館に行った事が無かった。
かつて孤児院には院長と呼ばれる人物がいた。
それぞれ捨てられたり、訳ありだった5人はその院長に育てられたため、院長の事をとても慕っていた。
しかし、院長は突然病気で死んでしまい、孤児院は実質廃墟となった。
元々この土地を持っていた大手の不動産屋倒産し、国には土地を管理するだけの余裕が無かった為、建物の取り壊しは行われなかった。
それ以来、5人はずっとこうして生きてきたのだ。
ピンチラがシャワーから上がり、続いてぷろふ、次にフクナガがシャワーを終えた。
そして氷河期は夜のバイトへと向かい、ピンチラとぷろふはすぐに眠りに付いた。
帰宅後昼寝したせいで目が冴えていたフクナガは、気分転換にと孤児院の庭に出た。
庭にある古びたベンチに腰掛け、空を見上げる。
快晴の空には満面の星が散りばめられており、フクナガは心を奪われた。
「綺麗…」
思わずフクナガはそう呟いた。
フクナガの目から一滴だけ、涙が落ちた。
「フクナガ…?」
フクナガは呼ばれたので振り向くと、りりあがいた。
「起きたのか」
そう言ってフクナガはまた空を見上げる。
「空、見てみ。綺麗だろ」
フクナガがそう言うと、りりあもフクナガの隣に腰掛け空を見上げた。
「ほんとだ…すごく綺麗」
りりあも心を奪われる。
「星って神秘的だよな、あんなに綺麗に見える星の光の中には今から何百年も何千年も前の光があるらしい」
フクナガはりりあにそう語りかけると。
「なんだかすごく壮大なお話ね」
りりあは空を見上げながら言った。
そしてりりあは、左隣のフクナガの手を握ってまた口を開いた。
「私達もあの星の光のように何百年も何千年も愛し続けたいのに、人間の寿命って短いよね」
フクナガが星空からりりあに視線を移すと、りりあは空を見上げたまま泣いていた。
「りりあ…」
そう言って直後、フクナガはりりあを強く抱きしめた。
突然の事に少し戸惑っているりりあに、フクナガは言う。
「俺は何百年も何千年もお前を愛する。例え命は尽きてもあの世で愛する。それぐらい、好きだ」
フクナガは、りりあの唇に自分の唇を重ねた。
最終更新:2014年04月26日 15:00