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「水素はウイルスを摂取している。俺は摂取してない。そういう状態で俺達はお前のクラスメートに会いに来たんだ」
学校の敷地内からの逃走に成功した平行が走りながら、合流したちょくえに説明をする。喋りながら走るのちょっときつい。
「あー、平行、そのクラスメートのことなんだが、生きてることを期待しない方がいい」
残念そうな口調で水素が平行に話しかける。
「え、どゆこと……」
「俺が撃てと言ったが、何か問題があったようだし巻き込みすぎたようだな」
ちょくえが前を向いたまま低い声で口を挟む。その横顔を一瞥した水素がちょくえの言葉に続ける。
「まぁ、簡単に言っちゃうと適合者にロケットランチャー撃ったった」
「撃ったったかぁ……、俺達が埼玉まで来た意味エ」
現状の説明が終わって数秒の無言が訪れた。まだ言い足りないことはあるはずだが言葉にできない。
「で、どこまで逃げるつもりだ、俺はそのウイルスに興味があるが」
学校近くの路地裏で、ようやくちょくえによって無言が打ち破られる。
「さぁ、どうしようか……」

ドォォンッ!

「あ?」
「佐藤ぉぉおおっ!!」
平行、水素、ちょくえの3人の後ろから1発の銃声と叫び声が裏路地に響き渡った。叫び声はもはや叫びではなく咆哮といった感じだ。インパクトしかない。
そのインパクトオンリーの音と声に驚いた3人が足をとめて振り返ると、拳銃を両手で構えている入間向陽高校の制服が銃口をちょくえに向けて、ラスボスでももう少しレベルが低いであろうと思わせるほどの並々ならぬ威圧感を放って立っていた。
「ああ、お前か」
ちょくえが反応する。自分に向けられたら銃口を特に気にもせず、挨拶みたいな返し方だ。
「何でみんなを殺した!?」
ちょくえのその様子に反発するように、拳銃を構えたまま生徒が再び叫び声を上げる。流石に今度は咆哮というほどではない。
が、生徒の顔から怒りが満ちあふれているのがぱっと見でわかるのは変わらない。
「ふん、まぁ、その解釈で間違ってはいないな。で? お前は俺を殺す気か?」
生徒の怒りに対してちょくえはひたすら軽い。

「ああ!」
「そう、か。……小銭、ヘリは出てるか?」
ポケットから小型のマイクを取り出したちょくえが無線で小銭に問いかける。この一連のやり取りをただ傍観していた水素と平行が顔を見合わせ、首を傾げる。
「あー、今丁度風俗の真上通ったわー。数は1。舐めてかかってきてるぜ。埼玉に入れないけど報道のヘリのが何倍も多い」
マイクのイヤホン部分から小銭の声が漏れる。近くにバイトの娘でもいるのだろうか、何か嬉しそうな声にも聞こえる。
「なるほど。おい、顎、水素、アメリカにいっぺんに捕まるのが嫌ならさっさと逃げろ。だが覚悟はしておけ。俺は今はこいつの相手をする」
左手でマイクをポケットに戻し、右手で生徒を指差したちょくえが不適な笑みを浮かべた。気持ち悪い。
「覚悟って何の覚悟だよ……、まぁ、誰だか知らんけどとりあえず逃げますか」
「そうしますか。じゃあな」
笑みを浮かべるちょくえと怒りをあらわにする生徒を置いて、平行と水素が逃げるようにどこかへ走り去った。

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最終更新:2014年04月27日 16:52