9.無意味
逃げる? といってもどこに。自問自答するが答えは最初から用意されてない。そんなもんわかってるが答えがないという恐怖をただ否定したくなる。でもそれは無意味だろう。
そうだ、あの戦車の中だ。戦車の中に隠れよう。そうすれば警察が助けに来る可能性も高い。
行くべきところが決まった俺は駐輪場まで全力疾走した。瓦礫乗り越え階段飛び降り幸い敵には見つかっていないまま駐輪場までたどり着いた。
幸いなのはたどり着くまでな。
たどり着いた途端銃声が鳴り響き、同時に駐輪場の屋根を支えている骨組みに銃弾がカンカン当たって、その音にビビってとっさにしゃがんだ。
「ここまで来てか!糞ったれが!」
銃弾が骨組みや自転車に当たる音がやまない。ラチがあかないので少し顔を覗かせて敵の位置を確認することにする。
チラッ
学校の陰からか、しかもあの銃の弾倉がベルトだ。それで弾切れしないん……、
ヂンっと俺の頭上の自転車のベルが被弾してベルのようには聞こえない鈍い音を出して粉々になった。俺の頭がほぼ無意識に電光石火の如く骨組みの後ろに戻される。あぶねぇ。
だが弾倉ベルトでしかもフルオート発射はせず単発発射を連打してきているから弾切れを待つことは愚策だろう。弾が切れる前に駐輪場が潰れる。一応ハンドガンを持ったままだが俺の技量で敵より先に命中させるのは夢だな。となれば道は1つしか残されていない。
突っ走る。
馬鹿みたいだが馬鹿みたいなこの策しかない。今更学校に戻ってもどうせ敵に見つかり次第殺されるだろう。
骨組みが盾としては心もとないが自転車を端にとめていてよかった。自転車のサドルとハンドルに手をかけると思いっきり駐輪場から引っ張り出した。行くぜおい。
サドルにかけた手もハンドルにかけて準備OKだ。
どうやら戦闘機の準備も。音が聞こえ始めた。
だがそんなの知らねぇ。ほぼジャンプと変わらない助走で一気にスピードを付けてそのまま自転車に飛び乗る。銃撃がフルオート射撃になった。それに伴って俺の真横の体育館の窓が何枚も割れる音がし始める。フッ……、エイムが遅いぜ(キリッ。更に目の前にSATが現れ、勝利を確信した。このまま行けば逃げ切れる!
「そのまま走ってきて!回収する!」
「わかりました!」
しかし次の瞬間俺は空を飛んでいた。意味がわからないだろうが俺もわからん。目の前に俺が乗ってたはずの自転車が飛んでいる。
そして背中に衝撃が走り、飛んでいる感覚が無くなった。
最終更新:2014年09月20日 23:31