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ジムリーダー協会における一番偉い人から下された条件――それは、ホウエン地方と呼ばれる地の中の、ルネシティでジムリーダーへと挑め、というものだった。
チクワブは一旦躊躇したが、やはりしないと確実にクビがとぶ。もしくはモノホンのクビがとぶ。
最悪の事態を免れるため、チクワブは仕方なく、旅の支度をするのだった。
そして三日後。
チクワブは船に乗り、ホウエンを目指す。
ボールから出たダイノーズを傍らに、チクワブは溜息を一つ、フウ、とつくのだった。
「ダイさ~ん、正直いってさァ、勝てる自信ないんだけどー。」そんな気弱なチクワブの言葉に、ダイノーズは応じる。
「何いってんだよ、オマエさ、リーダーに就任したときさァ、『コンビニのおでんの具人気ランキング一位にランクインしてやるぜ』とか言って張り切ってたじゃん。こんなとこでヘバるのか?」
ダイノーズのそんな呼びかけに、チクワブは「はーい・・」と、答えるのだった。
そして――舞台はついにホウエン地方、ルネシティに。
幻想的な町だな、と、チクワブは独り言を呟きながら、ジムを目指す。
「えーと・・ここは波乗りしなくちゃいけねーんじゃねーの・・?」
ダイノーズが、目の前に広がる光景を見ながら汗を垂らす。
そこには――広大に広がる、蒼い水。というか、小さな海だった。
「何コレ?ジムから挑戦者に対しての嫌がらせですか?これは。」チクワブが海の向こうに見えるジムを見る。
――しばらくして、チクワブはダイノーズへと命じた。
「よし、ダイ、泳げ。」
「え?ちょっ、まっ・・ガボボボ!!オレ泳げねェんだけど!イヤマジで!普通に考えて!岩ポケモンに泳がせるトレーナー居る!?」
ダイノーズの必死の反論虚しく、チクワブはダイノーズを海へ突き落とし、その上へ乗る。
「泳げや泳げやぁぁ!さっさとしろよカスがァ。ヒャッハッハ・・」
チクワブはまるでキャラが変わっていた。ジムに対するプレッシャーから、チクワブは狂ってしまった。
・・いろいろ有りながらも、ついにチクワブ達はジムの前へと着いた。
チクワブの足は、小刻みに揺れている。
「おーう、今回は立場が逆だな。いつもは俺たちがジムで待つ側なのに・・」
ダイノーズはそこまで言うと、チクワブの顔を伺うように見る。
そして、チクワブが続きを言うかのように。「・・今回はこっちが挑む側かあああ。」
チクワブが一言言い終えた後、一人と一匹は、溜息を同時につくと、ジムの中へと、入ってゆくのだった。
「――たのもォォォ!なんやかんやでシンオウ地方からやってきました、ジムリーダー・・ダニーです!」
チクワブは入ると同時に、威勢の良い声を上げる。
「イヤ、オマエそんなカッコイイ名前じゃないから。もっとチクワな名前だから。」
ダイノーズがチクワブに言い放つ。
――と、ジムの奥から一人の男が出てきた。
男は大きな声で笑って、言った。
「アーハハィ!チミがチクワブ、か?舞っていたよ、ミーこそがルネシティのジムリーダー、ミキュリだYO!」
「うわぁ――また変態っぽいの来た・・」チクワブとダイノーズは、心の中でそう呟く。
チクワブは、ミキュリ――と名乗る男の近くまで行くと、言う。
「えーと、ワケあってあなたに挑戦しにきましたあああ。お手合わせ、願いますうう」
チクワブがミキュリに挑戦宣言をすると、ダイノーズがチクワブの前へとやってきた。
それを見たミキュリは、「アーハハィ!」と笑うと、自らもボールを構えた。
「事情は聞いていますYOー。なんでも、クビが懸かっているんだとかね。――でも、ミーもリーダーなんです。手加減なんて、しないゼ?」
ミキュリはそう言うと――ボールを地面に叩きつけた。
出てきたのは、水ポケモン、フローゼル。
そしてミキュリはフィールドへと足を踏み込むと、一言。
「単純明快、一対一の真剣勝負でいくYO。覚悟はいいな?そんじゃ・・始めだ!アーハハハィ!!」
その笑いと同時に、フローゼルが動き出す。ダイノーズもその動きを追って動き出す。
「よっしゃ、アイツの異常な笑いをこれからの人生、二度と出せないようにしてやんぜ」チクワブはミキュリを見ながらそう言うと、ダイノーズに指令を出したのだった――。
「ダイさん、“いわなだれ”。」
最終更新:2014年08月30日 17:18