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これはユバールの守り手となったキーファの物語である。
神を復活させるため、各地を巡る民族ユバール。
その民族には若き守り手となる少年がいた。
夜。静寂が森の中を包んでいたが決して気を抜くことは出来ない。
闇は魔物の根源。夜こそ魔が活発になる最も危険な時間帯であるからだ。
ユバールの守り手達もそれを深く理解しているため夜間の見張りは常に欠かさない。
「交代の時間です。休んでください、ダーツさん」
ダーツと呼ばれた、今まで見張りを続けていた男の肩に手が乗せられた。
「キーファか。私はまだ大丈夫だ。長旅で疲れているだろうしお前こそもう少し休んでいたらどうだ」
「なに言ってるんですかダーツさん。疲れてるのはお互い様でしょ! さっ、戻ってゆっくり寝てください!」
「うーむ、キーファにはかなわんなあ」
キーファに言いくるめられ、ダーツは渋々とテントへ戻る。
そして今までダーツが陣取っていた位置に同じようにキーファが座り込む。
今のユバールはキーファとダーツ、この二人の守り手によって支えられていた。
奇しくも二人とも外から来た人間であるのだが、一族からは厚い信頼を寄せられている。
血の繋がりはなくとも彼らはユバールの一族なのだ。
「アルス達、元気にしてるかなぁ……」
木々の間から見える星空を眺めながらキーファは呟く。
全てを捨てて守り手の道を選んだ彼であったが、故郷や親友のことを思い出さなかった日はない。
この道を選んだことに後悔はないが寂しく思う時もあった。
(あの遺跡に忍び込んで、不思議な石版を見つけてどれくらい経つっけな……)
そういえばあの時もこんなに静かな夜だったな、と懐かしむ。
最終更新:2014年08月20日 16:57