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3.reverse

 そしてそのまま振り返って遠藤を見ることなどはせずにトボトボと母と先生のところへ戻っていった。
「あら遠藤さんとの話は終わったのね」
 何も知らない母の声。
 いや、俺も知らないも同然のレベルで理解してないが。
 だがこの母の声もひょっとしたら俺の作り物である可能性が……。
「では行きましょうか」
 そもそも何故遠藤はあんな事態である事を知っていた。
 俺の夢のことを俺が知らなくて夢の住人が知っているなんてまるで矛盾じゃないか。それにちょくえ、まさか偶然じゃないとはな。ちょくえがこの時間に2人存在しているとかもう、ね。

「それでシマリス、あんた遠藤さんと何話したの?」
「んー、と、まず、探し物は何ですかーって聞かれて、夢の中へ行ってみませんかっていう話」
 我ながらうまく受け流しつつボケるという高度な返しだと思った。ほら、その通り先生笑ったぞ。
「井上陽水はいいから、何?」
 受 け 流 せ て な い 。
「え、いや、夢の話。本当に」
「はあ、そう。思ってたより変な人ね」
 勘違いなのかわざとなのか、十数年共に生きてきた母の言動は正直未だに予測ができない。だが深く入り込んでこようとしない姿勢は受け入れよう。助かる。
 そしてそのまま会話は途切れ、目的地まで無言が続いた。んで目的地。
「ここです」
 部屋の名前はレントゲン室と書いてあった。頭でも見るのかな。
「まずはシマリス君が頭に受けた銃撃によって記憶喪失になったことを前提として考えていこうと思うので、脳に物理的なダメージないかどうか、あるならどこのダメージかを今回再度確認しようと思います」

 そう言って先生がガチャとドアを開ける。思っていたよりもこじんまりとした部屋だ。こじんまりとしてるのに機材が色々置いてあるので圧迫感すら感じるが、俺ら3人程度なら余裕はまだまだある。
「それじゃあ頭撮るんでこれに寝っ転がってください」
 『これ』はテーブルに転用できそうな高さのある台で、一瞬どうやって寝っ転がるか考えた。これちょっと高くないすか。
 すると突然レントゲン室のドアをノックする音が2度した。何なのかよくわからないから先生の方を見てみると先生もよくわかんないような表情をしていた。
「なんでしょうかね。使用中のランプは点灯させてますし」
 とか言いながら先生がドアを開く。
 部屋の中の方に開くドアなので先生が一歩下がり、次に若干の驚きの表情を浮かべる。そして外から聞こえてきた言葉で若干じゃなくて本当に俺も驚いた。
「警察だ」

「はぁ、け、警察ですか、な、何の用で……?」
 先生すごいキョドってる。ひょっとしたら昨日の学校での俺よりキョドってるかも。
「シマリス君、いかにも愉快なあだ名の少年だ。彼の連行だ」
 はぁ……、マジかよ……、ついてねぇ……。
「え、し、シマリス君、ですか、彼ならここに……」
「わかっているからここをノックしたんだ」
 その声と共に警察が2人、先生を軽く押しのけズカズカとレントゲン室に入ってきた。少しヒョロッとしたのと少しマルっとしたのとだ。テロリストの見回りもそんな体型のコンビだったな
「君をテロに関する重要参考人として連行する。ついてきなさい」
「何故今だ」
 せっかくだから反抗してやることにする。遠藤の言う通りなら俺はこのまま囮として、道具として使われてしまう。
「何故今かと。それはお前の記憶が新しい記憶にごっそり入れ替わったからだ」
 ごっそり入れ替わった? そんな言い方されたのは初めてだ。遠藤もそんなこと言ってなかった。それとも警察達の勘違いか?
「なんでそんなことがわかる」
「わかるからだ」
 現代文なら即行減点くらう回答しやがるじゃねぇか、おい。舐められたらもんだな。

「とにかく、言葉で反抗しても無駄だ。連れてくぞ」
 マルっとした方に腕を掴まれた。ヤバい。リアルに逃げらんねぇ。
「ちょっと待ってください。息子をどうするつもりですか」
「どうもしません。ただ話を聞くだけです」
「聞くだけならここでも……」
 焦れったい。それにこのままだと確実に逃げられない。だが俺には1つだけ手が残されてる。道具として扱われて死ぬ気なんざねぇ。舐めるなよ。
「遠藤ーーー!!!!」
「な!?」
 少なくともレントゲン室のある2階中には声が届いたはずだ。後は遠藤が来るのを待つのみ。
「ふざけてんじゃねぇぞてめぇ! 糞! とっとと撤退だ!」
 そして警察は俺を引っ張って走りだした。予測通り。んにしてもこんな反応するくらいならなんで遠藤を捕まえないで放っておいたのだろうか。
「滑稽だな」
「黙れ!」
 怒鳴られちゃったぜ。
 仕方ないから警察のマルっこいやつに引きずられながら遠藤はまだかと祈る。

 だが祈っても来ない。そのまま入り口に繋がっているホールに繋がっている中央の階段まで連れてこられ、俺を引きずる体勢のまま階段を降りだした。
「ちょ、おいてめぇ! この格好のままは痛っ!」
 足がガンガン階段に当たってかかとが悲鳴上げてヤヴァイ。それでいて腕を掴まれたままなのですぐには体勢を整えれない。よって痛い。
「黙ってろっつったろ!」
 また怒鳴られてたら階段を降りきってしまった。なんちゅう速さだ。ガチになりすぎだろ。そして何事かと俺らを見ているあのマスクの集団の横を通り自動ドアへ。
 次の瞬間、爆発音に似た音、要は発砲音と、ガラスが割れる音、要は自動ドアが撃たれて割れた音が同時に鳴り響き、それから1秒ほどおいて何人もの人の悲鳴が鳴り響き耳をつんざく。
「来たな遠藤!」
 あれほど聞きたくないと願った発砲音がこれほどまでに聞きたいと思ったことが今まであっただろうか。

最終更新:2014年10月30日 22:22