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「っと、いけないいけない。見張りに集中しなくっちゃな」

 自分に言い聞かせるように声を出し、眠気覚ましに両頬を軽く何度か叩く。
 その直後、奥の茂みから草が擦れる音が鳴った。

「!」

 魔物か、とキーファは剣に手をかける。
 その数秒後に茂みに潜んでいたものがその姿を現す。

「なんだ――」

 キーファの予想は的中していた――が、出てきたのはスライムだった。

「スライムか。見逃してやるからどっか行きな、しっしっ!」

 手で追い払う仕草をするものの、スライムは逃げ出そうとしない。
 知能の低い魔物とはいえ、力量差があるのは明らかのはずだ。

「なんだ? オレとやるってのか?」

 立ち上がるも尚、スライムは逃げる素振りすら見せない。

 ある程度の実力がつけば弱い魔物はこちらを避けるようになる。
 守り手となって修練を積んでからは特にそれらを実感していた。
 以前は一匹だけでも襲い掛かってきたオニムカデやリップスだったが、今はもう姿を見ることさえ滅多にない。
 たまに見かけても脱兎の如く逃げ出していってしまう。

 しかしこのスライムはどうだ。
 最弱と呼ばれるほどの魔物だが、キーファを前に逃げる素振りすら見せない。
 むしろ襲い掛かろうとしている風にも見える。

 スライムに襲い掛かられたなんてことは冒険初日くらいにしかない。

「なんか逆に不気味だな。まあ少し脅かせば逃げるだろ」

 キーファは鞘からはがねのつるぎを引き抜き、スライムへと構える。

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最終更新:2014年08月20日 16:58