10.無抵抗

「ぐえっ」
 糞、何だ何だ何だ。俺また吹っ飛んだのか? 背中に地面があるしそうらしいな。
 ゴオオオオと糞うるさい音をたてて戦闘機が俺の前、つまり上空を通りすぎる。ひょっとしてミサイルで吹っ飛んだのか……?
 だが、命は助かったようだ。とりあえず立って避難……、何、体が動かん……。いや動くが痛みが……!

 すると戦闘機の音の聞こえ方が変わった。ゴオオからキーンといった感じだ。どこにいやがる。首は動くが体が動かないことには視界が大して変わらん。と思っていると戦闘機の方から視界に入ってきてくれた。いや、別に望んではいないが。だがその戦闘機は何かおかしかった。
 小さくてよくわからんがひょっとして上下逆さま? あ、あれはあれだな。あれ。宙返りってやつかな。うん。発砲音が聞こえてきたし宙返りからの機銃掃射ってやつか。うん。ヤバい。
あれ、ひょっとして俺狙ってる? く、糞がおい! 動け! 俺の体! そぉい! そぉい! あああああああ動かん。ああああああああああああ!?
 なんか力みすぎた。突然体が動いた。何回転したかよくわからんかったがとにかく叫びながら転がった。そして次の瞬間転がる前に俺がいた場所が完全に蜂の巣っていうかアスファルトが粉々になっていた。叫ぶってすごい。その上転がったお陰で体が感覚を思い出した。体が動く。
「よし、いいぞ俺!」
 ゆっくりながら立ち上がりさっきまでの進行方向を向く。するとそこに飛び込んできた光景は自分の居場所をわからなくさせるような程衝撃的だった。衝撃的すぎて言葉がでない。開いた口が塞がらないかつ口が開いてることに気付かない。
 自転車をこいでいた時にあった戦車はもはや戦車というよりただの大型ゴミだ。恐らくさっきの戦闘機が戦車の処理を兼ねてミサイルをぶち込んだのだろう。そして俺にこっちにこいと呼びかけていた人は大の字で倒れて動かないでいた。
 戦闘機の音が耳をつんざく。
 の次は銃声が耳をつんざきやがった。

最終更新:2014年09月20日 23:32