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「そらっ!」
勢いよく剣を掲げるもスライムは驚く様子も見せない。
それどころかニヤニヤと不気味に微笑み始める。
「こ、この野郎……。馬鹿にしてんのか……!?」
たかがスライムに胸の内を見透かされたようで顔が赤くなる。
しかしよくよく考えてみればスライムが逃げようとしないのにも無理はないのかも知れない。
キーファとスライムの間には多少の距離がある。
ある程度の知能があれば剣での攻撃は届かないと簡単に分かるのだ。
最も普通のスライムにはそんな知能もないのだが。
「ふん、だったらここからでも攻撃が当たるってこと教えてやるぜ」
一呼吸の後、キーファは掲げていた剣を勢いよく振り下ろす。
当然、先にいるスライムに剣が触れることはなかった。
だが剣から発せられたものは別だ。
かえんぎり。
キーファが得意とする剣技の一つで、剣に炎の力を宿して攻撃するといったものだ。
通常は炎と共に斬撃を浴びせる技なのだが、炎だけを少し遠くへ飛ばすことも出来る。
つまり少し距離が離れていても呪文のように攻撃することが可能なのだ。
剣から放たれた炎はスライムへと向かっていき、その僅か手前で弾け消える。
だが、それでもスライムは微動だにしなかった。
最終更新:2014年08月20日 16:59