7.ナイトメア
見回りが来てから2時間ほどたった。腹が減ったが弁当を食うような空気じゃない。その代わりみんな携帯をいじってる。逃げようとすれば戦車で潰すから携帯でいくら対抗しようとしても無駄だろうし、それをわかって余裕ぶっこいて相手は携帯を回収していないのだろう。だから、いや、だからではないと思うが友達の携帯を覗くとラインで連絡を取っている人がほとんどだ。テレビが見れる携帯の奴の何人かはニュースを見ている。
不思議だ。監禁されている感じが全くしない。自由にすら感じる。監視がいないから、と理由はわかるがやはり違和感がある。その違和感に加え交渉は進んでいるのか、そもそも交渉が始まっているのかという不安が加わって今の感情はとても言葉では表せない。
何が起きている……。
わかりませんがな。
はぁ、暇だ。さて、ゲームでもするか。人質ってことまったく実感ないし。
とか思ったのがフラグだったのだろうか。何故アクションが起きる前に必ず誰かが何かのアクションを起こそうとしているのだろうか。
さて、一言でそのフラグで何が起きたか説明しよう。
砲撃だ。
外から炸裂音がしたと思った刹那、まるでこの教室に着弾したんじゃないかと思えるほどの衝撃が走った。つまりこの教室には着弾していない。だが机がひっくり返って、俺も今倒れているのか立っているのか座っているのか一瞬判断がつかなくなるほどの衝撃だった。
「糞、なんだ」
もちろんこの時は今の衝撃が砲撃だということを俺を含めて誰も気付いていない。
糞、なんだから数秒ほどおいて自分の体が床に倒れているのを自覚し、視線を上に上げた。するとそこに飛び込んだ光景は内戦のニュースとかで見たことがあるものとほぼ同じだった。窓ガラスなんか残ってる訳もないし教室内は塵や埃で充満している。蛍光灯はもう蛍光でも灯でもない。唯一ダメージが見られないのは黒板程度だ。
状況をある程度理解した俺はゆっくりと立ち上がることにした。右肩が痛む。吹っ飛んだ時に床に打ちつけたのだろう。
「大丈夫だったか、シマリス……」
床から聞こえる声が立ち上がった俺に呼びかけた。耳がキーンとなって誰の声だかよくわからない。一応今更かもしれんがシマリスは俺のあだ名だ。
「あ、ああ」
ほぼ上の空で返した。するとゾロゾロと他の奴も立っていった。頭から血を流している奴も何人かいる。
「まさか、戦車か……」
腰を押さえている先生が小さく呟く。その言葉につられて立っている奴らが一斉に外を見た。
最初に見た窓越しの戦車とはもう印象が違う。直に見えるその戦車は砲門から煙を出していた。そしてそいつは俺達を嘲笑っているように見えた。
最終更新:2014年09月20日 23:25